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第5話 2025.5.12

さて先週の日記である。週一の更新なので週記という方が正しいのかもしれないが。

当然これを書くのが面倒臭いという感覚もあるのだが、やはり私は私自身の考えや感情を書いてみることをどこかで欲しているようにも思える。


昨日5月11日日曜日には『文学フリマ東京40』というものに行ってきた。これが先週の何よりのトピックだろう。

何となく文学フリマという存在があることは知っていたがそこまで興味は無かった、というのが正直なところだ。友人に誘われることがなければわざわざ自分から足を運ぶこともなかったと思う。

『文学フリマ』とは大まかに言えば、文芸に関するありとあらゆるジャンルの人たちがそれぞれ自作の出品物を持ち寄りそこで販売しているというものだ。『文学フリマ』というタイトルを見れば大体わかると思うが。コミケのコミックではなく文芸版といえばわかりやすいだろうか? 会場も同じく東京ビックサイトである。


昼12時くらいに現地で待ち合わせ、友人2人と共に入場した。

まあとにかく人の多さにビビる。一般入場者の多さにもビビるが、場内に入ると出店者のブースの多さにもビビる。しかし身動きにも不自由するというほどではないから、噂に聞いたコミケよりは小規模なものなのだろう。

最初は友人たちと3人で一緒に回ろうとしていたのだが、混雑具合やそれぞれの志向も考慮し一旦別行動をとることとなった。


私もTwitterで前日に多少調べていたので、それなりにお目当てのブースを見定めていた。

……のだが、まあそこに行く前にぶらぶらと適当に物色しながら歩いてみることにする。私は割と興味が広く浅い方なので、何を見てもそれなりに興味はそそられる。櫻坂46に関する論文小冊子と、タナトフォビアを謳って設けていたブースで意識と脳に関する本を一冊買った。

しかし私にとって例えばネットで検索して求めるほどのものだったかというとやや疑問だ。

ただこの偶発性こそが「本屋」の魅力だ。ネットでは自分のピンポイントで興味のある種類のものとしか出会わない、それゆえに興味広がってゆかない……というのはよく言われることではあるが事実だろう。

私は子供の頃の近所の書店とブックオフでの立ち読みによって自らの人格が形成されてきたことを実感しているので、それがほとんど無い世代を見て勿体ない・可哀想という感覚を若干抱くが、まあそんなことを当事者の若者たちに言っても鼻で笑われるだけだろう。


ぶらぶらと適当に歩いていて印象的だったのは出店者からの声掛けである。

「良かったら見て行って下さ~い」「立ち読み自由で~す」中には「チラシを受け取ってくれたら10円差し上げます!」という出店者の人もいた。

そして少し足を止めると「私は○○に興味があって」「こういう動機でこの作品を書いたのです」などと話し掛けられる。

無論それは単に商業的行為というよりも、作者として自分の客とコミュニケーションを図りたいという欲求の方が本質的であったのだろうが。そして恐らくはこれこそがこうした催し(コミケや文フリ)の意義の主たる部分なのだと思う。

ファンは生身の人間である作者に直接会って感想を述べられる、作者側も自分の客と直接対面して(基本的には賛辞に近いであろう)感想を受け取れる……近頃の言葉で言えば『推し活』に近い催しなのだろうな、という感想を私は抱いた。


さて私が最初に目指したのは前回の直木賞候補にもなった木下昌輝先生のブースである。作品を一つも読んだことがない(失礼極まりない!)のにそこに向かったのは、先生が何故か私のTwitterをフォローして頂いていたからであり、純粋に出品されていた創作論の本に興味があったからだ。私が購入すると先生はサインをして色々と気さくにコミュニケーションを取って下さった。

実際の作品も近いうちに必ず読もうと思う。


もう一つの目当ては、私が契約作家として書かせていただいているネオページのブースである。(カクヨムにわざわざライバルサイトであるネオページの話を書くな!)

2ブース借り切ってのぼりを立てチラシも配り、とにかくネオページというサイトの宣伝に力を入れているな、ということを強く感じた。

私も契約作家として書かせていただいているのです……ということを名乗り、ブースにいらっしゃった(直接の担当ではない)編集者の方とも少しお話させていただいた。去り際にはあげは凛子先生の『巫女のお仕事は大変です!~魔神社復興の為に頑張っていたら、気付けば神様のお気に入りになっていたようです~』も購入させていただいた。

漠然たる印象でしかないのだが、すごくフレッシュな風を感じ多少関連のある身でありながら「頑張って欲しいな!」とどこか他人事のように応援の気持ちを覚えた。


さて自身に課した最低限のタスクを達成した私はまあまあ疲れていた。

人の多さ、声を掛けられること、ブースを見て自分の興味を見定めること……などにであろうか。

「そもそもここで本買っても、家には積読がまだまだ沢山あるしなぁ」という気分が強くなっていた。対面というコミュニケーションを経ることが純粋な作品に対する興味なのか? 本を買うという行為としてこれが正しいのか? という気もしてきた。


そのため、私にとっては著名人というか、憧れに近い感情を抱いている方も何人か見かけたのだがスルーしてしまった。

二村ヒトシというAV監督。『NHKにようこそ!』で有名な滝本竜彦氏。滝本先生とも近しい「元日本一有名なニート」pha氏。

滝本先生などは、直接ご本人からチラシを手渡されたにも関わらず特に話すこともなくその場を去ってしまった。『NHKにようこそ!』も『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』も『超人計画』も持っているし、カクヨムの連載も追っていたにも関わらずである。

そうなってしまった一番の要因は、私自身が既に各所で「あんまり上手く話せなかったなぁ」という感覚を抱いていたことによる。決して実際の滝本先生と対面して「この人やっぱマジでコミュ障なんだろうな…」などと思ったわけではないです。ご容赦下さい。


最近はつとに人の顔に興味がある。ぶらぶらと歩きながらボーっと人の顔を見ていた。

その顔以上の人物には出会わない……というのは非常に乱暴な言い方だが、格闘家なら格闘家らしい顔があるし、哲学者には哲学者らしい顔があるような気がする。何か秀でた業績を残したり、力のある人はやはり持っている雰囲気がある、と感じるのが正直なところだ。

その意味では二村ヒトシ氏が異彩を放っていた。多くの人は彼が何者であるかは知らずとも、彼を見ただけで何かの力を感じたのではなかろうか。

文芸に携わる人の顔ももちろん様々であるが、どこか似た雰囲気を感じる人も多かったし、近しいジャンルの作者はそれだけ近しい雰囲気があるような気がするなぁ……などと歩きながらボーっと思っていた。


その後は友人2人と合流し、2時間弱ほどで文学フリマの会場であるビッグサイトを後にし、上野の大衆居酒屋で飲み食いした。

同じ宗教2世の友人たちということで話も弾みとても有意義だった。




時系列は乱れるがその前日の土曜日には映画『野いちご』を観た。

『野いちご』は1957年製作の白黒映画で、監督はスウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマン。功成し老人となった主人公が過去を振り返り「自分の人生が正しかったのだろうか?」と問うロードムービーだ。

幻想的な映像、重いテーマを扱いながらも終始流れる優しい雰囲気。そして老い・死・後悔といったテーマの本質性にもの凄く心を揺さぶられた。

私のベストムービーは長らく『ダンサー・イン・ザ・ダーク』だったが、この作品で更新されたように思う。ベルイマン監督の他の作品も当たってみたい。


その他の先週のトピックは加重懸垂を始めたことだ。

今までは週1,2回程度自重のみで懸垂をしていたのだが、試しに10キロほどアンクルウエイトを組み合わせて加重して懸垂をしてみたところ、非常に良い感覚だ。

間違いなく力は伸びるし広背筋もデカくなるであろう! 背中に悩んでいる諸氏は是非とも加重懸垂を試してみてほしい。


先週はそんな感じでした。

ではでは、皆さまごきげんよう!




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