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第6話 2025.5.20

さてもう火曜日なので先週の記憶も朧気ではあるのだが、先週が本当に実在したことの証明として、或いは先週を成仏させるために記録を残すことにする。

だが記録を残したところでそれが本当に先週が実在したことの証明になるのだろうか? 残るのは記録だけで、それが虚偽の記録ではないと……さらに言えば私の記憶すら捏造されたものでないと言える根拠はどこにもない。それが本当に実在したことを証明することは原理的に不可能なのだ!

……こうしてグダグダと文字数稼ぎをせねばならぬほど特に書くことがなさそうである。


日常が退屈で停滞しているような感覚がある。

ブラック労働で辛いよりは平凡で退屈な日常の方が百倍マシではないか!と仰る方もいるとは思うし、そうですよねと私も答えるとは思うが……それらは比べられないという方が本当だろう。

どっか東京以外の街に引っ越してえなぁ、という漠然とした気持ちが薄っすらとあるが、その本質は東京への飽きではなく、単純に自分をやっていくことに飽きているのだろうということはわかっている。

それでも目先を変えて刺激を与えほんの瞬間でもモチベーションを上げられるのであれば何でもアリだろう。


というわけで水曜日にはのライブを観てきて、とても感動した。ここ数年観ている『終わらないで、夜』というアイドルグループだ。

2017年にヤナミューと出会って以降様々な地下アイドルのライブを観てきた。思い返せば8年にもなるから、飽きたとか、惰性で通ってるなとか、そういう時期もあったのだが、それでもこの界隈を卒業しようと思ったことはない。

地下現場こそが最もダイレクトに音楽のイデアルな部分を享受出来る、という感覚が私には強くあるからだ。


ヤナミューが炸裂するオルタナロックだったのに対し、おわよるはアンビエントで静かめなダンスミュージック、という感じだろうか?

音楽性はかなり異なるが、私は両グループの表現に似た部分があると思っている。

どちらも内省的でクソ真面目な表現。良質な楽曲とパフォーマンスだけで勝負しているところなどだろうか。

「誠実な表現」という言い方を私はよくする。

これをもう少し分解するならば「表現者の欲求にいかに忠実であるか」ということと「現実に向き合った表現であるか」という点なのだと思う。


「表現者の欲求にいかに忠実であるか」という点は最低限のスタートラインだ。

対義となるのは「受け手に合わせた表現」だ。受け手にいかにウケるか逆算されて作られた表現だ。これは私の個人的趣味からすると非常に醒める。興醒めちゃんである。

最近はどの領域も、どうすればわかりやすく受け手にウケるか、という話しかしていない。表現を突き詰めていくためにはどうすべきか、という創作論が少しくらいあっても良さそうなものだが、まるで見当たらない。

地下アイドルの現場も「いかに盛り上げるか」「いかに演者の可愛さを伝えるか」といった機能性の面から逆算して作られているものの方が圧倒的に多いと感じる。

そんな中で、作り手側の過剰とも言える音楽愛が垣間見えるグループ、そこで真剣に表現しようとしている演者と出会うことができると本当に嬉しい。


その上でなされる表現が好みかどうかは趣味の問題だ。

だが私は、内省的な「現実に向き合った表現」に惹かれるのを単に私の個人的志向として片付けられたくない、という思いが強い。

理不尽な現実を噛み砕き、溜め込んだ感情を発酵させ、表現として発現させてゆくまでには時間が掛かる。感情表現一般はある程度内省的であることを経なければ嘘だし、受け手の心を打つことはないと私は思っている。

……というこの構図すらも、私の好みというカッコで括られてしまう話ではあるのだろうが。


さらには作り手と演者のズレの問題もある。女性アイドルは基本的には作り手と演者が異なることがほとんどだから、作り手側のエゴが演者の資質に合っていなければ、客にはそれも伝わる。ヤナミューもおわよるもメンバーの精神性と楽曲の方向性がかなり近しいように感じられる点も共通だ。


こんな七面倒臭い私のようなオタクのお眼鏡に適ったおわよるはさぞ人気のグループなのだろう! と読者の方は思うに違いないが、地下アイドルの中でもあまり人気がない(>_<)

この時も特典会に並んでいた人は私以外に1人、2人くらいだった。

ヤナミューはメジャーデビューやZEPPワンマンを果たす程度には人気があったが、それとは比べるべくもない。ヤナミューは「騒ぎたいオタク」「暴れたいオタク」と親和性のある楽曲だったが、おわよるにはそれも無いので当然という気もする(もちろん両グループをそんな単純に比較できるわけもないことは言うまでもない)。

まあしかし言わないでも良いほど正直に言うと、人気になることは客側からするとあまりメリットがない。客が増えるということはその表現を理解しないバカな客が増えることと同義で現場の空気は間違いなく乱れる(口が悪くなってしまったのは青木真也のYouTubeを見過ぎためです。お許しください!)。パンパンのフロアはしんどいし、ライブのチケットが取り辛くでもなったらかなりキツイ。


でももちろんメンバーや関係者たちは少なくともある程度は売れたいと思っているだろうから、報われて欲しいという思いもある。

というか私もなるべく長くグループが存続して欲しいし、一回でも多くライブを観に行くことが私にとって最も確実に幸福度を上げる手段なので、最近は少々ながら特典会でチェキも撮るようになった。

ヤナミューメンバーとは一度も接触したことがなかった。ライブを観ることができた時点で目的は果たしていた、ステージを下りた彼女たちに対する興味はそこまで強くなかった、というのも嘘ではないが、面と向かって話すのは緊張する、そもそもチェキ列が長くて待つのが嫌、という気持ちが強かった。


でもまあ好きなグループには関われるだけ関わった方が楽しいに決まっている。

1500円でサイン入りの小さい写真を撮ってもらい、1分間メンバーとお話できるというチェキ制度を私も利用するようになった。

何を話そうか…と1分間の短い時間を持て余すことも多いのだが、この日は本当にライブ自体が素晴らしく泣きそうになるほど感動したのでそのことをストレートに伝えた。小さい写真を撮ることの楽しさが最近になってようやく少しわかってきた気がする。


先週はそんな感じでした。ではでは皆さま御機嫌よう!




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