第1章 素敵な魔法なのー!
シャリーが カップルの聖地と言われる 占い小屋や ペアアクセサリーの 並ぶ 路地を ぴょこと 覗く
そこには花束を 彼女に差し出す青年やら
きゃいきゃいと ペアアクセサリーを手に取る幸せそうなカップル達の姿がある
「うふふ……なのー!」
鈴を転がすような声で エンドちゃん
ライト様は シャリーの 手を取ると 銀の ペアアクセサリーの テントを のぞいた
「ラ……ライト」
手……手……
シャリーは 恥ずかしくって 僅かに 抵抗する
すると 背を抱き込まれた
「震えてるね」
少しだけ コロンの 匂い……
ジャスミン
シャリーは真っ赤になると
ライト様のシャツを 握った
はら……
ボタンを外したシャツがはだけ 彼の胸元がのぞけてしまう!
「あ……………………の」
一気に全身を 恋が かけぬけた
「あ…………の!」
「なんだい?」
ライト様が くすくすと シャリーの うなじを 息でくすぐる
そこへ 不意打ちに 唇が押し当てられた
「ひや……い!」
シャリーが跳ね上がる
メガネが かしゃり……落ちた
「可愛いね……」
ライト様が シャリーの 髪をすくい上げると そこへ銀の チェーンを 滑り込ませる
繊細な 三日月の 細工に 水晶の 玉が 揺れる
「あ……」
お揃いだ……
ライト様が茶目っ気たっぷりにウインクした
彼の胸元には シャリーの三日月と 対の 三日月が 揺れていた
いつの間に……?
シャリーが おほん……と 喉をはらった
「ラ……ライトったら!」
ちょっと拗ねる
「ふふ……」
彼は くる……と シャリーの 水晶を 回転させた
きら……
陽光を 透かすと 虹に輝く
「月光に当てるともっと綺麗だよ!」
クス……
艶やかに 瞳を潤ませる
「ちゅーーーーなのー!」
エンドが 小さい唇を 突き出すと シャリーを 真っ赤にさせる
「おやまあ……」
お店のお婆さんが 目を細めた
1週間後は 三日月だよ!
アリアンロッド様に 祈るといいよ
優しい声で言う
「月影の精霊様の おまじないが降る夜だからね……」
「嗚呼……」
ライト様は何か思うように 唇に 指を 当てる
カフェにでも……行こうか……
夜になったらね……
きっと待ってる……
誰が?
シャリーが 首を 傾げた
「君も知る人だよシャリー!」
ライトが ふいっと 背を返す
さあ……
夕方になる前に 腹ごしらえだ!
くっきり明朗な声……
「この辺に美味しいイタリアンがあるんだよ」
ライト様の指が シャリーの 髪をたぐった
そして そのまま口付け……
「あ……」
シャリーが 吐息を 漏らす
シャリーの真っ赤な顔にライト様が メガネをかけた
「君は……可愛いいね……」
まわりの カップルが 見守って……ぱちぱちと 拍手をくれる
「ライトったら……」
真っ赤なシャリー……肩をそびやかせた
「はは……」
彼は
笑うと ベルの ついた扉を 開ける
ピザの 焼ける 良い匂いがした
「も……う……」
プンプン……シャリーがちょっと怒ってみる
でもライト様の 大人の 采配には かないそうもなかった
「おいでシャリー」
彼が 椅子を引いた
そこへちょこんと 座る
「何にします?」
朗らかなおじさんが メニューを出した
「ワインあるかな?」
例の……
ライト様が言うと……おじさんが
嗚呼……聞いてるよ!
あの農園指定の年代物を 取り寄せろってね
「エルフィだね?」
「そうさ……」
流石だ……
ライト様が芯から人を褒めるのを久しぶりにみる
「エルフィさん?」
「うん」
籠に入れて運ばれてくる 赤ワイン
そこには
1枚のカードが……
「今日あたり来ると思ってた……開けておくわ」
綺麗な筆記で エルフィとある
「あの笑顔の綺麗な……お姉さん」
シャリーは 式の時に 最前列に座る 美しい人を思い出した
「エルフィだ……」
そこには魔法筆記で足してある
月影の 灯りをさがしてね
薄く薔薇の匂い
エルフィさんの 魔法
「わあ……」
ワイングラスに魔法の薔薇が咲いた
シャリーが ふと笑う
「綺麗なのー!」
エンドは ちょんちょんと 薔薇に触れる
ふわ……
薔薇は匂いを 残して消えた
「やるねエルフィ」
ライト様がニヤリと笑う……
彼にこんな笑顔をさせるのは 彼女だけだろう
悪ガキのような笑顔であった
「ペパロニのピザだ」
おじさんが石窯からピザを くれる
「おいしそうなのー!!」
エンドが にっぱーと口元をゆるめた
ピザをわけると チーズが伸びる
「ぴろーーーーんなのー」
とエンド
「さあ……シャリー冷めないうちに……」
ライト様が 皿に取り分ける
と……
ぽむん……ぽむんと 空砲が上がった
「ちょうどいいね……」
ライト様が ピザを頬張る
「たべ終わった頃開始だろう」
いたずらっぽく
唇を舐める
「ライトったら……」
シャリーが紙ナプキンを取ると ライト様の口元を拭った