あらすじ
詳細
汐見雨音と九条燎は、三年間付き合っていた。 その三年間、九条燎は毎年一度「記憶喪失」になった。 そして毎回、彼女にもう一度自分を追いかけさせた。 雨音は、それに付き合った。 手作りの弁当を作った。 何通ものラブレターを書いた。 ライブハウスの前で、彼の仕事が終わるまで待った。 彼女は、それが愛なのだと思っていた。 --- 三年目。 九条燎は、更科茜という女性を連れて帰ってきた。 雨音の目の前で、彼はその女性に優しく口づけた。 そして振り返る。 まるで初対面の人を見るような目で、雨音に尋ねた。 「君は誰?」 「どうして俺の家にいるの?」 「まさか……俺のあの口のきけない兄の彼女なのか?」 雨音は、一瞬だけ呆然とした。 --- 彼女は九条燎の、整った綺麗な顔を見た。 更科茜の手首に輝く、本来なら自分のものだったはずのダイヤの指輪を見た。 二人が絡めた指を見た。 心の中に浮かんだ言葉は、ただ一つ。 ――汚れた。 男にとって一番大切なものは、純潔と美しさ。 美しい姿だけなら、彼女は何度でも許せた。 彼の演技にも付き合えた。 けれど―― 汚れたものを引き取るつもりはなかった。 --- だから雨音は、静かに頷いた。 「そうです」 「お義姉さんって呼んで」 九条燎の顔から、一瞬で血の気が引いた。 そして彼は、無理やりその呼び方を口にした。 「……兄嫁」 --- その夜。 雨音は雨の中、九条家を出た。 途中で車はパンクした。 スマホの電池も切れた。 途方に暮れていた時。 誰かが車の窓を叩いた。 そこに立っていたのは―― 九条燎とそっくりな顔。 けれど、もっと冷たく。 もっと高貴で。 もっと近寄りがたい雰囲気を持つ男だった。 彼はスマホの画面を窓に向けた。 そこに表示されていた四文字。 「助けが必要ですか?」 雨音がずっと探していた相手。 それは―― 最初から、彼だった。 閉じる
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創意工夫ありし者創意工夫ありし者2026-09-14 18:59ネオ・デビューネオ・デビュー2026-09-14 18:58作者のひとりごと作者のひとりごと
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記憶喪失の私を「知らない人」のふりした彼氏――なら私はこの機会に、ずっと私を想っていた隣人のイケメンと恋を始めます記憶を失った私は、恋人と過ごした三年間の記憶を忘れてしまった。 けれど、忘れなかったものが一つだけある。 ――私は、銀髪の男の人が好きだということ。 退院の日。 元恋人は黒髪に戻し、私のことを知らないふりをした。 そして友人たちと賭けをしていた。 「彼女は絶対に、もう一度俺を好きになる」 でも彼は知らなかった。 私は病院を出たその日に、銀髪の隣人と出会い、一瞬で恋に落ちたことを。 その人の名前は、御堂怜徹。 十五階に住む、無愛想で口数の少ない男性。 でも、料理だけは驚くほど上手だった。 彼が作ってくれる味噌汁も、親子丼も、すべて私の好きな味だった。 「偶然だよ」 そう言う彼を、私は信じていた。 けれど、スマホを修理した日。 LINEグループに残されていた賭けの記録を見てしまった。 「彼女は記憶を失っても、絶対にまた俺を好きになる」 「スマホの履歴を見れば、きっと俺のところへ戻ってくる」 その瞬間、私は倒れた。 目を覚ますと、御堂がベッドのそばに座っていた。 彼は何も聞かなかった。 ただ一言だけ言った。 「……君は、どうするつもり?」 私は別れのメッセージを送った。 相谷くん。 もう、あなたは自由です。 その夜。 御堂は味噌汁を持って、私の家の前に立っていた。 そして、静かに言った。 「まだご飯を食べてない気がしたから」 後になって、私は知った。 三年前の新歓コンパの日。 私は、低血糖で倒れそうになっていた一人の男の子に、何気なく一粒の飴を渡した。 彼はその飴を三年間ずっと大切にしていた。 私が好きだと言った銀髪に染めた。 一度手放した家を買い戻した。 コンビニの窓際に座って、私が来るのを二十一日間待ち続けた。 あの時の飴は、三年前に賞味期限が切れていた。 それでも彼は―― ちゃんと受け取ってくれた。
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「契約でいい、俺のものになれ」そう言った社長に拾われた私。でも私はただの田舎娘なんです稲橋有梨は、静岡の田舎から東京へ出てきた。 仕事先の住所を書いた小さなメモを握りしめ、慣れない街で必死に会社を探していた時、一人のスーツ姿の男に拾われた。 彼は「恋人のふりをしてほしい」と言い、三か月限定の契約書を差し出した。 有梨は、ごく普通の仕事だと思っていた。 毎日ご飯を作り、シャツにアイロンをかけ、彼と一緒に家族の食事会へ出席する。 それだけだと思っていた。 契約書の表紙には、大きくこう書かれていた。 「恋人契約」 条項にははっきりと記されている。 乙は甲の恋人役として各種社交の場に同行し、親密なパートナーを演じること。 契約期間は三か月。 期間満了と同時に、本契約は自動的に終了する。 彼にとって、彼女の想いは最初から最後まで――値段のついた契約でしかなかったのだ。 彼が静岡まで追いかけてきたあの夜。 有梨の実家の縁側に座り、彼は胸の内をすべて打ち明けた。 「君のことは、ずっと前から好きだった」 「でも言えなかった」 「口にした瞬間、君に『これは契約でしょう』って言われるのが怖かった」 「どうしたら、本気だって信じてもらえるのか分からなかった」 前日の夕暮れ。 二人は石段に並んで座り、沈む夕日を眺めていた。 有梨がぽつりと呟く。 「東京なんて、別にいいところじゃないよ」 彼は静かに笑った。 「じゃあ、静岡にいよう」 「会社はどうするの?」 そう聞くと、彼は彼女の手を少しだけ強く握り、優しく答えた。 「会社は遠隔でも経営できる」 「でも、君は一人しかいないんだ」
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