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喉を潰された元・第一歌姫ですが、落ちこぼれたちをプロデュースして帝国をひっくり返します
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喉を潰された元・第一歌姫ですが、落ちこぼれたちをプロデュースして帝国をひっくり返します
異世界恋愛
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悪役令嬢
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最近更新:第一話 声の死んだ礼拝堂
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2026年10月23日 14:05
22人気
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妹が差し出した祝杯で、帝国一の歌声は焼かれた。 帝国の第一歌姫エレノア・ヴァルフレードは、婚約披露の夜会で毒を盛られ、声を失う。杯を手渡したのは妹のローザ。床に崩れた彼女を、婚約者の皇太子ルシアンは凪いだ湖のような目で見下ろしていた。審問はわずか三日で終わり、婚約は破棄。「療養」の名で送られた先は、島の者が「行き止まり」と呼ぶ北の果ての修道院だった。 残ったのは、自作の小箱が喉のわずかな動きを拾って出す、平らな機械の声だけ。人々はそれを「悪魔の声」と呼んだ。 吹雪の夜、エレノアは三人の娘の歌を聴く。窓を割る大声の赤毛ベアトリクス、呪いの詠唱と恐れられた低い声の眼鏡娘クリス、拍を外してばかりの没落令嬢チェルシー。厳格な教官に「不協和音のゴミ箱」と切り捨てられた三人の声に、エレノアだけが原石の輝きを聴き取った。 ――歌えないのなら、舞台そのものを創ればいい。 壊れたオルガンの管をタクトに、声なき指揮者は三人の欠点を武器に変えていく。蒼い結晶の筒が三人の声を金と瑠璃と銀の光に変え、聴く者の胸に下げた小さな石が、その歌に応えて灯る。雪の広場から港町の魚市場へ、白亜の音楽堂へ、そして二万人が集う帝都の聖火祭へ。落ちこぼれの楽団「ルミナス」の歌は、帝国じゅうの窓辺に灯りをともしていく。一方、姉の座を奪った妹は、帝都の大広間で歌えなくなっていた。 その道行きには、ひとりの男がついてくる。帝国の影を束ねる暗部の長、オルデン伯爵クラウス。「感情のない氷」と呼ばれるこの男は、かつて大聖堂でエレノアの歌を聴き、ただひとり拍手をしなかった。出資者を名乗り、投資だ損失だと冷たい理屈を並べながら、なぜか肝心なときには、いつもそこにいる。秘書に「お顔が」と言われるたび「黙れ」と返す氷の仮面も、少しずつ溶けはじめていた。 けれど、光は敵も呼ぶ。毒の真相を闇に隠した者。熱狂を憎む大司教。帝国の裏で糸を引く公爵。やがてルミナスは「偶像崇拝」の罪で、異端審問にかけられる。被告の席に立つエレノアの胸には、悪魔の声と蔑まれた小箱がひとつ。 『――申し開きは、言葉ではいたしません』 腹の弱い会計係、鳴かない猫、船に弱い秘書まで巻きこんで、声なき元・歌姫が落ちこぼれたちと帝国をひっくり返す。どん底からの逆転と、じれったい恋の物語。
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2026-10-23 14:05
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最近更新:第一話 声の死んだ礼拝堂
2026年10月23日 14:05
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袖の露 ―泣かない陰陽師と、腹ペコ泣き女―
声は出す。涙は出さない。それが泣き女のこつだ――と、露は勝手に思っている。 都の泣き女衆で育った十七歳の露は、弔いの場に雇われて泣くのが仕事。けれど死んだ人に素手で触れると、その人の最後の想いが流れこみ、本気で泣いてしまう。だから露は、いつも袖ごしにしか触れない。 後宮・梅壺の更衣の葬儀で、露はうっかり亡骸の衣に素手で触れ、「この方は寝床で亡くなったのではありません」と口走ってしまう。凍りついた広間でただひとり、彼女に椿餅を差し出したのは、泣きも笑いもしない美貌の陰陽師・昴だった。 その椿餅は、なぜか懐かしい味がした。 後宮では、亡き更衣の霊が出ると噂されていた。新しい中宮が立つまで、あとひと月。銭勘定にうるさい叔母・時雨の手で、露は陰陽寮へ貸し出されてしまう。女孺として後宮に入りこんだ露の相棒は、死者が見える昴と、幽霊がまるで見えず、胸の痛みまで空腹と取り違える滝口の武士・猛。三人は丑の刻にだけ現れる打橋を渡り、死者たちのとどまる「夜の後宮」へ踏みこむ。 書き換えられた死に場所。届かなかった一通の文。そして叔母がくり返す警告――向こうで、自分の涙だけは流すんじゃないよ。 それにしても、この陰陽師はどうして毎日欠かさず椿餅を届けてくれるのだろう。 十年前、はじめて出た葬儀で、母親の棺にすがって泣いていた男の子がいた。その子のぶんまで泣いてやった日にもらった椿餅の味を、露はいまも覚えている。顔のほうは、さっぱり覚えていないけれど。 銭を数えるはずの叔母の数珠が、月のない夜にだけ鳴りやむ。十年前のあの葬儀も、月のない夜だった――。 腹ペコ泣き女と泣かない陰陽師が拾いあげる、最初の「最後の想い」。 再会から始まる和風後宮ファンタジー。 ※平安時代をモチーフにした、架空の世界の物語です。 連載への匂わせは、時雨の数珠と「月のない夜」、それに「最初の」の一語に込めました。謎の答え(右近、頭中将の隠蔽、文の行方)は伏せています。
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