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第143話  神様②


 そう言って〈腐った神〉は一瞬目を泳がせた。言い難いんだろうけど、まぁ、言いたい事はわかるよ。


「……を使ったら、たぶんこの体ともお別れかなぁ。でも世界には代えられないよね」


 早く賢者をどうにかしないと、世界が崩壊するなんて言ったら……フィレンツェアはどんな反応をするのかな?



 ボクが〈腐った神〉とそんな話をしている最中にフィレンツェアが教会に連れて行かれたと腐女子から報告が来た。しかしボクは首を傾げる。


「フィレンツェアなら学園内にいるよ?ボクが聖女の魂の気配を間違えるはずないだろ」


 あ、聖なる力に目覚めたみたいだね。じゃあボクのことも今度こそ思い出したかなぁ?でもあんまり使い過ぎると世界の崩壊の前に前世の二の舞だから注意しとかなきゃ。


「どうやら何か起こったようでござるな」


 そうして向かった先にあったのがあの光景だよ。ヒロインの足に変態くっついてるしびっくりだよね。思わず趣味なのか聞きたくなったよ。あ、違うの?まぁ、とにかく役者が揃ってたから全部そこでぶっちゃけたってわけ。


「か、神様?!神様ってあの神様なの?!え、転生してきた?なんで?いつからジュドーの中にいたの?!……はぁ?他の神様に追い出されたですって?いやいやいや、そんな軽い感じでテヘペロ☆じゃないでしょうがぁ!」


 もうフィレンツェアがパニックになってたよね。可愛いなー。


「まぁまぁ、なんならそこにいる赤いドラゴンもボクの仕込みだし☆黒髪くんなんか本当ならラスボスになる予定だったんだけど、悪役令嬢を助けるために運命捻じ曲げてやったんだよ☆なんかそのせいなのか知らないけど賢者の子孫になっててびっくりだよね!ボク、そこまで暗い過去作ってないしー☆あ、君を引き取ってくれた伯爵家が実は遠い親戚だった事は知ってる?実は君の父親が……。え、父親は王様?伯爵家は賢者の遠い親戚?ちょ、怖っ!設定変わりすぎじゃない?なにやってんのさー」


 いやいや、ほんと。精霊の血を引いてる設定でなんやかんやあって、なぜか“加護無し”を恨んじゃうはずが賢者なんてどこから出てきたのかよくわかんないものに巻き込まれてて意味わかんなかったよ。確かに王家とは確執あるようにしたけど、こーゆうんじゃなかったのになぁ。ちょっと、腐女子たち?賢者の情報の一部、足りてなかったよー!ここに孫がいたよー!


「いや、言ったでござるよ。〈オタ神〉殿が途中から聞いてなかっただけでござる」


 あ、そうなの?ごめんごめん。


 あれ?なんで黒髪くんはがっくりした感じで両手を床に付いてるの?あ、それってorzだよね!もしかしてこの世界でも流行ってるの?ヘビになってる赤いドラゴンは『あなたには配慮ってものがありませんことよ!』と怒ってるし。


「……流行り云々ではなく、〈オタ神〉殿の軽いノリに心底がっくりしているのではござらんか?」


「えー、神様からの言葉なのに?ありがたがってよ」


 〈腐った神〉が「素直に謝った方がよろしいのでは……」と耳打ちしてくるけど、なんで?


「……神様って、この世界を作った神様ってこと?じゃあ、攻略とかなんとかって……」


 ヒロインがブツブツとなんか言ってるから「そうだよ」と答えてあげた。


「あ、そーだ。君にはわからないかもだけど、作ってる最中で何度も失敗しちゃってバグがいっぱいだったんだよね。どうやら破損データを上書きしちゃったみたいで君の設定もバグ起きてるかも☆もしかして攻略が上手くいかなかった?ごめんね〜☆」


 テヘペロ☆とすると、今度はヒロインが「はぁぁぁぁ?!嘘でしょ?!あたしの苦労って……!」と、orz状態になった。セイレーンが『ルル、どうしたのぉう?しっかりしてぇ!』と慌てている。いや、ほんとにどうしたの?


「やっぱりちゃんと謝った方がよいと思うでござる」


「え?今、謝ったよ?」


 今度は外が騒がしくなってくる。フィレンツェアが言うには公爵家の侍女が迎えに来た合図らしい。でも、今は公爵家に戻ってる時間は無いかなぁ。すると〈腐った神〉が「それならば、拙者にお任せくだされ」と指を鳴らした途端に腐女子が勢揃いした。……忍者なの?


「公爵家の方々には腐女子たちにロットン帝国王女の名を使って伝言を持って行かせるでこざるよ。ついでにそこの変態もお引き受けいたそう。それよりふざけている暇はないでござる。お急ぎくだされ」


 ふざけていたつもりはないんだけど、まぁ確かにヤバいよね。


「じゃあ、今から空間を繋ぐからみんな集まっ「お前たち、こんな所で何をしているんだ?!爆発騒ぎがあったから早くひな」あ、ついでに連れて行こうっと!この後落下するから精霊魔法よろしくね〜」


 偶々やって来たグラヴィスの首根っこを捕まえてボクの作った空間通路へレッツゴー!


 いやぁ、さすがは真面目な先生だよね!詳しく説明しなくても状況で判断して通路を抜けた瞬間に精霊魔法をみんなにかけてくれたよ。


 え?ジュドーの精霊には空間を繋げる魔法なんて使えないんじゃないかって?そりゃそうだよ。だってこれ魔法じゃないもん。ボクが持つ、ボクの力さ。聖女の聖なる力に近いかな?同じようにちょっとリスクがあるけどね。


 おっと、空間を抜けるついでにあっちの結界にも切れ目を入れて侵入成功☆さすがはボクだね!ボク最強☆


 でも、闇の力を浄化出来るのは聖女の力だけだ。本当なら使わせたくなかったけど、今だけは仕方がないかな。それに大丈夫だね。なにせ彼女の中にはがあるから。さすがは2倍、あんなに大きな闇の力も真っ二つだ。うん、捕まってた精霊たちも解放されたみたいだ。


 なーんてホッとしてたら、まさかの古代竜だったってオチだよ。まぁ、いいんだけどさ。







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