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02この物語の主人公はこれしか出来ない

「よし、僕たちはなるべく派手に動いてヘイト稼ぎながら皆殺しにするよ。脱出組に人員を割けないくらいに暴れ散らかそう」


 黒髪で黒仮面を付けた黒コートのクロウ・クロスさんが落ち着いた様子で述べる。


 今、僕はこの世界最強のクロウ・クロウさんと帝国軍第三騎兵団特殊任務攻略隊の方々と共に【ワンスモア】の宇宙拠点に殴り込みをかけている。


 理由は一つ。

 ライラちゃんが攫われたからだ。


 なんかスキルを再現するとかなんとかで【大変革】前に生まれた人を拉致して回ってるとか、魔物モドキも造り出してるとかなんとか。


 なんか色々と思うところがあって、信念やら思想があるんだろうが。


 マジでどうでもいい。

 ぶっちゃけこいつらが世界を混乱に陥れようが、何人攫って何人殺そうが知ったこっちゃねえ。


 身内に手出された。

 しかもライラちゃんを攫いやがった。

 動かない理由がない。


 そして先程、ライラちゃんを救出。

 ついでにおふくろの昔のパーティメンバーで、最近までトーンの町で修行を見てもらっていたダイル・アルターさんと。

 全帝一回戦でライラちゃんと戦ったファイブ・セブンティーン選手を救出。

 その後、さらに二名の非戦闘員民間人を救出。


 現在は拉致被害者脱出チームと殲滅チームの二組に分けて、行動中だ。


「あの……、本当に問題ないのですか? 誰か一人でも拉致被害者に着いて行った方が良かったのではないでしょうか」


 特殊任務攻略隊のゾーラ・メイさんがクロウさんへと問いかける。


 ゾーラさんはセブン地域予選で戦った際にナゾーラ・ギメイと名乗っていた。


 あれも全帝に【ワンスモア】が絡んで来るから先んじて出場選手に軍の人を混ぜておきたかったみたいなことらしい。


 僕が倒してしまったので全帝には進めなかったけど……ゾーラさんは競技者じゃなくてゴリゴリの帝国軍人。

 当然実戦にフォーカスした技量が高く、競技向けの技量は付け焼き刃だったから仕方ない。

 あの時の僕であれば本気で動かれていたら簡単に殺せていただろう。


「まあ大丈夫じゃないかい? ダイル・アルターもいるし、ライラになんかあったらあの馬鹿のせいにして畳んで吊るすし」


 さらりとクロウさんは返し。


「何よりライラにああ言われちゃったら僕は言い返せないからね。チャコールが良いと言うんなら、問題ないさ」


 僕に目線を向けてクロウさんはそう言った。


「はい、本気のライラちゃんが【ワンスモア】如きに後れを取ることは有り得ませんし何かあった時だけ助けに行ける準備が出来ていたら問題ありません」


 僕はクロウさんへとそう返す。


 本当ならライラちゃんと合流出来た段階で、僕の目的は達成されている。


 僕はライラちゃんさえ無事なら何でもいい。


 まあ普通にライラちゃん泣かした【ワンスモア】は皆殺しにしたいと思っているけれど、一番はライラちゃんの無事だ。


 だからさっき合流出来た段階で僕はライラちゃんと一緒に帰っていい。

 腹立つけど【ワンスモア】はクロウさんが畳むんならそれでいいからね。


 でも、ライラちゃんがそれを拒否した。


 ライラちゃんは僕に【ワンスモア】の壊滅を願った。

 自分は問題なく脱出出来るからと、僕にはこの問題の根っこを潰し切ることを命じた。


 冷静に考えた。

 優先順位や僕の感情、色々なものを順序だてて考えた。


 確かに【ワンスモア】がはしゃいでいる限り、ライラちゃんは狙われる。

 優秀なスキルというところで言うんなら、おふくろも狙われる。現に仲間だったダイルさんは狙われた。


 その度に僕はブチ切れて、目が焦げるまで黒い怒りを燃やしていくのは……煩わしい。


 そして今回は無事だったけど、試行回数が増えればその限りでもない。

 今なら【ワンスモア】を完膚なきまでに叩き潰すことが出来るのは事実だ。


 せっかくライラちゃんと合流して、ここで再び別行動するのは心配だけど。


 ライラちゃんの実力に疑いはない。

 心配はあれど信頼は揺るがない。


 それに、僕も僕で腸煮えくり返ってんだ。

 二度とこんなことを起こさせない。


 ここで【ワンスモア】は潰す。


「あー、俺何回かチャコール・ポートマン追跡してたけど仲良さそうだったもんな。いいな、大事にしつつ信じてやれてんのはいい関係だぞ」


 特殊任務攻略隊のテナー・クエスさんが僕に向けて言う。


 テナーさんはハテナ・クエッチョンという名前で全帝にも出場していた。

 でも一回戦でソフィアさんに負けてしまったようだ。僕はその試合見れてないけど、ソフィアさんに勝つにはアカカゲさんを突破するしかないのはきつい。


 しかもテナーさんが得意とするのは、光学迷彩や気配遮断や消音魔法を用いて魔力分身や目視転移を使って狙撃小銃で狙い撃つ戦い方だ。


 まだ完全復活前とはいえ、アカカゲさんの気配察知力は異常だ。トーンの町で何回もボコボコにされた。


 でも僕を追跡……全く気付けなかった。


「あんたモテないくせに色恋を語るんじゃないわよ……、説得力が皆無過ぎる」


 特殊任務攻略隊のステリア・エルブランさんがテナーさんへと言う。


 ステリアさんはミステリ・トゥエルブという名前で準々決勝にて八極令嬢に敗れた。

 この試合は見ていたけどかなり白熱した試合だった。もしかすると準決勝で戦うことになっていたかもしれない。


 右腕が『魔動義手』でかなりの出力の打撃を放つ。

 しかも試合で見せたのは競技用に出力を抑えたもので、実戦ではもっと殺意の高い殴打を放っていた。


 あとTバックの下着を好むらしい、ライラちゃんもたまーに履いてる紐みたいなすげえエロいやつだけど……まあ……履かないよりはマシなのかな? ほとんど丸出しのイメージだけど。


「ほら、そろそろ行くよ……。逃げられても面倒だ」


 クロウさんはそう言って、歩みを進めた。


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