ニアが屋敷に様子を見に行ったことなど露知らず、アンジェリカは7回目のため息をついた。
「はぁ~……セラヴィ。本当にどうしてしまったのかしら……いつもなら時間よりも早く来てくれるのに……」
「そうですね。本当にどうしてしまったのでしょう」
ヘレナは相槌を打ちつつ、ニアの帰りを待っていた。
(ニア……大丈夫かしら。屋敷に向かってから、もうすぐ1時間近く経ってしまったわ。ひょっとすると正体がバレて掴まってしまったんじゃ……)
じっとしていると不安が込み上げてくる。
(もう我慢できないわ。私も様子を見に行ってこよう!)
そこでヘレナはアンジェリカに声をかけた。
「あの、アンジェリカ様……」
その時。
「た、大変です!! アンジェリカ様!」
眼鏡をかけ、髪をアップにしたニアが慌てた様子で今に駆けこんできた。
「え? あなたは誰かしら……?」
変装したニアに気付かず、アンジェリカは首を傾げる。
「私です! ニアです!」
ニアは眼鏡を外した。
「まぁ、眼鏡に髪型も違うから誰か分からなかったわ。どうしてそんな恰好をしていたの? それに何が大変なの?」
するとヘレナが代わりに答えた。
「実はセラヴィ様が何故こちらにいらっしゃらないのいか、調べてもらう為、ニアに屋敷へ様子を見に行ってもらったのです」
「え!? だって、お父様には二度と本宅には足を踏み入れないように言われていたのよ? ニア、大丈夫だったの?」
「ええ、変装のお陰で誰にも姿がバレることはありませんでしたが……それよりも大変です! セラヴィ様がローズマリー様とイザベラ様の3人で馬車に乗って外出されたそうです!」
「「え!?」」
アンジェリカとヘレナが同時に驚きの声をあげる。
「ど、どうして……セラヴィが……」
青ざめるアンジェリカに対し、ヘレナは詰め寄る。
「ニアッ! その話は本当なの!?」
「はい、本当です。使用人の誰もが、同じことを口にしていました。それに、セラヴィ様たちにお茶を出したメイドが話していました。本日、セラヴィ様はアンジェリカ様と吹奏楽の演奏会に行こうとチケットを持参されていたそうですがアンジェリカ様は体調不良で寝込まれていると、お2人が説明していたということです」
「そんな……。私、体調不良なんか起こしていないわ!」
「ええ。でたらめもいいところです。それでチケットを無駄にするのは勿体ないとローズマリー様がおっしゃって、急遽3人で演奏会に向かったと聞きました」
ニアの話は衝撃的な内容だった。
「何てことでしょう! セラヴィ様にはアンジェリカ様という婚約者がいると言うのに出掛けるなんて! あり得ないわ!」
ヘレナが憤慨する一方、アンジェリカはすっかり気落ちしていた。
「そんな……セラヴィが私を置いて、お義母様とローズマリーを連れて出掛けてしまうなんて……」
「アンジェリカ様……何てお気の毒な……」
ヘレナがアンジェリカを抱き寄せる。
「わ、私……今日はどうしてもセラヴィに会いたかったの。会って……話を聞いて貰いたかったのに……」
アンジェリカはヘレナにしがみつき、すすり泣いた。
「アンジェリカ様……明日にでもセラヴィ様に会いに行ってみましょう」」
「大丈夫です。アンジェリカ様には私たちがついていますから」
悲し気に泣くアンジェリカに、ヘレナとアンは慰めるのだった――
ニアが屋敷に様子を見に行ったことなど露知らず、アンジェリカは7回目のため息をついた。
「はぁ~……セラヴィ。本当にどうしてしまったのかしら……いつもなら時間よりも早く来てくれるのに……」
「そうですね。本当にどうしてしまったのでしょう」
ヘレナは相槌を打ちつつ、ニアの帰りを待っていた。
(ニア……大丈夫かしら。屋敷に向かってから、もうすぐ1時間近く経ってしまったわ。ひょっとすると正体がバレて掴まってしまったんじゃ……)
じっとしていると不安が込み上げてくる。
(もう我慢できないわ。私も様子を見に行ってこよう!)
そこでヘレナはアンジェリカに声をかけた。
「あの、アンジェリカ様……」
その時。
「た、大変です!! アンジェリカ様!」
眼鏡をかけ、髪をアップにしたニアが慌てた様子で今に駆けこんできた。
「え? あなたは誰かしら……?」
変装したニアに気付かず、アンジェリカは首を傾げる。
「私です! ニアです!」
ニアは眼鏡を外した。
「まぁ、眼鏡に髪型も違うから誰か分からなかったわ。どうしてそんな恰好をしていたの? それに何が大変なの?」
するとヘレナが代わりに答えた。
「実はセラヴィ様が何故こちらにいらっしゃらないのいか、調べてもらう為、ニアに屋敷へ様子を見に行ってもらったのです」
「え!? だって、お父様には二度と本宅には足を踏み入れないように言われていたのよ? ニア、大丈夫だったの?」
「ええ、変装のお陰で誰にも姿がバレることはありませんでしたが……それよりも大変です! セラヴィ様がローズマリー様とイザベラ様の3人で馬車に乗って外出されたそうです!」
「「え!?」」
アンジェリカとヘレナが同時に驚きの声をあげる。
「ど、どうして……セラヴィが……」
青ざめるアンジェリカに対し、ヘレナは詰め寄る。
「ニアッ! その話は本当なの!?」
「はい、本当です。使用人の誰もが、同じことを口にしていました。それに、セラヴィ様たちにお茶を出したメイドが話していました。本日、セラヴィ様はアンジェリカ様と吹奏楽の演奏会に行こうとチケットを持参されていたそうですがアンジェリカ様は体調不良で寝込まれていると、お2人が説明していたということです」
「そんな……。私、体調不良なんか起こしていないわ!」
「ええ。でたらめもいいところです。それでチケットを無駄にするのは勿体ないとローズマリー様がおっしゃって、急遽3人で演奏会に向かったと聞きました」
ニアの話は衝撃的な内容だった。
「何てことでしょう! セラヴィ様にはアンジェリカ様という婚約者がいると言うのに出掛けるなんて! あり得ないわ!」
ヘレナが憤慨する一方、アンジェリカはすっかり気落ちしていた。
「そんな……セラヴィが私を置いて、お義母様とローズマリーを連れて出掛けてしまうなんて……」
「アンジェリカ様……何てお気の毒な……」
ヘレナがアンジェリカを抱き寄せる。
「わ、私……今日はどうしてもセラヴィに会いたかったの。会って……話を聞いて貰いたかったのに……」
アンジェリカはヘレナにしがみつき、すすり泣いた。
「アンジェリカ様……明日にでもセラヴィ様に会いに行ってみましょう」」
「大丈夫です。アンジェリカ様には私たちがついていますから」
悲し気に泣くアンジェリカに、ヘレナとアンは慰めるのだった――