…30年間も放置したパワーストーン騒動で終わったかと思ったのです…。
しかし、事態は甘くありませんでした。
神社にてパワーストーンの供養をしてから、約1週間後…。
皆はパワーストーンがなくなって、随分と気持ちが落ち着いた様子でしたが、私は何か奇妙に引っかかるところがあって、色々と理由を考えていました。
『30年も放置していたパワーストーンの念が少し残っているのか?』
私は要介護5になった母の介護施設などの案件で、相変わらず大忙しですから、仕事になりませんが、それでも気分が落ち着かなくて、仕事が手につきません。
そんな日が少し続いて、あの騒動から1週間程度が経った夜…。
私は不思議な夢を見たのです。
実家の階段から水が雨漏りのように流れているような夢でして、目が覚めると、嫌な予感を覚えました。
『実家の階段下の収納を、早急に片付けたほうが良さそうだ』
この予感が、完全に的中したのは言うまでもありません。
今日は休日だから、実家の階段下収納を一気に片付けるのには良い機会だから、すぐに片付けることにしました。
◇
早速、私と弟は実家の階段下収納の片付けに取りかかります。
何があっても怖くないように、私と弟は、神社のお清めの塩をひとつまみ取って舐めた後に、コップに入れた水を一気に飲み干しまた。
これは魔除けの意味があって、これを行うと、しばらくの間、悪いモノに取り憑かれることを予防することができます。
別に、塩は神社のお清めの塩でなくても大丈夫だし、水は普通の水道水で構いませんが、水は常温であることが鉄則です。
白湯にしたり、お茶にしたり、塩を水に溶かして飲んでも効果はありません。
こんな夢を見たからには、階段下の収納に、何か良からぬモノがあることが、確実だろうと思っていました。
そして、実家の仏壇に蝋燭に火をともして線香をあげて、手を合わせながら階段下の収納を片付ける旨を伝えると、仏壇の前に置いてある父の写真が目に留まって、何故か微笑んでいるようにも見えます。
私は、それに加えて、豊川稲荷東京別院の御守りや、別のお寺で買ってきた観音菩薩の御守りなどをポケットに入れて、最悪の事態に備えることにします。
その後は、実家に置かれた神棚にも手を合わせて、掃除に取りかかりました。
弱い霊感しかない私ですら、階段下の収納の扉を開けた瞬間から、そこに嫌なモノがある事を感じ取れるぐらい酷いものでした。
しばらくすると、母親が若い頃に使っていた大きな編み物機や、学生時代のアルバムなど、あとは母親が旅行に行った際に買った置物、誰から頂いたお土産などが出てきましたが、それらを整理して元の場所に戻していきます。
それらを片付けるのは、母が亡くなった後でしょうから、いま、私たちが勝手に処分するのは、流石にダメでしょう。
その一方で、空になったままズッと何十年も放置されていた段ボールや、何十年も放置された未使用のアルバムなどを処分していきます。
『うーん、俺の夢は嫌な予感だけで空振りに終わったか…』
空振りに終わったとしても、実家を大掃除できたことは大きいので、その点について無駄にはならない…、なんて考えていたのですが…。
我が家をも巻き込んだ世紀の大事件は、階段下収納の片付けが終盤に差し掛かった時に起こりました。
弟が、段ボールを持った瞬間に、家の中でいるはずのない部屋の扉が、カタカタと音を立てたのです!!。
私と弟が思わず「これか!!」と、異口同音で叫びます。
段ボールにはマジックで『人形ケース』と書かれていますが、弟は怖くて段ボールを開けられない様子だし、この雰囲気は完全に嫌な予感しかしません。
私は、恐怖心が薄いので、躊躇わずに段ボールを開けると、そこには、三味線を持った芸子のような人形が出てきました。
もう、階段下収納から人形を引っ張り出した時点で、廊下の空気が、より一層、澱んでいるように思えます。
『まずいなぁ…』
とりあえず、他の片付けもあったことから、私と弟は、階段下に置かれていた残りのものを早々に片付けた後、妻を呼ぶことに…。
まず、私が妻を呼びに、実家と目と鼻の先にある家に戻ると、外で洗濯物を干していました。
「あなた、スマホを使ってYouTubeで大音量でお経を流していた?」
そんな問いかけに、とても嫌な予感がして、私は相当に眉をひそめます。
「それはないよ。そんなお経を大音量で流したら、近所迷惑だし、俺たちが、なんて言われるのか分からない…。」
妻は数秒時間を置いて、青ざめた顔をして意を決したように言います。
「さっき、空耳かも知れないけど、大きなおりん(
私は間髪を入れずに、妻に詳しい事情を端的に言いました。
「うん、ヤバイものが出てきたよ。日本人形が出てきて、弟が箱をもった瞬間に、誰もいない部屋の扉からカタカタと音が聞こえたんだ。」
妻がそれを聞いて、実家に飛んで行くと、その日本人形を見て、より一層、青くなっています。
霊感がない妻でも、ゾクッとした嫌な感じがあって、人形を正視できないと言うし、相当に大変な事態になってしまいました…。
『まずいな…これは…。』
私と妻は、細かい後片付けを弟に任せて、人形供養ができるお寺を必死に探し始めます。
ちなみに、この時点で、神社という選択肢はありませんでした。
お経が聞こえたということは、お寺で供養する選択肢がベストだと直感的に感じたからです。
まだ、お昼前なので、少しぐらい遠くのお寺でも持ち込めば間に合うでしょう。
何にしても、この人形を一晩、置いといて、何処かに持ち込む事態は避けたかったのです。