月の光に照らされて、小さくなっていくロミオゲリオンの背中を見送っていたジュリエットは、人知れず「……ハァぁぁ~」と大きなため息を
そして空いていた手で彼の感触が残る頭を優しく撫でていると、部屋の1室を借りて今の様子を隠れて見ていた『とある少女』がトコトコとジュリエットの傍まで近づいてきた。
「良いのか姉上? ロミオ殿を行かせても?」
「……しょうがないだろう。あぁ言われてしまっては……な」
ジュリエットはすぐさま外面を顔に張り付け、目尻に浮かんだ涙を妹にバレないようにそっと
マリアはそんな姉の姿を横目で見ることもなく、ロミオゲリオンが去って行った方向をムスッとした表情で見守っていた。
妹が今、一体何を考えているのか、ジュリエットにはまったく分からないが、その横顔はどこか拗ねているようにも見えた。
「どうしたマリア?」
「別に……何でもないのじゃ」
その顔で何でもないは無理があると思うぞ? と出かかった言葉を寸前で噛み砕くジュリエット。
きっと今、自分もマリアと同じ顔をしているに違いない。
そう思ったら、とてもじゃないが
代わりにポケットからスマホを取り出す。
「こんな時間に電話かえ、姉上?」
「まぁちょっとした『保険』をな」
「保険? ……あぁ、なるほどのぅ。なら妾はもう一眠りするとしようかのぅ」
姉の言いたいことを即座に看破したマリアは、何を言うでもなく、トロトロと間借りしている部屋へと帰って行った。
ジュリエットは妹の後ろ姿を見送りながら、再びスマホに視線を落とす。
暗転した画面には苦笑を浮かべる自分の姿が映っていた。
その顔はいつか映画で見た恋する乙女のようで……
「まったく、ボクにここまでさせるだなんて……。本当に罪なアンドロイドだよ、キミは」
スマホを起動させ、電話帳から
どうか彼の力になってくれますように。
そんな祈りと共に、ジュリエットは『彼女』の名前をタップした。