『ヴォルフガング団長ッ!! それだけはやめてくださいッ!!』
リュディガー団長が懇願するように、泣き叫びます。
普段は温厚なリュディガー団長がここまで取り乱すところを見たのは、初めてですわね……。
……これからお父様がやろうとしていることを考えたら、さもありなんといったところですが。
『信念は固く 意志は鋭く』
『だ、団長――!』
ですが、お父様はリュディガー団長の制止を無視して、詠唱を始めます。
『ククク、これは桁外れの魔力だ。――だが無駄だよ。たとえ神であろうと、私には傷一つ付けることは能わん』
お父様の
【
『刻よりも速く 魂よりも熱く
この槍は穿つ 彼方の空までも
そして舞い戻る 勝利を携えて
――絶技【
お父様の右の拳に纏った膨大な魔力が、槍の形になりました。
そしてお父様はその槍の拳を、目にも止まらぬ速さで【
これぞお父様の最終奥義、【
……数年分の寿命を代償に、森羅万象
これを受けて生きていた人間は、今までただの一人もいないそうです。
『――だから無駄だと言っているじゃないか』
『……なっ!?』
そんな!?
【
バカな……、【
『……クッ!』
『ヴォルフガング団長ッ!』
それどころか、【
な、何が起きているというのですか――!?
『私の開発した魔導具であるこの【
なっ……!?
こ、これが、【
こんなのいったい、どうやって勝てというのですか……!
『う……る……せぇ!!』
『……何?』
『ヴォルフガング団長ォッ! もうやめてくださいッ!』
ですが、お父様はそれでも構わず、【
遂には【
お、お父様――!!
『おやおや、このままだと君の腕は無くなってしまうよ? まさかそんなこともわからないほどバカだったのかい、【
『……さ、最後に一つだけ……教えてやるよ……【
『ん?』
『――この世で一番強いのはな……、腕力でも魔法でも、魔導科学でもねぇ……、
『なぁっ!?』
『団長ォッ!!』
その時でした。
【
『そ、そんなバカな……! あ、有り得ない……! わ、私の魔導科学が、こんな脳筋男に……!!』
『……いい勉強になっただろクソジジイ。精々地獄で
『ガ…………ハ…………!!』
『団長ォォッッ!!!!』
遂にはお父様の右腕は【
お、お父様あああああああああああああ!!!!!!
『ク、ククククク……、なるほど……、世界というのは……実に広いな……【
【
……終わりですわね。
そしてお父様の右腕は、肘から先が無くなっていました……。
『だが……覚えていたまえ……。私は
な、何ですって……!?
『ケッ、俺は二度と、お前になんか会いたくねーよ』
『ククク……つれない……ねぇ…………』
そして【
これは、確かに死にました……わよね?
『――ジバクソウチガサドウシマシタ。タダチニタイヒシテクダサイ』
『なっ……!?』
その時でした。
けたたましいサイレンと共に、そんな自動アナウンスが――!!
『チッ! このクソジジイ、自分が死んだらこの基地ごと爆破するようにしてやがったのか……! 最後の最後まで、汚ねぇジジイだぜ……!』
『ヴォルフガング団長ッ! 今すぐここから脱出しましょう!』
『……いや、悪いけどそりゃ無理だ、リュディガー』
『――!?』
『今ので俺はもう……魔力が完全に切れちまった……。せめてお前だけでも、逃げろ……。これは命令……だ……』
『団長ッッ!!!』
お父様の視界は、ここで闇に覆われました――。