「ガッハッハ! オラオラオラオラァ!」
「うわああああ!?」
「ぎゃああああ!?」
「ぬわあああああん!?」
開始早々ヴェンデルお兄様が、巨大な深紅の鎚である【
すると今の一撃だけで、10人以上の選手が場外に吹き飛ばされたのですわ。
アラアラ……、やはりヴェンデルお兄様の出場を許したのは、失策だったかもしれませんわね。
『オイオイオイ、情けねぇなお前ら! 相手は魔力も使わねぇただの筋肉ダルマなんだ! 魔法を使えば、場外に出すことくらいできるだろうが!』
そう仰るなら、ご自分でやってみてくださいましローレンツ副団長!
ヴェンデルお兄様相手にそれをすることが、どれだけ難しいことか……。
実際に経験したことがある者にしかわかりませんわ!
「ハアアアアアア!!!」
「くぅ!?」
その時でした。
今度はヴェルナーお兄様が愛剣である【
やはりこうなってしまいましたか……!
ですが、間一髪ラース先生も【
ヨシ!
日々の特訓の成果が出てますわね!
こうなった以上ヴェルナーお兄様から逃げ切るのは不可能でしょうから、何とか耐えてくださいまし、ラース先生……!
「――【
【
これで魔力を封じられている今のヴェルナーお兄様なら、互角に戦えるはずですわ!
「フン、その程度の魔力で、この私に勝てると思うなあああああああ!!!!!!」
「なっ!?」
ラース先生!?
わたくしの予想に反して、ヴェルナーお兄様は魔力をブーストさせたラース先生を、その驚異的なパワーで圧倒しました。
「オラオラオラ、どうしたどうした、その程度かあああああ!!!!」
「う、うぅ……!」
ラース先生はヴェルナーお兄様の猛攻を防ぐのでやっとですわ……!
いくらヴェルナーお兄様が強いとはいえ、二人にここまでの実力差はなかったはず……。
今日のヴェルナーお兄様は、明らかに異常ですわ。
何がヴェルナーお兄様を、あそこまで掻き立てているのでしょうか……。
「貴様などにヴィクは絶対渡さんぞおおおおお!!!! 何故ならヴィクは4歳と286日の時に、『将来はヴェルナーお兄様のお嫁さんになりたいですわ』と言ってくれたのだからなあああああ!!!!!!」
ヴェルナーお兄様を掻き立てているのは、妹への
そんなことを言った記憶はわたくしにはありませんが、仮に言っていたのだとしたら、わたくしはとんでもないモンスターを生み出してしまったようですわぁ~~~~。
ラース先生に、申し訳が立ちませんわぁ~~~~。
それはそれとしてあのキモ
「……で、ですが僕だって、ヴィクトリア隊長に対する気持ちは、あなたにだって負けていませんッ!」
「なにィ!?」
ラース先生????
今のは、どういう????
「う、うおおおおおおお!!!! 認めん認めん認めん認めん認めん!!!! 私は絶対絶対絶対絶対絶対、貴様のことなど認めんぞおおおお!!!!!!」
「くぅ!?」
嗚呼!?
ここにきてキモ兄のギアがまた上がりましたわ!?
このままではラース先生が場外に――!
――ラース先生!
「情けないですね、ラースさん」
「「――!」」
その時でした。
横合いからレベッカさんが放った矢が、キモ兄の顔面を襲いました。
レ、レベッカさん!?
「チィ!?」
が、キモ兄はギリギリのところでレベッカさんの矢を躱し、後方に距離を取りました。
惜しいッ!
「あ、ありがとうございます。助かりました、レベッカ副隊長」
「勘違いしないでください。私たちは何としてもゲロルト様を倒さなくてはならないんです。だからあなたにこんなところで負けてもらっちゃ困るんですよ、ラースさん」
「――! はい、そうですね」
オオ……!
いつもは何故かいがみ合っているお二人が、共闘を――!
歴史的和解ですわぁ~~~~。
「フン、二人がかりだろうが、私のヴィクに対する愛のほうが、深いに決まっているだろうがあああああ!!!!」
いつの間にか愛の深さ対決になっておりますわぁ~~~~????
「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「なっ!?」
「う、うええええ!?!?」
キモ兄は高速で縦横無尽に動きながら、お二人と距離を詰めます。
そのあまりの速さに、残像で分身しているように見えますわ……!
くっ、これはいくらお二人でも――!
『そこまで! 今舞台に残っている8名を、決勝トーナメント進出者とする』
「「「――!!」」」
その時でした。
リュディガー団長のよく通る声が、わたくしたちの鼓膜を震わせました。
見ればいつの間にか舞台上には、8人しか残っておりませんでした。
他の人間は一人残らず、ヴェンデルお兄様が場外に弾き飛ばしてしまったようですわ。
「ガッハッハ! ちょっとやりすぎてしまったかもしれんな」
いえいえ、ヴェンデルお兄様、グッジョブですわぁ~~~~。
「チィ! ……まあいい。誰のヴィクへの愛が一番深いか、決着は決勝トーナメントでつけるぞ」
「――はい、望むところです」
「たとえお
今レベッカさん、キモ兄のことお
あとやっぱりいつの間にか愛の深さ対決になっていたのは、気のせいではなかったようですわぁ~~~~。