『よっしゃ、これで準決勝進出者の4人が出揃ったなぁ』
準決勝進出者は、ラース先生、レベッカさん、ゲロルト、ヴェンデルお兄様の4名。
ゲロルト以外は順当な結果と言えますが、さて……。
『なぁなぁ、お前はこの4人で、誰が優勝すると思う? そろそろ教えてくれよ、なぁ』
『や、やめてください……!』
ローレンツ副団長が、女性隊員さんの胸を無理矢理触ろうとしています……!
――この瞬間、わたくしの中で何かがブツンと切れました。
「フンッ」
『ん?』
わたくしはローレンツ副団長の席に駆け寄り、そして――。
「セイッ!」
『ぶべら!?』
「ニャッポリート」
「「「――!!!」」」
ローレンツ副団長の顔面に右ストレートをブチ込んだのですわ!
『ななな、何しやがんだ【
ローレンツ副団長は鼻血をダラダラ流しながら憤慨します。
「それはこちらの台詞ですわ。あなたこそ、誇りある王立騎士団の副団長ともあろうお方が白昼堂々セクハラとは、恥ずかしくないのですか?」
『何だとこの、伯爵令嬢如きがあぁ!! 俺様は筆頭侯爵家の嫡男だぞッ!!』
そうやってすぐ身分を盾にして。
身分というのは、何をしても許される免罪符ではございませんのよ?
『処刑だ処刑ッ! 高貴なる俺様に手を上げた罪として、この場で叩き斬ってやるッ!』
ローレンツ副団長が立ち上がり、腰の剣を抜きます。
フム、処刑ですか。
「アラアラアラ、処刑とは随分物騒ねローレンツくん。今日は楽しいお祭りなんだから、あまりそういうことを言うものではないわよ?」
『ア、アンネリーゼ様……!?』
アンネリーゼ隊長……!?
まさかわたくしを、庇って……?
『で、ですがアンネリーゼ様! こんな蛮行を許していては、我々上級貴族の沽券が!』
「アラアラアラ、我々上級貴族の沽券というのは、そんな簡単に崩れてしまうほどやわなものなのかしら? 些細なことでは動じず、常に威風堂々としている。――それこそが、本物の上級貴族というものではなくて?」
『……ぐっ!』
アンネリーゼ隊長がいつもの頬杖をついた威風堂々とした態度で、そう仰います。
アンネリーゼ隊長……。
『クッ、こ、この場はアンネリーゼ様に免じて、剣を収めてやる! だが覚悟していろよ【
「ええ、承知いたしましたわ」
「ニャッポリート」
やれやれ、まさかアンネリーゼ隊長に助け船を出されるとは。
これは借りが出来てしまいましたわね。
わたくしが無言でアンネリーゼ隊長にペコリと頭を下げると、アンネリーゼ隊長は「ウフフフフ」と不気味な笑みを浮かべました。
こ、これは後で法外な見返りを求められそうで、恐ろしいですわぁ~~~~。
「あ、あの……」
「――!」
セクハラされていた女性隊員さんが、わたくしに小声で声を掛けます。
「――ありがとうございました」
目元に涙を浮かべた女性隊員さんは、ボソッとそう呟きながら頭を下げました。
フフ。
「わたくしは当然のことをしたまでですわ。よろしければ、わたくしたちの席に来ませんか?」
「ニャッポリート」
わたくしは女性隊員さんに手を差し出します。
「あ、はい! 是非!」
女性隊員さんはわたくしの手を取ってくださいました。
ヨシ!
『チッ』
露骨に不機嫌な態度を取っている
「あなた、お名前は?」
「あ、はい! イルザ・トレッチェルといいます!」
「イルザさん、良いお名前ですわね。どこの隊に所属でしょうか?」
「あ、えっと、まだ所属は決まっていなくて……」
フム、大方イルザさんがロリ巨乳であることに目を付けたセクハラ野郎が、敢えて所属を決めずに自分の手元に置こうとしたのでしょうね。
女であるというだけでそんなペットのように扱われて、本当にけしからん話ですわ!
よし、ここは一つ――。
「イルザさん、よかったらわたくしの第三部隊に入りませんか? 歓迎いたしますわよ」
「ニャッポリート」
「えっ!? いいんですか!? 私なんかが入っても!?」
「もちろんですわ。その代わり訓練は過酷ですが、それでもよろしいですか?」
「は、はい! 頑張ります!」
ヨッシャ!
これでまた一人、新しい仲間が増えましたわ!