「そ、そんな! 兄さん!! 悪い冗談はやめてくださいッ!!」
「そうです! ヴェンデル隊長は、そんな人じゃないはずですッ!!」
ヴェルナーお兄様と伝令係のリーヌスさんが、ヴェンデルお兄様に訴えます。
「ガッハッハ! すまんが冗談ではないんだ。――俺はザイフリート家の長男として、どうしても強くならなくてはいけない使命があるんでな」
「……なっ」
ヴェンデルお兄様――!!
「【
「バ、バカな!? 兄さんが私たちより弱くなるわけがないじゃありませんかッ!」
「そうですわ! ヴェンデルお兄様ほどの才能に溢れる方は、他におりませんわよ!」
お父様だって口には出さないものの、内心はヴェンデルお兄様に一番期待していたはずですもの――。
「いや、俺にはわかる、俺はここまでが限界だってな。――その限界を超えるためだったら俺は、悪魔にだって魂を売ってやるさ」
「に、兄さん……」
「ヴェンデルお兄様……」
「ククク、任せたまえヴェンデルくん。この私が君を、最強の男に仕上げて見せるさ」
クッ、【
そうやって甘言で、ヴェンデルお兄様を唆したのですわね――!!
「ヴェンデルお兄様! ヴェンデルお兄様がどうしてもそちら側に行くというなら、わたくしはそれを全力で止めますわ!」
「ニャッポリート」
わたくしは【
「ガッハッハ! 流石にヴィクが相手だと、俺も無傷では勝てんだろうな。――というわけでここは一つお願いしてもいいですか、リュディガー団長?」
「ああ、もちろんさ。私としても実の兄妹が殺し合う光景を見るのは、忍びないからね」
「――!」
リュディガー団長が虹色に輝く刀身を持つ剣、【
あ、あれは――!!
「その橋は世界を分かち
その橋と世界が判り
その橋で世界も解る
――絶技【
【
そしてリュディガー団長が【
「クッ!!」
わたくしは咄嗟に【
が――。
「ガハッ――!」
【
「ヴィ、ヴィクウウウウウ!!!!」
「ヴィクトリア隊長ッッ!!!!」
「ニャッポリート」
「だ、大丈夫ですわ……! 急所は外れております……! 今は、目の前の敵に集中を……!」
「嗚呼、ヴィク……!」
「ヴィクトリア隊長……!」
「ニャッポリート」
とはいえ、この出血ではそう長くはもたないでしょう……。
何とか早々に、決着をつけませんと……。
――流石王立騎士団最強の男。
わたくしがここまでの傷を負ったのは、王立騎士団に入団してから初めてのことですわ。
「儚い
「危険な
「
「
「「――監禁魔法【
「「「――!!」」」
その時でした。
地面から【
「へっへーん! これでお前らはもう、そこから出れないじゃん!」
「出れないの!」
オオ!
これぞピロス隊長とピピナ副隊長の十八番。
お二人が協力した時だけ使える究極の監禁魔法、【
ひとたび捕まれば絶対に脱出不可能な世界最硬の檻!
それが【
「これは素晴らしい! 私の【
【
なるほど、【
流石【
これでとりあえず、【
「おい、【
リュディガー団長――いや、リュディガーが【
「ああ、そうだったねリュディガーくん。つい魔導科学者としての血が疼いてしまったよ。君との約束通り、これから行かなきゃいけないところもあるし、今日のところはこの辺でお
ム!?
【
あ、あれは――!?
「それでは諸君、ごきげんよう。また近々お会いしよう」
「「「――!!!」」」
みんなが一斉に魔導具を起動すると、【
まさか、今のは空間転移魔導具――!
空間転移魔導具は、おとぎ話の中にしか出てこない、人類の夢の一つ。
【
「くっ……! 【
「ヴィ、ヴィク!?!?」
「ヴィクトリア隊長ッ!!」
「ニャッポリート」
ああ、流石に血を流しすぎましたわね……。
意識が……遠く……なってきましたわ……。
「ボニャルくんッ! ヴィクトリア隊長に回復魔法をッ!」
「は、はいだにゃ!」
ボニャルくんの回復魔法……温かいですわ……。
……フフ、回復魔法を掛けられるこの感覚も……数年ぶりですわ……ね……。
――待っていなさい、【
あなたたちのことは……必ずわたくしたち……王立騎士団……が……。
――わたくしの意識は深い闇に飲まれていきました。