「ど、どうして二人がここに……」
『アラアラアラ、それは私が呼んだからよ』
「なっ!?」
アンネリーゼ隊長が、お父様とお母様、を!?
『団長就任式には、団長の親族が出席するのが通例だもの』
「……」
つまりここまでが全部、アンネリーゼ隊長の筋書き通りということですか。
……やれやれ、本当に恐ろしい人ですわ。
「ヴェルナー、お前ならやれる。……後は頼んだぞ」
「あらぁ、ヴェルナーの団長就任式に出席できるなんて、夢みたいですわぁ」
「と、父さん、母さん……」
お二人から肩に手を置かれ、思わず涙ぐむヴェルナーお兄様。
はうう、わたくしも涙腺がギャンギャンに刺激されておりますわああああああ!!!
『フ、フザけるな! 余は絶対に認めんぞ! そんな逆賊の一族が、名誉ある王立騎士団の団長になるなど! もしあのザイフリート家の連中が全員【
フム。
陛下はまだわたくしたちのことをお疑いのようですわね。
『アラアラアラ、伯父様、そろそろ覚悟を決められたらいかがです?』
『何……だと……?』
アンネリーゼ隊長?
『――仮にザイフリート家の人間が全員【
『……なっ!?』
……ホウ。
『ただでさえ今の王立騎士団は、優秀な隊長格が離反して深刻な人手不足なのです。その上武力の要であるザイフリート家の残りの人間まで離反された暁には、完全に詰みですわ』
『ぐ、ぐぐぐぐぐ……』
フフ、まさかアンネリーゼ隊長がそこまでザイフリート家を買ってくださっていたとは。
『ですから王立騎士団が【
『くっ……! い、致し方ない……! その代わり、誠心誠意、我が国のために働くのだぞ、ザイフリート家の者たちよ!』
「は、はい! もちろんです!」
「承知いたしましたわ」
「ニャッポリート」
ヨシ!
これでわたくしたちも、今まで通り働けますわ!
『ウフフフフ』
「――!」
アンネリーゼ隊長が不気味な笑みをわたくしに向けてきます。
こ、これは、一生かかっても返しきれないくらいの借りが出来てしまいましたわね……。
今後どんな無理難題を押し付けられるか、今から不安でなりませんわぁ~~~~。
「ヴィクトリア隊長、よかったですね!」
「これからもずっと私たちは一緒ですよ、ヴィクトリア隊長!」
ラース先生……!
レベッカさん……!
「ええ、これからもよろしくお願いいたしますわ」
嗚呼、本当によかったですわ……。
わたくしは今後も第三部隊のみなさんと、一緒に仕事ができるのですわね。
それが何より、わたくしは嬉しいですわ――。
『【
「「「――!!」」」
なっ!?
陛下からのまさかの一言に、場が騒然となりました。
お父様とお母様が、復帰ですって!?
それは大変心強いですわぁ~~~~。
「ガッハッハ! もちろんですよ。……バカ息子の尻拭いは、親である俺の仕事ですからね」
「あらぁ、わたくしみたいなオバサンでお力になれるかはわかりませんが、精一杯頑張りますわぁ」
これは俄然、希望が見えてきましたわ!
「ヴェルナー、ヴィク、俺たち四人で、ヴェンデルのことを絶対に連れ戻すぞ」
「は、はい、父さん!」
「もちろんですわ!」
「ニャッポリート」
「ひっ!?」
相変わらず【
もしも【
『アラアラアラ、一家団欒なところ申し訳ないけど、団長就任の挨拶をしてもらってもいいかしら、【
「あ、はい!」
手枷足枷を外されたヴェルナーお兄様がステージに上がり、アンネリーゼ隊長から拡声魔導具を受け取ってこちらを向きます。
そしてメガネをスチャッと上げながら、おもむろに口を開きました。
『――本来私は、まだまだ団長が務まるような器ではないと思う』
……ヴェルナーお兄様。
『だが、こうして団長に任命されたからにはどんな手を使ってでも、必ずやこの国に真の平和をもたらすことをここに誓う! これが私の、団長としての覚悟だ! みんな、どうかこの私に、力を貸してほしい!』
「「「オオオオオオオ!!!!」」」
フフ、なかなかいい挨拶じゃありませんか。
『そして私が団長としての使命を全うした暁には、きっとヴィクがご褒美として、猫耳メイドさんになって、膝枕しながらイイコイイコしてくれると信じているッ!!』
「「「オオオオオオオ????」」」
前言撤回ですわッ!!!
やっぱあのキモ兄に、団長は荷が重いですわッ!!
「よぉ、邪魔するぜ」
「「「――!」」」
その時でした。
後方から、聞き覚えのある声が――。
この声は――!
「あっ、ホルガーさんだにゃ!」
ボニャルくんが、尻尾をピンと立てながら歓喜しておりますわ。
そう、そこにいたのは、
何故ホルガーさんがここに??