『む? 何者だ貴様は? ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ』
陛下がホルガーさんに、怪訝な顔を向けます。
こ、ここはわたくしがフォローしませんと!
「陛下! こちらの方は、変態……じゃなかった、天才鍛冶師のホルガーさんですわ! わたくしの【
まあ、その【
あれ?
そういえば、その両断された【
『フン、その天才鍛冶師とやらが、
「お初にお目にかかります、陛下。突然の無礼をお許しください」
ホルガーさんが折り目正しく、陛下に頭を下げられます。
オオ!?
意外とその辺はしっかりしてる方だったんですのね、ホルガーさんは!?
相変わらずギャップが多い方ですわぁ~~~~。
「実は昨日こちらの第三部隊のみなさんが、【
マア!
そんなことが!?
思わず第三部隊のみなさんのほうを向くと、みなさんは照れくさそうなお顔で微笑まれておりました。
み、みなさああああああああん!!!!
「……本当にありがとうございますわ。わたくしは世界一の、幸せ者ですわ」
「ニャッポリート」
わたくしはみなさんに深く頭を下げます。
「僕たちは当然のことをしたまでですよ」
「そうですよヴィクトリア隊長! 何せ私はヴィクトリア隊長の右腕ですからね!」
「こちらこそいつもありがとうございますにゃ!」
「ヴィクトリア隊長、一生ついていきます!」
「ヴィクトリア隊長!」
嗚呼、涙で前が見えませんわ……。
『フン、で? その剣の修理が終わったというわけか』
「いえ、修理はしてません」
『……何?』
えっ!?
ホルガーさん??
こんなに感動的な場面を作っておいて、そりゃないですわ!?
「同じ物を作っても、結局また折られちまうのがオチです。――だから俺は【
「「「――!!」」」
なっ!?
「ほらよ、【
「ホルガーさん……」
ホルガーさんはわたくしに、一対の双剣を差し出されました。
わたくしはその双剣を、フウと息を吐いてから受け取ります。
「この剣は、今まで【
ホルガーさんは誇らしげに、わたくしとラース先生にニカッと笑いました。
なるほど、確かにこの儚げな夕焼け色をした【
流石ホルガーさん。
相変わらずの再現度ですわ。
――しかもこの剣、わたくしが魔力を込めれば込めるほど切れ味が増すのがわかります。
つまりわたくし次第で、この剣は無限に強くなるということ――!
これでしたら、次こそはリュディガーに勝てるかもしれませんわ。
――いえ、わたくしは必ず勝ちますわ!
「ありがとうございますわホルガーさん。この剣、生涯大事に使わせていただきますわ」
「僕からもお礼を言わせてくださいホルガーさん。僕の『朝焼けのポートフォリオ』からこんな素晴らしい剣を作ってくださったこと、作家冥利に尽きます」
「カカカ、二人からのその言葉こそが、俺にとっちゃ最高の報酬だよ」
「ホルガーさん……!」
ああもう!
また涙腺がギュワギュワしてきましたわッ!
「で、伝令ですッ!!」
「「「――!!!」」」
その時でした。
全身に酷い傷を負った、伝令係のリーヌスさんが駆け込んで来られたのです。
なっ!?
「リーヌスさん、その傷はどうされたのですか!?」
「ニャッポリート」
思わずわたくしは、リーヌスさんに駆け寄ります。
「き、昨日私は【
「「「――!!」」」
マア!?
「そしてその後、【
「「「――!?!?」」」
マジですかッ!!?
それって超お手柄じゃないですかリーヌスさんッ!
――この方こそ、伝令係の鑑ですわ。
ただ、ではこの傷はいったい誰が……。
「ね、根城の場所は……、うっ!?」
「リーヌスさん!?」
「ニャッポリート」
もう立っているのさえ限界だったのか、リーヌスさんはその場に膝をつきました。
「はいは~い。すぐに治療しますね~」
医療班の班長であるユリアーナ班長がリーヌスさんを床に寝かせながら、回復魔法を掛けられます。
「あ、ありがとうございます……、ユリアーナ班長……」
「いえいえ~、これも仕事ですから~」
ううむ、これはリーヌスさんのお話を伺うのは、治療が終わってからですわね。
「あ、よければボクが、記憶投影魔法を使いましょうかにゃ?」
「「「――!」」」
あっ、そうですわ!
こういう時こそ、ボニャルくんの記憶投影魔法の出番ですわ!
これならリーヌスさんが口で説明せずとも済みますし。
「よろしくお願いいたしますわ、ボニャルくん」
「ニャッポリート」
「はいだにゃ! では、その時の記憶を頭に思い浮かべてくださいにゃ」
「あ、はい」
ボニャルくんが右手を、横になったリーヌスさんのおでこに当てます。
これで遂に、【
「記憶の絵の具をパレットに出し
理性の筆で混ぜ合わせ
本能のままキャンバスにぶつけろ
――記憶投影魔法【
ボニャルくんが掲げた左手の先に、映像が浮かび上がりました。
『クカカカカ!
「コ、コイツは――!!?」
「にゃっ!!?」
そこに映った人物を見て、レベッカさんとボニャルくんが、瞬時に殺気立ちました。
わたくしもあまりの驚きに、思わず言葉を失いました。
それは確かにわたくしが殺したはずの、バルタザール・グラッベだったのですわ――。