「おや? ジュウベエとコタは死んだのかい【
夥しい死体の中心にいるブルーノが、フンと鼻で笑います。
仲間であるジュウベエとコタが死んだというのにこの態度……。
やはりあの二人は、【
「その名で呼ぶのはやめてくださいまし。わたくしの名前はヴィクトリアですわ」
「フフフ、いいね、君のその敵意剝き出しの瞳、堪らないよ」
キモッ!!
この男、キモ兄とは別のベクトルでキモさがカンストしておりますわ!
何故わたくしの周りには、こんなにキモい人間が多いのでしょうか……。
わたくしそんなに、悪いことしましたか……?
「ブルーノ、貴様アアアアア!!!! 私の可愛いヴィクに、そのいやらしい目を向けるのを今すぐやめろッ!!!」
頭に特大ブーメラン刺さってますけど、大丈夫ですかキモ団長???
「う、うおおおお!!!」
「オイ!? 待てッ!」
その時でした。
キモ団長の隣に立っていた団員の方が、ブルーノに向かって突貫しました。
ですが――。
「ガ……ハッ」
「「「――!!」」」
その団員の方の身体は、一瞬でバラバラに斬り刻まれてしまったのでした。
これは――!
「ブルーノ様の身体には、指一本触れさせませんよ」
ブルーノの隣に立つイルメラの指先から、無数の糸のようなものが伸びており、その糸に血が滴っておりました。
「フフフ、ありがとうイルメラ。やはり君の【
「恐縮です、ブルーノ様」
イルメラがメガネをキュッと上げます。
なるほど、あれがイルメラの武器だったのですか……。
イルメラは副隊長という立場でありながら、今まで人前では一度もその力を見せたことがありませんでした。
どんな戦い方をするのかずっと疑問だったのですが、まさか糸使いだったとは……。
これは厄介ですわね。
創作の世界でも、糸使いは強キャラと相場が決まっていますし。
何より広範囲に攻撃できるのが、こちらにとっては致命的ですわ。
これではせっかくの大人数である利点を活かせませんからね。
この夥しい死体は、イルメラの手によるものだったのですわね。
「な、何をやっているのだッ!? 早くあの逆賊を、さっさと片付けんかッ!」
キモ団長の後ろでビクビクしながら、陛下が好き勝手なことを仰ってますわ。
それができたら苦労はしませんわ!
ちょっと黙っていてくださいまし!
「やれやれ、やはりこの国の癌はお前なのだなゴットハルト。お前のような人間がトップに立っているから、この国は腐敗しているんだ」
「な、なにィ!?」
ブルーノが陛下に呆れ顔を向けます。
ううむ、ブルーノの言い分も一理あるだけに、言い返す言葉が浮かびませんわね……。
「トップが自らルールを破っているのだから、国民たちもルールを破るのは自明だ」
「ル、ルールだと!? 余は一度もルールを破ったことなどないぞ! 何故なら、この国では余がルールだからだッ!」
うわぁ、そういうこと実際言っちゃう人、創作以外で初めて見ましたわ……。
「いいや、違うね」
「……!?」
「お前はルールじゃない。この世界のルールは、ボクの父である、【
「「「――!!!」」」
なっ!?
ブルーノの父が【
もう一人くらい【
つまりバルタザールとブルーノとコタは、腹違いの兄弟ということですか……?
うわぁ、闇鍋みたいな一家ですわね……。
「ロ、【
「その通りさ。父さんこそがこの世界のルールであり、神そのもの。父さんがこの国の王となれば、この国は必ずや素晴らしい国になる! そこには誰もが平等に暮らせる、真の平和がある! だからそんな真の平和を築くため、ゴットハルト――お前にはここで死んでもらう」
「ヒィッ!?」
ブルーノが【
……フン。
「滑稽ですわね」
「……何?」
ブルーノがわたくしに、怪訝な顔を向けます。
「どの口が、真の平和だなんて言うのです? アナタたちのやっていることは、所詮グループから気に食わない人間を排除したいという、子どもの我儘と一緒ではないですか」
「なん……だって……!」
いつもは冷静なブルーノが、珍しく怒りを滲ませます。
フフ、どうやら地雷を踏んだようですわね。
「そうやって父である【
「ボ、ボクは――
このファザコンが――。
ブルーノは【
「悪意の数だけ罪は増し
罪の数だけ鎖は増し
鎖の数だけ未来は減る
――拘束魔法【
「「「――!」」」
ブルーノの影から、夥しい数の黒い鎖のようなものが生えてきて、それがわたくしの手足をガチガチに拘束しました。
クッ、ドッペルゲンガーのわたくしでは、この【
「罰だッ! 父さんという絶対的なルールに逆らう者には、罰を与えるッ!!」
ブルーノが【
チッ――!
「ヴィクウウウウウ!!! お兄様が助けに来たぞおおおおおおお!!!!」
「っ!」
わたくしに【
「ヴェルナーお兄様! わたくしはドッペルゲンガーですから、死んでも問題ございませんわ!」
「問題はあるッッ!!!!」
「――!?」
ヴェルナーお兄様???
「ヴィクの姿形をしたものが傷付くのを、兄である私が黙って見ていられるわけがないだろうッ!! 私は兄として――命を懸けて、お前を必ず守る」
「……ヴェルナーお兄様」
フフ、本当にキモいお兄様ですわ。
「ブルーノ、よくも私のヴィクに鞭を向けてくれたな」
「フン、だったら何だというんだい?」
ヴェルナーお兄様は【
「ブルーノ・ゲープハルト、私の可愛いヴィクを傷付けようとしたその罪、万死に値する。――貴様をブッ殺すッ!」