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第1話 とりあえず、このモザイクは消し炭にしますね?(やめろぉぉぉっ!? それは俺のおいなりさんだぁぁぁぁっ!?)

 どこにでもいる天才私立探偵である俺、金城玉緒が異世界の女しか居ない国【リバース・ロンドン王国】に転移して1週間と少しが経った、ある日の早朝。


 この国の第一王女さまにして我が【使い魔】と化したアリア・ウエストウッドさんが気持ち良さそうに天蓋付きのベッドで眠っている間、俺は彼女の妹にしてこの国の第二王女であるリリアナ・ウエストウッドさんに――




「はい、タマちゃん。言われた通りお父様の書斎から『セイリョクザイ』って言うのを盗んで来たよ!」

「うっほほ~い! ありがとうリリアナちゃん しゅき♪」




 ――犯罪の片棒をかつがせていた。




「ところで、この『セイリョクザイ』って何なの?」

「男の子が元気になるお薬さ」




 そう言って小首を傾げるリリアナちゃんから精力剤の入った小瓶を受け取る。


 俺がこの異世界にやって来て1週間、それはつまり俺の下半身の大秘宝ワ●ピースが失われて1週間を意味していた。


 元気玉を失った俺のムスコは、心なしか日に日に弱っていっている気がしてならない俺は、なんとか昔の元気を取り戻すべくアリアさんに相談した。


 その時アリアさんがポロっと、




『そういえばお父様の書斎で精力剤を見た記憶が――何でもありません、忘れてください』




 と口にしたのは全ての始まり。


 俺はリリアナちゃんを買収し、ムスコの元気を取り戻すべくカエル族の王様の書斎から元気の源精力剤を取りに行かせた。


 もちろんアリアさんにバレないように。


 ……いやだって、バレたら怒られそうだし。




「あっ、そうだタマちゃん! ソレを見つけた時にね? 横に注意書きの紙が置かれていたんだけどね?『このセイリョクザイは魔法で超強化しているため、飲む際は用法・要領を守ってください』って書いてあったよ」

「もう期待しかない」




 まさに俺が望んでいたお薬である。


 おいおい、魔法で超強化って……一体どんな素晴らしい薬になっていると言うんだ?


 もう俺の心と下半身は期待でパンパンに膨れていた。




「いいね、いいね! 一国の王様が飲むスペシャルな精力剤、一体どんなスペシャルな効果があるのやら!」




 俺は震える指先を叱咤しったして、小瓶の栓をゆっくりと抜いた。


 プシュッ! というパーティーの開幕音と共に、甘い匂いが辺りに充満した。




「うわぁ……なんだか美味しそうな匂いだね?」

「確かに。匂いだけなら完熟マンゴーにも劣らない濃厚さだ」

「ね、ねぇタマちゃん? ぼ、ボクにも一口ちょうだい?」

「やめておけ。コレは女の子が飲んだら地区Bが爆発するヤバイ薬だぞ」

「チクビが!? うぅ~……じゃあ止めとく」




 肩を『しゅんっ……』と落とすリリアナちゃんにテキトーな嘘をぶっこみながら、俺は小瓶を天高く掲げた。


 悪いなリリアナちゃん、この精力剤は1人用なんだ。


 某国民的アニメの坊ちゃまのような事を内心口にしながら、俺は――




「タマオ、いっきまぁぁぁぁす!」




 気合一閃。


 精力剤の中身を一気に飲み干した。




「ケップ! なんかコーラみたいな味だった……」

「どうどう、タマちゃん? 元気になった?」

「う~ん? 流石に飲んですぐ効果が出るワケじゃ――おっ?」




 ボッ! と身体の芯に灯がともったように温かくなった。


 その灯は徐々に下半身へ移動していき、やがて俺のムスコへと到達すると、物凄い勢いで燃焼を開始し始めた。


 それは一呼吸ごとに大きくなっていき……。




「おっ? おっ? おっ!?」

「うわぁ! すごい! ムクムクしてる! ムクムクしてるよ!」




 俺の下半身を見て『ワッ!』と歓声をあげるリリアナちゃん。


 そして彼女の歓声に呼応するように、俺のシンボルも瞬く間にエボリューションしていく。




「な、なんだこのストレ●チパワーは? 10代の頃でも感じたことがないエネルギーが身体中を駆け抜けていく!? これが魔法の精力剤の力か!? すげぇや!」

「なんで男の子は元気になると、股間がムクムクするの?」




 不思議だなぁ? と目をキラキラさせながら小首を傾げるリリアナちゃん。


 リリアナちゃん建国したばかりの金城王国を凝視しながら、興味深そうにその唇を動かした。




「男の子ってすごいね? 元気になるとアソコがモゾモゾ動くんだね?」

「ハッハッハッハッ! そうさ、男の子は凄いん――ちょっと待って? モゾモゾ?」

「うん、モゾモゾ」




 リリアナちゃんの視線を追うように我が下半身に視線を向ける。


 するとそこには彼女の言った通り、ズボンの中で生き物のようにドッタンバッタン♪ 大騒ぎしている俺のムスコの姿があった。




「えっ、ナニコレ!? 俺のマイサンがパンツの中で暴れまわってるよ!? 怖い!? ちょっ、誰か取って!? 取ってぇ!?」

「任せてタマちゃん!」




 了解だよ! とリリアナちゃんが俺のズボンに手をかけるなり、何ら躊躇ためらうことなく、


 ――ズルッ!


 と勢いよく俺のズボンとパンツをズリ下ろした。


 その瞬間。




 ――ばびゅんっ!




 俺の下半身からモザイクの塊が弾丸のごとく部屋へと飛んで行った。




「うわぁ!? なにコレ!?」

「あの色、あの形……間違いない!」




 部屋の中を縦横無尽に飛び回るモザイクに、俺は確信する。


 間違いない、あのモザイクは――ッ!?




「おティムティムだ! アレは俺のおティムティムだ!?」




 何故か自分の意思を持って部屋の中を飛び回るマイサン。


 そのスピードは軽く電動キックボードを超えていた。




「お、落ち着けマイサン! パパの言うことを聞きなさい!」

「速すぎて捕まえられないよ!? こうなったら覚えたての攻撃魔法で!」

「バカ!? やめろ小娘!? はっ倒すぞ!?」




 俺のモザイクに狙いを定めてフレンドリー・ファイアしようとする金髪巨乳を、慌てて抱きしめて止める。


 な、なんて恐ろしい事を考えるんだ、この女は?


 テメェの血は何色だ!?




「離してタマちゃん! じゃなきゃモザイクを仕留められない!」

「絶対に離さない! 死が2人を分かつまで、絶対に離さない!」




 永遠の愛を誓う勢いでバイオレンス・プリンセスの動きを封じつつ、空飛ぶモザイクを必死に守る。




「いやぁ、離してぇぇぇっ!? 助けてお姉ちゃぁぁぁぁ~~ん!」

「えぇい、変な声を出すな! 異常な性癖に目覚めそうだ!」




 俺の中で開けてはならない性癖の扉が『ゴゴゴゴゴ!』と音を立てて開かれようとするので、慌てて閉めに掛かる。


 多分この扉を開けたら最後、俺は美少女ゲームに出て来る鬼畜主人公になる予感がする。


 そんな確信にも似た予感を感じつつ、リリアナちゃんの口持ちを片手で覆い、無理やり羽交はがい絞めし続ける。




「よし、コレで問題ナシ!」

「む~っ!? む~っ!?」




 口元を覆われているせいか、呪文の詠唱が出来ず、俺の腕の中でくぐもった声を出すリリアナちゃん。


 とりあえずこれでサブ・ウェポンに続いてメイン・ウェポンまで消失する危機は過ぎ去った。




「あとはアレを回収して元の王座に戻してやればいいだけだ!」

「む~っ!? む~っ!?」




 抗議的な瞳で俺を睨んでくるリリアナちゃん。


 えぇい、静かにしろ!


 アリアさんが起き――




「うぅん? なんですか、騒がしい……? まだ朝ですよ?」




 あっ、ヤッベ!? 


 起きた!?


 アリアさん起きちゃった!?


 ぎくりっ!? と俺の身体が強張るのと同時に、寝惚ねぼまなこのアリアさんがベッドからゆっくりと身を起こした。


 その瞬間。




 ブブブブブッ! ――ビッターン!




「あっ」




 部屋の中を飛び周っていた俺のシンボルが、勢いよくアリアさんの顔面に張り付いた。


 空気が凍った。




「…………」

「あ、あわわわわっ!?」

「む~?」




 アリアさんは無表情のまま、


 ――バリッ!


 と顔に張り付いた俺の独立愚連隊を片手で引き離した。


 そのまま己の手の中にあるモザイクに視線を落とし、次に自分の妹を下半身丸出しで拘束する俺を一瞥し、またモザイクに視線を戻し……ニッコリ♪ と微笑んだ。


 それはまるで春の午後を彷彿とさせる、やさしい笑みだった。


 聡明な彼女のことだ、このモザイクが誰のモノか分かったのだろう。


 アリアさんはどこまで優しい笑顔のまま、片手に収まっている俺の独立愚連隊に向けて、その愛らしい唇を震わせた。




「焼却魔法! バーニング・エンペ――」

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」




 近年稀に見る反射神経で、アリアさんから俺のシンボルを奪還する。


 それと同時にマイサンが再び高速でビチビチ!? 動き始めて、気がつくとまた俺の手から離れて部屋の中を飛び周り始めた。


 かと思えば、リバース・ロンドン魔法女子学院へと続く扉をブチ破って、お外へと逃げ出し――ってぇ!?




「ヤバイよ、タマちゃん!? タマちゃんのヴォルフ・シュテインが逃げちゃう、逃げちゃうよ!?」

「おい!? なに勝手に人のポコ●ンに名前をつけてんだ!? 腹立つんですけど!? 名前がカッコイイのが余計に腹が立つんですけど!?」

「そんな事を言っている場合ではありませんよ、勇者様!」




 寝起きだというのにハイテンションのアリアさんが叫んだ。


 その瞬間、もう既に起きていたらしい魔法女子学院の生徒と教師陣の悲鳴が俺達の耳朶を震わせた。




「いやぁぁぁぁぁっ!? ゴキブリみたいな変な臭いのする変な形の生き物が、学院内を飛び回ってるぅぅぅぅっ!?」

「こんの……攻撃魔法フローズン・スピア!」

「ダメだ! あまりの速さに全部回避されるぞ!?」

「落ち着きなさい、みなさん! 全員で攻撃魔法を放てば、いづれ当たります。いきますよ?」


「「「「はい、先生! 攻撃魔法ライトニング・ボル――」」」」


「やめてくれぇぇぇぇぇぇっ!? それは俺のおいなりさんだぁぁぁぁぁぁっ!?」

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