――うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?
――コロセッ! コロセッ! コロセッ! コロセツ!
――汚物は消毒じゃぁぁぁぁぁぁっ!
パリス・パーリ城の外から、そんな理性のタガが外れた野太い声が俺達の鼓膜を微かに震わす。
俺は持って来てた懐中時計で時間を確認した。
時刻は午後23時3分。
作戦決行時間である。
「始まったようですね」
「うしっ! じゃあウチらも行きますかっ!」
そう言って、パリス・パーリ城へと続く隠し通路に身を潜めていたアリシアちゃんが壁に備え付けられたボタンを押した。
途端に静かに音を立てながら、城の小部屋へと繋がる隠し穴がゆっくりと開いていく。
「分かっているとは思うけど2人共、ここからは時間との勝負だからね?」
「もちろん分かっていますよ、勇者様」
「1時間以内にグレート・ブリテンの秘宝を止めればいいんでしょ? 分かってるっつの」
アリアさんは神妙に、アリシアちゃんは『うるせぇな』とでも言いたげに首を縦に振った。
アリアさんはともかく、アリシアちゃんはいずれ分からせてやろうと心に誓いつつ、俺は小さく2人に号令をかけた。
「よし、行くぞ! 世界を救いにっ!」
「了解ですっ!」
「そんじゃま、チャチャッと行きますか! 2人共、遅れんじゃないわよ?」
俺達は決意を新たに城の小部屋へと続く隠し穴へと身を滑り込ませ、
――むぎゅっ♪
アリシアちゃんのお尻がまた引っかかった。
「「…………」」
「……正直、悪かったと思ってるわよ」
アリシアちゃんのお尻がもの悲し気にプルプル♪ と震える。
何とも言えない空気が俺達を包み込んだ。
「……また太ったんですか、このデブ?」
「『また』とか言うな!? つぅかデブじゃねぇし!?」
冷めた目でメスガキのデカ
もはやその瞳はメス豚を見下す女王様のソレッ!
流石は生まれながらの女王様だっ!
「とか言っている場合じゃねぇよ! ちょっ、何やってんのアリシアちゃん!? 時間無いんだよ!? 分かってるの!?」
「うるせぇ! そんな事は分かって――ひゃぁっ!? ちょっ!? どこ触ってんだ、このセクハラ大魔神!? 性欲の擬人化!?」
慌てて俺はメスガキのデカ尻を向こう側へ押し込むべく『左手は添えるだけ……』とシュートのコツを呟きながら全力でアリシアちゃんを押すのだが……もうね、ビクともしないの彼女。
100人乗っても大丈夫なイ●バ物置くらいビクともしないのよね、彼女。
「チクショウ、ダメだ!? 尻が穴にミッチミチに詰まっていてビクともしねぇ!?」
「ミッチミチ言うな!? はっ倒すぞ!? ――ひゃぁんっ❤」
――パァンッ!
と甲高い音を立ててアリシアちゃんのデカ尻をぶっ叩くも、やはり彼女のお尻はビクともしない。
とりあえずもう1発だけぶっ叩いとくか、と俺が手のひらを天高くかざした所でアリシアちゃんのお尻が抗議するかのようにプルプル震えだした。
「何すんじゃワレェ!? 気持ちい――痛いじゃろがい!?」
「いや、前回は尻をぶっ叩いたら通れたし、今回もソレに
「やめろ! レディーのお尻を何だと思ってんだ!? お前、次叩いたら
ウガーッ! と怒り狂うアリシアちゃんのデカ尻。
流石に訴訟だけは勘弁願いたかったので、俺は大人しく振り上げた手のひらをそっと下ろした。
しかし、そうなるとどうやってこのデカ尻を押し退ければいいんだ?
「んもうっ! なんでダイエットしなかったの、アリシアちゃん!?」
「うるさい、うるさい! 起こってしまった事を嘆く暇があったら打開策を考えろ! なんで人間の目が前についているか知っているか? ソレは過去を振り返らない為だよ!」
「ヤダ、カッコイイ……」
思わずキュンッ♪ となってしまったのはナイショだ。
「どうしよう、アリアさん? アリシアちゃんの尻がデカ過ぎるせいで前へ進めなくなっちゃったよ」
「デカくない! アタシの尻はデカくない!」
「そうですね……なにか潤滑油のようなモノを使ってみるのはどうでしょうか?」
潤滑油? と俺が小首を傾げると、アリアさんは「はい」と首を縦に振った。
「こう、油みたいに滑る液体でヌルっと」
「なるほど、油か! 魔法で出せる、アリアさん?」
「真水なら出せるんですけど、流石に油は無理です……。ブーはどうですか? 魔法で出せますか、油?」
「ブー言うな!? ……アタシも無理、出せない」
お通夜のような空気が俺達を襲う!
「しょうがない、背に腹は変えられんか」
「ナニをする気ですか、勇者様?」
不可解そうに俺を見つめるアリアさんに『任せてチョンマゲ♪』とアイコンタクトを飛ばしながら、俺はゆっくりとアリシアちゃんのデカ尻に向けて手のひらを向けた。
イメージしろ……ヌルヌル滑るエロい液体を。
出来るだけ鮮明にっ!
瞬間、ポゥッ! と頭の隅が温かくなる不思議な感覚が俺を包む。
「本当は『ここぞ!』という場面の切り札で使いたかったんだけどな、コレ」
「ちょっ、なになに!? ナニする気!? ナニする気なの!?」
「ゆ、勇者様! まさか……ヤル気ですか!? 生意気なメスガキを分からせるんですか!? 今、ここで!?」
怯えるアリシアちゃんのデカ尻の真横で「エロ同人みたいに! エロ同人みたいにっ!」と鼻息を荒げるムッツリ☆プリンセス。
一体彼女が何を期待しているのか、正直手に取るように簡単に分かるのだが……残念ながら今回は期待に応えられそうにない。
いやまぁ、別の意味で彼女が好きそうな展開にはなるのかな?
そんな事を考えながら、俺は頭ドピンクのお花畑プリンセスを尻目に、エロ漫画に出てくる貞操観念ゆるゆるの人妻の如く慌てふためくアリシアちゃんのお尻めがけてハッキリとこう言った。
「異世界召喚ッ!