目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第26話 青い巨人 VS 赤い巨人

 青い巨人に頬をぶん殴られて、俺、金城玉緒は後ろへ2歩ほど後退あとずさった。


 頬がピリピリと痛むが、致命傷というほどのダメージではない。


 だがそれは相手も同じようで、俺に顔面をぶん殴られた青い巨人は同じく数歩真後ろへよろけたかと思うと、すぐさま威嚇するようにファイティングポーズをとった。


 どうやらヤル気……いや殺る気マンマ●コらしい。


 なんて血の気の多い巨人なんだ。


 正直、俺は巨人に成りたての巨人ビギナーなので、今のところ自分に何が出来るのか全く分かっていない。


 もう気持ち的には初出撃する某初号機のパイロットである。


 出来ることなら、このまま何事もなくお帰りいただきたいのだが……そうは問屋が卸さないらしい。




GAAAAAAAAAぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉAAAAAぉぉぉぉぉッ!!』




 青い巨人は獣のような雄叫びをあげながら、ドシンッ! ドシンッ! と大地を震わせながら俺に突進してきた。


 チクショウッ!?


 もうやるしかねぇ!




URAAAAAAAAかかってこいや――ッ!?』




 俺も同じく口から獣のような声を発しながら拳を構える。


 そのまま青い巨人を迎え撃つ……フリをして飛びかかって来たアンポンタンを巴投げの要領で投げ飛ばした。




『GRAAAAAAAAAAッ!?』




 謎の怒声を張り上げながら、キレイに俺に投げ飛ばされる青い巨人。


 背中を大きく打ったのか、青い巨人は痛みに悶え苦しみだす。


 俺はそんな青い巨人からマウントを奪うと、両手を握りしめて鉄槌のように巨人の顔面に叩き下ろした。


 グチャッ!? という何とも嫌な感触が拳から全身に駆け回る。


 実に気持ち悪い感覚である。


 正直、今すぐにでも止めたい気分だ。


 だが止めれば必ず反撃される。その確信がある。


 だからこそ、奴の息の根を止めるまでは絶対にこの拳は止めない!




URAAAAAAAAさっさとくたばれ――ッ!?』




 もはや泣き叫ぶように拳を叩き下ろす。


 刹那、青い巨人の目が光り輝いた。


 ヤバイ、熱線がくる!?




URAAA構うかッ!』




 それでも俺は拳を青い巨人に打ち下ろし続けた。




「目が光ってる! 勇者様、逃げて!?」




 巨人化により超強化された俺の聴覚が、遠くに居るアリアさんの声を捉える。


 それと同時に青い巨人が目から例の熱線を射出した。


 熱線は俺の拳を弾くと、そのまま巨人化した俺の身体を貫かんばかりに胸部へと突き刺さった。


 その衝撃で俺の身体は数十メートルほど宙に浮き、遥か後方へと吹っ飛ばされてしまう。


 うぎぎっ!? 


 痛い……けどっ!


 俺は熱戦を直に喰らった胸部へと手を伸ばした。


 そこには傷一つついていない綺麗な胸板があり……すごいな巨人化?


 防御力まで桁違いじゃないか!




「ヤバイ、ヤバい!? まだ目が光ってる!? アイツ、まだ目が光ってる!?」

「勇者様、はやく立って! 反撃がきますっ!」




 俺が巨人化した自分の身体に改めて感動していると、アリシアちゃんとアリアさんの怒声が鼓膜を震わせた。


 ハッ!? と顔を上げると、青い巨人の瞳に再び光が集まりだしていて……ヤッベ!?


 俺が慌てて防御姿勢を取るのとほぼ同時に、マシンガンのような光の光弾が青い巨人の瞳から放たれる。


 ズドドドドドドッ! と大気を切り裂き、俺の身体に着弾するなり盛大に爆発する光弾ソレは地味だが着実に俺にダメージを与えてきて、い、いてぇっ!?




「勇者くん、反撃っ! 反撃っ!」




 ソフィアさんがプロレス観戦中のオッサンのようなヤジを飛ばしてくる。


 いやいや?


 反撃って言ったって、どうしろと?


 攻撃は最大の防御なりっ! と言わんばかりに、五月雨の如く降り注ぐ光弾の雨は、接近することを許さない光の壁である。


 その圧力を前に1歩も進める気がしない。




「ビームじゃ、勇者殿っ! ビーム、ビームっ! 目からビームッ!」




 途方に暮れる俺に、マリーちゃん皇帝陛下から激励が飛んでくる。


 ビームってお嬢さん、気軽に言ってくれるけど、どうやって出せばいいのさ?


 こちとら巨人なんて初めてなった巨人ビギナーなんだぞ?


 目からビームって、どうやれって言うんだよ!?


 と抗議を送りたかったが、そんな幼女皇帝陛下の言葉に何か思い当たる節でもあったのか、アリアさんがハッ!? とした声音をあげた。




「そうですよ、ビームですよっ! おそらく勇者様の赤い巨人とあの青い巨人兵は同タイプの巨人ッ! あの青い巨人にビームが出せて、勇者様に出せないハズがないっ!」

「よっしゃ! 勇者、ビームだ! 勇者ビームだ!」

「勇者くん! 気合、気合! ビームは気合と根性だよ!」

「イケェ、勇者殿! ビーム! 目からビームッ!」




 ビームの大合唱を奏でる乙女たち。


 その顔は俺がビームを出せると本気で信じている少年のようなキラキラした瞳で……チクショウ!?


 やってやんよ!


 俺、やってやんよ!


 気合と根性でビーム出したらぁっ!




URAAAA目からビームッ!』




 両手を顔の前でクロスさせたまま、目尻に力をこめる。


 なんか出ろ。


 なんか出ろ!


 なんか出ろっ!


 心の中で強くそう願った、その瞬間。




 ――クロスさせた両腕からビームが出た。




URAAAAAAAAなんか出たぁぁぁぁぁ――ッ!?』




 驚く俺の両手から発射されたビームは青い巨人の放った光弾を弾き、そのまま巨人兵の身体を貫いた。




GAAAAAAAAAぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉAAAAAぉぉぉぉぉッ!?』




 悲鳴のような声をあげながら悶え苦しむ青い巨人。


 ここだっ!


 ここしかないっ!


 これがアイツを仕留める最後の好機チャンスだっ!


 絶対に逃すな!


 て! 撃て! 撃て! 撃て!




URAAAAAAAAくたばれデカブツ――ッ!?』




 体中を駆け巡るエネルギーを両手に集中させ、さらにビームの出力をあげる。


 ここで決めるっ!


 その確固たる決意に呼応するかのように、ビームの威力が目に見えて上がっていく。


 そんな俺の姿を見て、乙女たちが「よっしゃーッ!」と声を張り上げる。




「勇者殿っ! そのまま、そのままっ!」

「ぶっ殺せぇぇぇぇ、勇者ぁぁぁぁぁぁっ!」

「ちょっと待ってください、皆さん。なんだか勇者様の身体、おかしくありませんか?」

「あっ、ホントだ! 勇者くんの身体、赤から白に変わっていってる!?」




 俺の超聴覚がソフィアさんの声を拾う。


 見ると、確かに俺の真っ赤なボディーが手足から次第に真っ白になりつつあった。


 それはビームの威力が増す度に、どんどん面積を大きくしていっていて……おいおい?


 まさかコレは……エネルギー切れか!?


 エネルギー切れなのか!?


 確かに白の面積が増える度に疲労感がドッ! と積み重なっていく感じがする。


 という事は、ボディーの変化は活動限界時間を示しているというワケか!?


 俺は青い巨人へと再び視線をよこした。


 あの巨人が倒れるまで、あと数十秒といったトコロか。


 そしておそらく、俺の活動限界時間もあと数秒がいい所だと思う。


 俺の中の巨人エネルギーが切れるのが先か、それとも青い巨人が倒れるのが先か。


 上等だっ!




URAAAAAAAAやってやんよ、オルァ――ッ!?』




 最後の一滴に至るまで、全てを振り絞るように光線を射出し続ける。


 やがて目の前がチカチカと白黒に点滅し始めると、とうとう俺の身体も全身真っ白になってしまった。


 それでも構わず両手から光線を吐き出し続ける。


 頼む、倒れてくれ!


 そう願いながらビームを出し続け数秒。


 俺の両手からビームが止まった。




URAAもうムリ……』




 空っぽ。


 もう身体の中は空っぽだ。


 1ミリもビームを出せる気がしない。


 それどころか、立っている事すら出来ない。


 俺は崩れ落ちるようにその場で倒れた。


 青い巨人は……まだ立っている。




『UGAAA……』




 青い巨人はゆっくりと倒れている俺の方へと歩いてくる。


 ヤベェ、トドメを刺す気だ!?


 動け、俺の身体!


 俺は労働基準法を無視して自分の肉体に激を飛ばすが、身体は『無理っす!』と言っていうことをきいてくれない。


 そんな焦る俺を無視して、青い巨人は俺の顔元まで近づいて来た。


 ヤバイ、死ぬ!


 死を覚悟する俺を、巨人は悠然と見下ろし、




 ――そのまま静かに真後ろへ倒れ、爆発した。




 瞬間、俺の意識がブッツリと途切れた。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?