「いいですか、勇者様! 本当に見るだけですからね!?『おさわり』が厳禁でお願いしますよ!?」
「もちろんさ! 紳士の俺がレディーの嫌がることなんてするワケがないだろう!?」
「本当の紳士は女性に対して『下着を見せてくれ』なんて言いませんよ……」
まるで神託を受ける信者のように土下座スタンバイでアリアさんを見上げる俺。
女神の降臨を今か今かと待ちわびる俺に、アリアさんは顔を真っ赤にしながら、
「もし『おさわり』したら、勇者様と次に会うのは法廷ですからね!?」
「わかった。全力で戦おう」
「触る気マンマン!? やっぱり止めとこうかな……」
「じょ、冗談、冗談ッ! マイケル・ジョーダンだってばよぉ!」
全力でアリアさんに媚びへつらいながら、彼女の機嫌が少しでも上にいくようにゴマをすっていく。
「絶対に触らないし、近寄らない! もうミュージカルを見ているかのように静かに拝謁することを約束するよ!」
「……わかりました。その言葉を信じます」
そう言ってアリアさんは小さく頷くと、覚悟を決めたように一度だけゴクリッ! と生唾を飲み込んだ。
「そ、それではいきますよ? ……えいっ!」
気合一閃。
その愛らしい掛け声と共に、『えいや!』とアリアさんは平民用のズボンを脱いだ。
瞬間、俺のホットでタフな1日を告げるオープンセレモニーが開幕した。
「ど、どうでしょうか……?」
上着1枚となったアリアさんが
どこか窺うような、俺のリアクションを『おずおず……』と言った様子で待ちわびるアリアさん。
そんな彼女に俺は……感動のあまりむせび泣いていた。
「あ、あの? 勇者様? せめて何かリアクションを……えっ!? 泣いている!? まさかのガチ泣き!? なんで!?」
「アリアさん……やはり君は最高だ!」
俺は涙で滲む視界の中、パチパチパチ! と盛大に彼女に賞賛の拍手を送った。
流石はアリアさんだ、男心をよく分かっていらっしゃる。
上着の裾から女性の股ぐらに存在する神秘の二等辺三角形の底辺がチラチラと垣間見える。
そう、『モロ出し』ではなく『チラチラ』とだ!
あえて見えるか見えないかのギリギリのラインこそが凄まじいエロスを生むことを彼女はよく分かっていらっしゃる!
そうなのだ! 男は『際どいが一般紙でもОK!』な状態こそが一番期待を高め、妄想を広げ、ハイクオリティなエロスを感じるのだ!
まるでフィンランドが生んだ伝説のスナイパー、白い死神【シモ・ヘイヘ】を彷彿とさせるレベルで男のウィーク・ポイントを適確に狙撃してきやがる!
一体彼女は将来どんな偉人になるっていうんだ!?
「アリアさん、今ここに改めて誓うよ。我々の永遠の友情をそのパンチラに誓おう」
「どこに誓っているんですか……。それよりも、どうですか? そのぅ……おっき、しましたか?」
神が与えてくれた奇跡に感謝している俺に向かって、恥ずかしそうにそう尋ねてくるアリアさん。
その顔はトマトのように真っ赤で……ふむ。
どうしてこう恥じらう女の子はこんなに魅力的なのだろうか?
流石のコレには我がムスコも思わずニッコリ♪ したに違いない――
「ば、バカな!? こ、これでもダメなのか!?」
俺の宝剣はこの絶景を前にしてもピクリとも反応しなかった。
「な、何故だ相棒!? 一体ナニが気に食わないんだ!?」
俺はビクッ!? と肩を震わせるアリアさんに視線を向けた。
女性的で丸みのある愛らしい身体つき。
潤んだように光る大きな瞳はまるで濡れたサファイアのように美しい。
まるで西洋人形のような端正な顔立ちに、キラキラと輝く銀色の髪。
上着の襟元から覗く、シミ1つない真っ白い首筋。
触れたら壊れてしまいそうな細い足首に、スラリとしたふくらはぎ。そしてムッチリとしスケベな太もも。
服の上からでもハッキリと分かるほどの爆乳と形の良いお尻。
向こうの世界でもお目にかかることが出来ない極上の女。
だというのに、俺の下半身のログポースは1ミリも反応しないだと!?
頼む、何かの間違いであってくれ!?
「ゆ、勇者様? そんな聖水をぶっかけられた悪魔のように苦しみ出して……だ、大丈夫ですか?」
「うごごごごっ!?」
「だ、ダメだ……もう人語すら喋れていない。勇者様、落ち着いてください」
アリアさんが何かを言っていたが、全てが夢のように頭からスルリと抜け落ちていく。
……んっ? 夢?
あっ、そうか!
コレは夢なんだ!
きっとホンモノの俺はまだ小学4年生で夏休みの宿題をヒィコラ言いながら友達を片付けている最中に違いない。
はやく夢から覚めて夏休みの宿題を片付けないと!
俺は夢から覚めるべく何か自分に刺激を与えようと辺りをキョロキョロと見渡す。
「うん? どうしたんですか、勇者様? そんなにキョロキョロして?」
アリアさんが不思議そうに俺を見てくるが、構わず俺は近くに武器が落ちていないか探し続ける。
チッ、何もないな。夢の世界ならハンドガンの一丁や二丁くらい落ちていたってよさそうなモノなのに。
しょうがない、最終手段だ。
俺は拳を固く握りしめると、何ら躊躇いなく全力で殴りつけた――己の、股間をぉぉぉぉぉぉぉっ!
「うぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「ちょっ!? 急にナニしているんですか勇者様!? だ、ダメダメ!? 止まって!?」
気が狂いそうになるほどの痛みが脳天を駆け巡る。が、やはり夢からは覚めない。
それどころか慌てたアリアさんが俺を床の上に押し倒して身動きを取れなくしとうとしてきて、えぇい! 邪魔だ!
「離せ、離せぇぇぇぇぇっ! 今こそ我が肉棒を叩き潰すとき! 砕け散れ、我が股間よ!」
「だからダメですってば、勇者様!? いくら刺激に飢えているからって、そんなハードプレイは身体が
「うるせぇぇぇぇっ! 目覚めろ、我が魂ぃぃぃぃぃっ!」
「……朝から五月蠅いと思い見に来れば……一体ナニをしておるんじゃ、お前らは?」
「あらあら? 勇者くん、どうしたの? そんな発狂したように声を荒げて?」
「マリー陛下ッ! ソフィアさんっ!」
アリアさんが心底『助かった!』と言わんばかりの声をあげる。
見ると、牢屋の目にオカッパ頭の幼女皇帝陛下と人妻(独身)の色気ムンムンの女騎士の姿が目に入った。
この国のトップにして合法ロリと俺の中でもっぱらの噂のマリー・アントニオ女王陛下と、彼女のお付きの近衛騎士ソフィア・ソッキーンさんだった。
マリーちゃん皇帝陛下は何故か頬を赤らめながら、気まずそうに俺達から視線を逸らす。
その横でソフィアさんが興味深そうに「あらあら?」と言っていた。可愛い♪
「あぁ~……2人とも? 男女の関係についてとやかく言うつもりは妾にはないが、そのぅ……な? そ、そういう事は夜にやらぬか。夜に」
「朝からお盛んねぇ~♪」
「何を気持ちの悪い勘違いをしているんですか!?」
見てないで助けてください! と声を荒げるロイヤル☆ムッツリを尻目に、俺は我が肉の延べ棒を抹殺するべく、拳を振り下ろし続けるのであった。