琥珀色の魔法のネックレスが発光し始めて3時間。
とりあえず例の魔力を吸い取るネックレスは魔力の無い俺が保管するということで、ポケットに乱暴にしまい込み、それぞれのベッドで横になった深夜1時30分。
股間が光輝いて寝づらかったが、ようやくネックレスの放つ光に慣れたのか、うつらうつらし始めていると、
――ガチャガチャ……ガチャリ。
と部屋のドアが開くような音が微かに鼓膜に届いたような気がした。
「…………」
「……? ???」
誰だろう?
ボーイさんかな?
寝ぼけた頭でそんな事を考えながら、俺は睡魔に負けて思考を放棄した。
そんな俺を他所に、息を殺したソイツはキョロキョロと辺りを見渡すなり、光り輝く俺の股間を見つめてギョッ!? とした。
「う、うそっ!? まさかっ!?」
少女のような甲高い声が聞こえた気がしたが、きっと幻聴だろう。
俺は気にせずお布団とイチャイチャ❤ することにした。
「……寝てる。よし」
部屋に侵入してきたソイツは、俺の寝顔を確認するなり、今度は我が下半身の方へと移動していった。
そして、ギシッ! と音を立てながら俺が寝ているベッドへとリング・インした。
……リング・インした?
「うっ!? 変な所に隠しやがって……」
何かがおかしい。
そう直感した俺は重い
そこには子供サイズの大きな影が、俺の股間の前でスタンバイしていた。
影は凄く嫌そうな素振りを見せながらも、覚悟を決めたように「えいやっ!」と言わんばかりに、
――ズボッ!
「ッ!? ――ッッ!?!?」
ズボンの裾から両手を突っ込まれた。
眠気が一気に吹っ飛んだ。
「クソっ、どこだ? どこに隠した?」
さわさわっ!
もぞもぞっ!
影の小さい手が俺の
もはや悲鳴すらあげられない恐怖とパニックだった。
な、なんだ!?
俺の身に一体ナニが起こっているんだ!?
「はやく見つけないと起きちゃうっていうのに……んっ?」
「~~~~ッ!?」
ワチャワチャと我が股間をまさぐっていた小さなお手々が、
――ぐにゅっ♪
とムスコに触れた。
「ッッッ!?!? ~~~~~ッッ!?!?」
「んん~? なんだこの柔らかいモノは……?」
つんつんっ!
ぐにぐにっ!
小さなお手々は遠慮なく我がムスコを揉んだり、突いたりする。
がアルシエルのクソ野郎のおかげで、男性機能を失っている我が下半身に宿りし
俺は生まれて初めて不能である事に感謝した。
「あぁ、もうっ! しゃらくせぇ!」
痺れを切らした影が、俺のズボンを引きずり降ろそうと試みる。
声にならない悲鳴が喉を素通りした。
ちょっ、コレはヤバくね?
マジでヤバくね?
シャレにならないスーパーピンチを前に、俺は半ば反射的に隣のベッドで寝ているアリアさんに助けを求めるように首を捻った。
「あっ……」
バッチリ。
バッチリである。
隣のベッドで横になりながら、スコープ越しに獲物を狙う狙撃手のような瞳でコチラを
「「…………」」
なんとも言えない時間が俺達2人の間をよぎった。
そんな事をしている間に、謎の影によりズボンを一気に引きずりおろされて――ひぇぇぇっ!?
(助けて、アリアさんッ!?)
俺は隣で静かに鼻血を流しながらコチラを凝視するプリンセスにアイコンタクトで助けを求めた。
アリアさんはガンギマリした瞳でコチラを真っ直ぐ見つめながら、興奮したように鼻息を荒げていた。
助けに入る素振りすら見せず、右手を下半身へ持っていきモゾモゾさせる彼女。
よく見ると、その唇はうっすら動いていて……え~と? なになに?
(つ・づ・き・を・は・や・く・ッ!)
「いや、助けろや!? このドスケベプリンセスがぁぁぁぁぁぁっ!?」
「ひゃっ!?」
気がつくと身体が勢いよく跳ね上がっていた。
瞬間、俺の下半身を陣取っていた謎の影が小さく悲鳴をあげながら盛大に後ろへと転げ落ちる。
あっ、身体が動く!? やった!
喜ぶ俺を前に謎の影は「ヤバッ!?」と声をあげるなり、慌ててベッドから飛び降りようとした。
「逃がすか!?」
「キャッ!?」
パンツ一丁のまま半ば反射的に謎の影を組み伏せる。
俺は謎の影が大事そうに持っていた自分の下着とズボンを回収しながら、ハタッ! と気がつく。
「お前、昼間のアイスクリーム少年!?」
「うぅ~っ!?」
真っ赤な髪を隠すように目深に被った帽子と薄汚れたオーバーオール……間違いない。
昼間、俺にぶつかってきたあの少年だ!
少年は「うぅ~っ!?」と小さく唸りながら、返せっ! と言わんばかりに光り輝く俺のズボンへと手を伸ばす。
色々と言いたいこと、聞きたいことは多々あるが、まずはコレだけはハッキリと言える。
「??? どうしました勇者様? 続きをどうぞ? 早くその生意気そうなショタを『分からせ』てあげてください! BLエロ同人みたいにっ! BLエロ同人みたいにっ! あっ、ワタクシの事は居ないモノだと思っていただいて構いませんからね!」
「とりあえず鼻血を拭きなよ、アリアさん?」
『あっ、拙者ここで黙って見てますね!』と言わんばかりに静観を決め込んだこのムッツリ☆プリンセスはもう末期なのかもしれない。