目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

二〇一七年四月十五日

 二〇一七年四月十五日。

 祖父母という人たちは、本当に温かい人たちだった。

 引っ越し先は以前住んでいた場所からさほど遠くなく、竜王駅近くの静かな町は、生前のまま、どこかホッとする空気が漂っていた。

 しかし、それ以上に嬉しかったのは、転校先が第二甲府高校だと聞かされたことだ。

 俺にとって、これはまさに夢のようなチャンスだった。

 やはり、俺は運がいい。

 あの頃、工藤光として過ごした日々を思い返すと、こんな幸運が待っているなんて、信じられない気持ちでいっぱいになる。

 そして今日は、祖父母という人たちが観光に連れて行ってくれた。

 正直、俺は小さい頃からずっと野球一筋で、地元を観光した記憶がほとんどない。それでも、祖父母という人たちの温かい心遣いに応えるべく、昇仙峡に向かうことになった。

「こんな場所が山梨にあるんだ」と驚きながらも、自然の美しさに触れ、少しだけ心が軽くなった気がした。

 最後に、金運アップの神社があるという話を聞き、昇仙峡の奥にある神社に向かうことになった。しかし、予想外の混雑に驚いた。土曜日だからというのもあるだろうが、最近全国のテレビ番組で特集された影響もあるのかもしれない。

「しょうがないね」と祖母という人が言ったが、祖父という人が「こっちでいいじゃん」と言った。近くに別の神社があったからだ。

「ふうふぎじんじゃ」という神社の名前が少し変わっていて、興味を引いた。

 お賽銭をした後、社務所にいたおばあさんから「中もどうぞ」と勧められ、神社の裏側に連れて行かれた。その時、何かに引っかかった。

 裏側に案内されると、そこには巨大な木の一部が建物に鎮座していた。

「あ!」と、断片的な記憶がふっと頭をよぎった。あの事故の後、確かどこかで見た気がした。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?