街は次第に熱気を
同様にラヘナとエズビエナも足早に歩いていましたが、ラヘナの
「ねえ、エズビエナ?」ラヘナは先を歩くエズビエナに声を掛けますが、都会の
「エズビエナさん!」
「あれえ? どうしたのラヘナ」足を
「少しだけ、エズビエナさんのお時間を取らせていただきますが――」
「どうしたの。そんな
「今日から、一般教養の授業ですが……」
ラヘナは、国士養成学校を卒業したことや、はじめは予定していなかった進路を選んで、高等学校に入学したことを話しました。
二人はその途中、近くの路地に入って、表側の歩道の人通りが多くなっていくのを横目で見ながら話しました。
話を聞き終えてエズビエナが言った一言は、
「中等の国士学校って、あるんだ……」
それは、偶然にも周囲の騒音が途切れたときでした。また騒音が増してきて、エズビエナは続けました。
「……珍しいということは知っているよ。でも、高等の国士学校がロオムヘントの各州に一校ある程度の
「あのう、それで、それでなのですけれど……」ラヘナはその後ろに付いて歩きました。「わたし、そういう変わった学校で学んで来たせいで、今日からの授業が不安なのです。このようなわたしでも、平気でしょうか?」
ラヘナは個別の試験に
「なんだか
ラヘナは心の中で、ちょっと怒ります。エズビエナがどのような表情なのかは見ていませんが、その声をはっきり聞き取りました。その声は明らかに笑っていました。
そして
すると、通り過ぎていくラヘナにエズビエナが呼び掛けます。
「ねっ、ラヘナ! 一緒に授業を受けようよ。いつも隣に座ってあげるからね?」
それを聞くと、ラヘナはすっかり無表情になって、後ろの
「面白そうなの、それってわたしを――」
ラヘナが言いきる前に、その腕をエズビエナに
エズビエナは笑っていました。それは、笑いすぎと言えるほどでした。
ラヘナが踏み切りに入ったままだったので、エズビエナがそれを引き戻したのです。歩道の信号機は停止信号が点灯しています。
「
その
鉄道の
「……わたしとしたことが、またこんなこと繰り返すなんて――」
すると遠くから、列車が踏み切りを通過することを知らせる笛が響きました。
「そんなに気にしないで、わたしが変なことを言っちゃったせいよ。悪かったね、ごめん」エズビエナがラヘナの手を握って言いました。
「いいえ、こちらこそ。それに、ありがとう」
ラヘナは、まだ笑みをその顔に残すエズビエナを不思議に思いながらも、今は自分のした行動を反省するのでした。ついさっき「面白そう」という言い方をされただけで、なぜ、あんなにむきになったのか。ラヘナは、自分でも理由が分かりません。
ちょっとした言葉の
後ろの踏み切りを列車が通過していきました。
係員が拡声器で周知させます。
「信号が点滅したら踏み切りに入らないこと」
そのことはラヘナも知っていました。周囲に数十人の通行人が立っていますが、その中で平常心を保ちづらくなるラヘナ。
なんだか昨日は、立ち止まれないことで何か考えてた気がするのだけど――ラヘナは大きな
「気にしないで。ほら、もうすぐ」エズビエナはラヘナに耳打ちしました。
ラヘナは小さく
遮断機が上がり、ラヘナはエズビエナにそのまま手を引かれて、
ヂュージュ
それは一部五階建ての茶色の建物です。この
二人は学校に到着し、一限目の授業が行われる三階の教室に向かいました。
その教室に入るまで、二人は中等学校について話しながら歩きました。エズビエナの話では、一般的に中等普通課程は進学のための授業が多いという特徴がありますが、高等学校の入学試験に合格した時点で、ラヘナが懸念するほどの学力差はないとのことでした。一般よりも舞踊や演劇に
それでもラヘナは、授業時間の前後に予習を
教室に入って、
エズビエナは、予習を一緒にしてくれますが、ときどき離れて他の友人たちに加わることに
しばらくして授業開始が近くなると、エズビエナはいつも隣に座って授業を一緒に受けるのです。こうも話してくれました。
「ラヘナだけ放課後、補習授業を受けさせられることになるのは、なんだか
それからは、一日の授業を終えた
それで二人が静かに笑い合うのも、決まった流れなのでした。