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第19話 母とホラ吹きおじいさん

こんばんは。

今週も時間ができましたので、

母のエッセイを書きに来ました。


御中元の季節です。

御中元なんて面倒という方もおられると思います。

それはそれで正解です。

贈り物の行き来をするだけという節もありますので、

お互いに止めましょうとなれば、

それも正解です。

ただ、私や母においては、

なんとなく御中元御歳暮を続けています。

母に贈るもの、私たち姉妹間で贈るもの、

それからお世話になった人へと贈るもの。

姉妹間ではこの時期になるといろいろなものが行きかいします。

ベタベタするわけではありませんが、

母にならって贈り物を交わしています。

このあたりも、母の教育なのだろうなと思います。

先日、母の御中元の手配を、

母に代わってしてきました。

いわゆる百貨店の御中元配送センターで、

登録してある住所に送るというものです。

母だったら何を贈るだろうかと考えて、

母の御中元を手配しました。

母は、百貨店に行くのが面倒なのだそうです。

実家からそれほど離れている訳ではありませんが、

百貨店に行くようなときは大体混雑しています。

御中元シーズンの休日ですと、

御中元配送センターが混雑しています。

いろいろと面倒なこともあって、

今回こうして私に一任という形になりました。

母もそろそろ会社を引退ということもあり、

自動車免許を返納しようかと考えているようです。

そうしたら、百貨店などはタクシーで行くかなと言っています。

持ち帰りの際に重い荷物などがなければそれもありかなと思います。

これから会社に来ることが少なくなってきても、

ラインはつながっていますので、

御中元御歳暮の季節の際は、

代理で行こうかと打診しようと思っています。

母が続けるならば、その手伝いをしたいと思うのです。

母がこうするものだと教えてくれたことです。

母が望めばそうしてあげたいと思うのです。

幼い頃から御中元御歳暮をしっかり送ってきた母です。

望む限り続けてあげたいと思うのが、

それが私なりの正解です。

今回も、母の記憶が雨と降ります。


今回は、

母とホラ吹きおじいさん、です。


ホラ吹きおじいさんとした人物は、

母の二番目の夫の父親になります。

母からの関係は、義理の父、舅という間柄になります。

私たち姉妹からすればおじいさんでした。

母が二番目の夫と結婚したとき、

すでにおじいさんという年齢でしたので、

こうしておじいさん扱いになっています。

母の義理の父という間柄と落ち着けるには、

ちょっといろいろなことがありました。

そのあたりが、ホラ吹きおじいさんという扱いになっています。

そのあたりのお話ができればと思います。


母が二番目の夫と結婚して、

私たち姉妹も連れ子としてやってきました。

二番目の夫の父である、ホラ吹きおじいさんは、

とても大きなお屋敷に住んでいました。

庭石は名のある石がゴロゴロ。

家屋もとても大きく、

私は幼いながらにお金持ちなんだなと思いました。

ホラ吹きおじいさんは資産家であったようでした。

歓楽街にたくさんの物件を持っていて、

たくさんの資産があると言って回っているようでした。

私はそのあたりのことは幼すぎて興味がなかったので、

あとでうっすら聞きました。

母も、ホラ吹きおじいさんの資産などは気にすることはなく、

二番目の夫の父として、

礼を尽くして接していたようです。

今思えば、大きなお屋敷ではありましたが、

家の中はあまり物がありませんでした。

ホラ吹きおじいさんの若い頃の趣味として、

ドラムをしていたようですので、

ドラムが一式ありました。

当時としては珍しいパソコンもありました。

台所でコーヒー豆を挽いてコーヒーを入れてくれたりもしました。

あまりにも苦すぎて飲めなかったのを覚えています。

それ以外の部屋が、がらんとしていたのを記憶しています。

広いお屋敷でしたので、

がらんとしているのが妙にさびしく感じられました。


ホラ吹きおじいさんには、愛人がいたようです。

妻を亡くしていたので、不倫にはあたりませんが、

正式な結婚をしていなかったようです。

また、愛人はいわゆる水商売をしている方だったらしく、

幼い頃の私はそのあたりの関係が全くわかりませんでした。


ホラ吹きおじいさんは、年を取って身体を壊し、

入院生活になりました。

母は、ホラ吹きおじいさんのお見舞いによく行きました。

ホラ吹きおじいさんのお見舞いをして家に帰ってくると、

病院からホラ吹きおじいさんから電話が鳴って、

あれを持ってきてくれこれを持ってきてくれと、

細かなものを持ってきてくれと頼まれます。

母は負担ではありましたが、

頼まれたものを持って行きます。

また家に帰ってくると、

また電話が鳴ります。

また細かなものを頼まれます。

母はいい加減負担になったので、

母の二番目の夫に言って、

ホラ吹きおじいさんに注意したと聞きました。

ホラ吹きおじいさんにとっては、

おそらく、何の見返りも求めずに、

お見舞いに来てくれる母を試していたのかもしれません。

そして、本当に何の見返りも求めないので、

ホラ吹きおじいさんは、心から信頼ができたのかもしれません。

子どものように、求めることができたのかもしれません。


ホラ吹きおじいさんが病床にいた頃、

お見舞いに言っていた母が、ホラ吹きおじいさんの愛人と、

タクシーで帰ることになったようでした。

愛人は母のお財布の中身をのぞいたと聞きました。

また、これからお金がいるのよ、金庫も直さなくちゃならないしと。

母に愚痴っていたようです。

母はそのときは流したのですが、

金庫はそうそう壊れるものではありません。

母の憶測ですが、

ホラ吹きおじいさんがこれだけの資産を持っているとホラを吹いていたので、

金庫にどれだけの資産があるのか、

愛人と、母の二番目の夫の兄弟たちで、

二番目の夫を仲間はずれにして金庫を壊したのではないかとのことでした。

金庫の中身はほとんど空っぽであったらしいと聞きました。

ならば、仲間はずれにした二番目の夫が、

全部ホラ吹きおじいさんから受け取っているに違いないと。

このままでは莫大な遺産があいつだけのものになる。

まだホラ吹きおじいさんが生きている時から、

母の二番目の夫の兄弟たちで、

遺産の奪い合いがあったようでした。

そこには愛人も絡んできましたし、

母にもあたりが強かったと聞きました。

無視なども当然のようにされたと聞きました。


ホラ吹きおじいさんの遺産は、

ホラの上では何十億とあることになっていましたが、

実際それほどなかったようです。

母の二番目の夫の兄弟と、ホラ吹きおじいさんの愛人で、

裁判沙汰にしてまで遺産を分けたと聞きました。

母の二番目の夫は、遺産相続を放棄しました。


おそらく、ホラ吹きおじいさんは、

資産家であると、お金があると言っていれば、

周りに人が集まってくると、

そうして生きてきたのかもしれません。

お金があればみんな味方でいてくれる。

嘘でもお金があると言っていれば、

みんな自分を大事にしてくれる。

ホラ吹きおじいさんのホラは、

そんな寂しさがついたものなのかもしれません。

だから、お金という目でホラ吹きおじいさんを見なかった母は、

病床にいるホラ吹きおじいさんを遺産という目で見なかった母の二番目の夫は、

ホラ吹きおじいさんにとって、

得難い存在であり、本当に信じられると思ったのかもしれません。

ホラを吹かなくてもいい、本当を見てくれる。

そう思っていてくれたならばいいと思うのです。


生前のホラ吹きおじいさんは、

ある時から、大きなお屋敷の庭で、

鶏を何匹も飼うようになりました。

その当時、私たちの家でも、

メスの鶏を飼っていて、

まるでそれに合わせるように、お屋敷の庭で鶏を飼い始めました。

私たち姉妹の末の妹は、

ホラ吹きおじいさんのことを、

鶏にちなんで、コッコじいちゃんと呼んでいました。

お金があるというホラを吹かなくても、コッコじいちゃんになれた。

亡くなる時に、コッコじいちゃんとして、

いい人生だったと思っていたらいいなと思います。


また、じかんがありましたら、

母のエッセイを書きに来ます。


ではまたいずれ。

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