気が付くと、アリスは立っていた。
だがそこはテントのベッドではなく、見渡す限り真っ暗な未知の空間だった。
「ちょっと龍さーん!ここどこ?なんか変な魔法使ったんでしょう!?」
この世界で知る唯一の人物……龍の名前を呼ぶが、返事はない。
「もう!なんなのよここは!?真っ暗だしひんやりしてるし!なんにも見えない!」
「ふふふふ」
「…っ!」
不意に寒気が走る。
女性のような声に驚き、ゆっくりと振り向く……だが、そこには何もない。
だが、見えなくても分かる。
確かに何かがこちらに近づいてくる。
すると、闇の中から、白く細い腕がすらりと伸びる。
それが自分へ向かってくるのを見た瞬間、アリスは身を引こうとした。
「っ!うそ!」
離れようとするアリスだったが、何故か動けない。見えない何かに体を固定されているかのように。
白い腕はアリスの顔を撫でた。
その瞬間、耳元で声が響く。
「へえ、あなたが…、ふうーん、面白いわあ」
声は女性のようだが、どこか妖艶で冷たく重く、心に深く突き刺さるような声色だった。
声も出ず、抵抗する気すら起きない。
「残酷ねえ―、まだ小さいのに、大きな使命を負わされちゃったのねー、ふふふ」
「……?」
「そうねえー、早く魔法使いとして成長しなさいー、そうしないとー…」
少しずつ声が近づいてくる。そして…、最後は耳元で。
「みーんな、死んじゃうわよー!ほーら!アハハハハ!」
白い手はアリスの心臓めがけると突き破ろうとする。
恐怖が限界を超えた。
アリスは絶叫し……もがいた。
「ああああああ!」