「ふうぅぅ…やっぱ最高…日本人といえば風呂でしょ」
友里との菊生寮案内ツアーが終わり、友里の手作りの晩御飯を食べ終えると、アリスは自分の部屋へ案内された。
寮内は豪華な内装にもかかわらず、部屋は意外にこじんまりとしていた。
アリスはその光景に驚く。
「最初みんな驚くんだよね、内装は豪華なのに部屋が小さくない?って。でも、広い部屋が好きな人もいるし、シンプルな部屋が好きな人も多いから、デフォルトはこの大きさなの。最初は私か龍君に頼めば、魔法で部屋の大きさや内装を変えられるから言ってね。慣れたら自分でリフォームしてもいいよ」
その後、明日も早いという理由でアリスはお風呂に行くことに。
そして、驚くほど豪華なお風呂が待っていた。
旅館の大浴場を思わせるその風呂は、内装が非常に美しく、まるで一流の建築家かデザイナーが手がけたかのようだった。
「広いし、内装もすごい!銭湯や旅館のお風呂のデザインを融合させた感じだな。それに浴槽も広すぎ!これ普通に泳げるんじゃない?」
「本来はマナー違反だけど、私は気にしないから大丈夫だよ!」
「ほひ!?」
慌てて振り返ると、友里が裸で立っていた。
「どうしたの?」
「いや、どこから聞いてたのかなって…ははは…」
「んー?全部ー!」
「ですよねー」
恥ずかしくなったアリスは湯船で泳ぎ始め、友里は体を洗い始めた。
アリスは泳ぎながら友里の後ろ姿を観察する。
(友里さん、スタイル良すぎ!スラっと伸びた足に、胸も大きいはず…同じ女性として憧れるなあ。んんん…)
無意識に自分の胸と比べてしまう。
(いや、私まだ15だし!これから大きくなるし…まあ、この年齢で大きい子もいるけど…)
「どうかした?」
「へ?え?うひゃあ!」
体を洗い終えた友里がアリスの目の前に現れ、その胸が目に入った。
「う、うっほほーい」
自然に視線が行き来する。
「え?胸?いや、別に面白いもんじゃないよ?肩凝るし、みんな見てくるし。まあ、役に立つこともあるけどね」
「ふふふ、それは持たざる者の言い分です」
「でも、アリスちゃんはまだ15でしょ?15でそんな大きい子は少ないと思うよ?少し膨らんでるくらいじゃないかな?大丈夫、大人になれば大きくなるって」
「ハハハ、そうなればいいですね」
友里の言葉に何も感じなくなったアリスは、静かに泳ぎを再開した。
「もう!変な空気になっちゃったじゃない!アリスちゃん、こっち来て!」
友里はアリスの手を引き、湯船から出てドアに向かって歩く。
「ちょ、ちょっと友里さん!? どこ行くんですか?」
友里がドアを開けると、そこにはまた大きな石造りの露天風呂が広がっていた。
「え?外?ていうか露天風呂?なんで?」
「正解!これは室内に魔法で露天風呂を再現した場所なんだ!旧世界じゃ都市に露天風呂を作るのは大変だし、でもここならできる!」
(なんでもありだな…)
「さあ、星空を見て、露天風呂に入ると悩みも吹っ飛ぶんじゃない?」
(確かに癒されるな…この星空、春の星座か…)
「どう?綺麗でしょ?」
「はい…友里さん、一つ聞いていいですか?」
「何?」
「この世界に来る人はみんなユニークを持ってますよね?私は聖霊魔法を一人で使えるし…」
「そうだね」
「じゃあ、師匠は?不老不死がユニークとは思えないし…」
「え?あれ、聞いてない?実は、私は聖霊魔法や闇の魔法以外ならいくらでも使えるの。言い換えれば、魔素量が無限なんだ」
「へ?どういうこと?」
「魔素量って、魔法を使うには必要なんだけど、今のところ魔素量を測定する方法はないの。でも、魔素量が限界まで使うと気絶しちゃうんだ。それで個人の魔素量がわかる。でも魔素量がどれぐらい増えるかは個人差があって、データがないんだよ」
「なるほど」
「だから、師匠のユニークも無限に魔法が使えることしかわかってない。でも、アリスちゃんのユニークも何かしら意味があるはずだよ」
「はい、私のユニークが何であれ、この力には意味があると思います!」
突然、アリスは時計を見たくなった。
「そろそろ上がりますね、のぼせそうだし、明日も早いんで」
「え?もうそんな時間?じゃあ、今度学校で会おうね!」
「私、魔法学校じゃないの?」
「そうよ?私は事務員だから」
「そうなんだ…。じゃあ学校でまた話せるね!おやすみなさい」
「おやすみー!あ、アリスちゃん!」
「なんです?」
友里は拳をアリスに向けて。
「頑張ってね、主人公!」
「…はい!」
アリスも拳を突き返した。
「よく男がやってるじゃない?一度やってみたくて…」
「ははは、なるほど」
そのままアリスは髪を乾かし、自室へ戻った。