一度皆が座ると橘が続ける。
「さて皆さま。ここまでこのコンピューターで出来ることの報告をしてまいりましたがまだもう一つやってないことがございます」
「なんだ?」
「議員の皆さま、コーセイ電機の皆さま、こうは思いませんでしたか?ただ、書く対象が紙からモニターに映っただけで根本的な紙に印字してないではないかと、これならタイプライターに直接書いた方が良いんじゃないかと」
この言葉に議員たちから頷きがあった。
「言われてみればそうだ、確かに文字を打つのも漢字するのも打った文字を消せるのももちろんすごいとは思うが最終的に議会で使うのは紙の資料だ会社でもこの画面状態で終わるわけでは無かろう?紙に印刷されなけば意味が無い」
(まあ、確かに)
「今日はその問題も解決できております」
そういうと橘は最後の機械の布を取った。
「お?おおお?」
そこにはアリスの記憶には無いがここまでの話しぶりで披露されたのが何かは察しがついた。
「何だねこれは」
「印刷機でございます」
「マジで!」
識人も議員たちも披露された印刷機をじろじろと見ていたが切り出したのは西宮だった。
「これが印刷機?我らが知っているのとは何もかもが違うな文字盤も無いじゃないか」
「はい、具体的な仕組みは後でしますが、まずはご覧いただいた方が早いかと。アリス様」
「はい」
「先ほどの日本の文字を十個打ってください」
「はあ」
アリスは言われた通りに日本という文字をコピペを利用して10個打ち込んだ。
その間、橘は印刷機に紙をセットする。
「ではそのままCtrlを押しながらPを押してください。もろもろの設定もすべてセッティング済みで線も繋いでありますので押すだけで大丈夫です」
言われた通りキーを押し、十数秒後、印刷機のモーターが起動し紙が中に吸い込まれていく。数秒後、反対側から出てきた紙にはちゃんと日本の文字が十個印字されて出てきた。
「おおお!」
「……何と」
さすがに疲れたのか、先ほどとは体を動かすことは無かったが表情は変わった。印刷を終えた髪を橘を上に掲げて皆に見せる。
「このように、コンピューターに打ち込んだ文字はこのように印刷可能です。いちいち文字盤を組み込む必要はなく、コンピューター上で打ち込んだものをそのまま印刷できます、これにより印刷の問題は解決出来たと思われます」
ここで初めて議員たちが話し合いを始めた。
「これはすごい技術だ」
「印刷に革命が起きますよ」
「それに効率的だ」
「ちょっといいかね?」
話し合いのさなか西宮が声を上げる。
「何でしょう?」
「これはあくまでアリス君……来たばかりの識人によるものだ。我々先民が使いこなせなければ意味が無いのでは?識人ばかり使えても意味が無い。一見簡単に見えても実際と違うんじゃねえ」
「はい、ですから首相令嬢であり、アリス様と同い年の雪様をお呼びしたのです」
この言葉を聞いて先民陣営から納得の声が出た。
「すごいな卓君は」
「何がですか?」
「ここまで見込んでの人選何だろう?それにプレゼンも効果的だ。中身を詳しく話すよりそれで何が出来るかを話した方が説得力が増すからね」
「ああ、なるほど」
「雪様こちらへ、アリス様席戻っていただいて問題ありません」
「あ、はい」
雪がアリスのいた席に着く。
「では今から雪様には文字の打ち込みから紙のセット、印刷までを一人で行ってもらいます」
「そんな!まだ何も教わってませんわ!」
「今から教えます」
橘が、雪に印刷方法について教え始めた……が数分で終わった。
「どうだ雪、出来そうか?」
「ええ、お父様。それどころか簡単すぎて少し怖いですが」
雪はまずコンピューターに何か打ち込み始めた……がアリスの想像以上の速さだ。
「打ち込み早!」
「当たり前ですわ!このキーボードの配置もタイプライターと変わりません。少し押す感覚が違うだけでいつも通りにできます……終わった」
雪が打ち終わると、紙を印刷機にセットした。
そしてアリスがやったようにCtrlとPを押して印刷を開始する。
十数秒後、雪が打ち込んだ文字が紙に印字され出てくる。それをもって顔を赤くしながら父である西宮首相に渡した。
「ん?なんだ?」
紙を渡しされた西宮が紙に書かれた文字を読むと顔が緩み目頭を押さえた。隣から見ていた東も目元が潤んでいるようだ。
「総理、親思いの娘さんで良かったですね」
「ああ、ありがとう」
身内だけで感嘆に浸っているのを見たアリスは顔に疑問符が浮かぶ。
「何書いたんでしょうね?」
「さあ、父親への感謝の手紙とか?」
「雪さん!何書いたの?」
「はあ、この会議の場とはいえプライベートの書き物にいちいち詮索するのはよしていただけませんこと?」
(いや、だったらそれをこの場で書くなよ)
「それではそろそろ会議の後半になってまいりました」
先ほどまで、目頭が熱くなっていた西宮議員も顔をきっちりと顔を議員の顔に戻していた。また雪も自分の席に座った。
「ご覧のように今回卓様が最終的に完成させた技術……コンピューターの能力について皆様に見ていただきました。ここからが本題でございます」
また橘が懐から別の紙を取り出す。
「さあ、ここまで私が手を加え完成させた技術を見ていただきました。本来であればこの技術を即座に製品化できる会社等に渡すのが動議かもしれませんが、まだ開発されたばかりでこの技術の価値を知らない先民からすれば製品化し、国民に普及するのは時間を要すると判断し、この度転生者たちの知識もとに政府の皆様のお力添えを得て日本国に至急この技術を普及させるべくこの会議を招集いたしました」
「我々にどうしろと?」
「現状、この国一番の電機会社はコーセイ電機だと認識しております。しかし、コーセイ電機であろうとこの技術を民間で使えるように製品化し迅速に普及させるためには場所もお金も足りません。ですので日本政府には補助金を出していただきたいのです」
「なるほど、政府主導でこの技術発展を後押ししろということかな?」
「そういうことになります」
「……」
西宮議員は考え始めた。
「少しよろしいですか?」
ここで東議員が手を上げる。
「どうぞ」
「確かに、この技術は素晴らしいものです。聞かせてほしいのですが旧日本ではこの技術で他にどのようなことが便利になるのでしょうか?」
「ではまず私が話そう」
手を上げたのは衣笠だ。
「まずこの日本にある兵器の研究開発……軍事研究とでも言えばいいか。これについて一言。私は一自衛官として言うが、元々これらの技術は旧日本ひいては旧世界で起きた二つの大きな戦争の副産物だ。人を殺すために開発されたものが結果的に人の暮らしを便利にするために改良された。その軍事の観点から軍事技術の発展……正確には戦車、戦闘機、回転翼機などの実質的なレベルアップが期待できる。純粋に性能が大幅に上がる……つまり国防能力が飛躍的に上がるのは明確だろう」
「では次に私が。私は個人的にですが……」
次々と転生者たちが、コンピューターによって発展した技術の話をした。軍事、農業、工業、普段の生活、次々に話される未来の技術の話に議員たちは目を輝かせて聞いていたが、以外にも食いついたのはコーセイ電機の人間だった。
「これは、将来の内に人の仕事が奪われるのではないか」
「確かにその予想は出来ますが……何も人間の仕事は無数に存在します。まあ法で規制するので有限になってしまいますが。それでも我々は国会議員です国として予算を決めるのも仕事ですが、何より大事なのは法を整備することです」
「そうだな」
「アリスさん」
「は、はい」
「先ほどの話で、離れた相手とも名前も知らない相手とも繋がることが出来る技術も聞きました。アリスさんからデメリットをお話してもらっても良いですか」
「私ですか?」
「なら私が」
アリスの代わりに三穂が喋ろうとする……が、東はこれを拒否した。
「いいえ、アリスさんにお願いします。アリスさんはこの場に居ない識人の次に新しい識人ですから、一番新しい識人に旧日本のこの技術の問題を言ってほしいのです。我々としてはこの技術発展により問題が生じるのは見えていますがその内容です。旧日本はこの日本より進んでいるのなら将来この日本で出てくる問題も出ているはずです。それを教えてくれませんか?」
「あの……多分ですけど旧日本で死んだとき恐らく中学生でそこまで政治とかに詳しくないと思いますけど」
「構いません、逆にあなただからこそ分かる問題……いえ、そうですね、ここに居るのは基本雪様を除いて大人しかいません。逆に旧日本の大人の目線でなく、中学生だからこそ見える物があるんです。私はそれが知りたいのですよ」
アリスは迷った。コンピューターで発展する最大のデメリットはおそらく人間関係の破綻である。今まで見えてこなかった人間の負の感情まで表に出てくる危険性があるのだ。
(聞かれるとは思ってたけどきた……どうする?話すべきか?でもこれを話してもし、この話が無くなったらあたしたちがパソコンを手にするまでの期間が延びちゃうしスマホどころか携帯も開発されない……でもこの人に嘘は付けそうにない。どうする?)
「アリス」
「……ん?師匠?」
今までアリスの提案書を見ていて会議に参加してるように見えなかった龍がアリスの背後に回りささやき始めた。
「言っても構わん。逆に言った方が良いまである」
「なんで、これを言ったら、パソコンの開発も遅れちゃうかもしれない」
「それは無いよ」
「なんで?」
「あいつの思惑は簡単だ。お前たちが旧日本でその場で生まれた問題を先にもらって先手を打つために聞くためだ」
「つまりカンニングってこと?」
「……まあそんなもんだ。我々は旧日本で起きた問題をこの国では起きないように先手を打つために助言をするのが仕事だ。逆に言わなかったら助言をする立場の識人が何故言わなかったと責任問題になるからな。識人はあくまで助言をするのが仕事、そこからこの国をどう導くのは先民の……あいつらの仕事だ。構わんから言っておけ」
「……分かった」
アリスは立ち上った。
「東さん一つ聞いていいですか?」
「何でしょう?」
「この国の憲法に表現の自由的な物ってありますか?」
「うーんと、基本的人権のことでしょうか?ありますよ」
「そうですか」
そこからアリスは旧日本で起きている問題について上げた。旧日本では現在、ネットでの匿名の誹謗中傷が横行しているということ。また、広大なネットの海だ、身近な人間の悪口も当人に気づかれずに行うことが出来ること。
しかし、これに対して政府の対策は遅く最近ようやく法整備に動いていること。また、ネットでは基本的にどのような情報を流しても良い、それを利用してデマを流したりする人間もいるということ、そして憲法の表現の自由を盾に法で対処が出来ないことを上げた。
「……なるほど素晴らしい」
「へ?なんでそう思うんですか?」
「だって、まだコンピューターの技術が開発されたばかりですよ?そのネット環境を構築するにも時間が掛かります。つまり、旧日本ではネット環境が出来てから法整備が始まりましたが我々はネット環境が出来るまで、問題が起きるまで猶予がありますその時点であなたの情報はかなり有難いものなんですよ」
「は、はあ」
「それに我々の仕事は国が良くなるために法を整備すること。そしてあなた方識人は私たちの国づくりに旧日本で得た知識で助言をすることです。問題が起きる前に起きる問題が分かるのですからこちらとしては対策をしてから国を発展することが出来る……素晴らしいではないですか」
「なるほど」
「では、よろしいでしょうか」
橘が時計を見て発言する。
「さて、時間も差し迫ってきましたので会議を閉めたいと思いますが次回の会議を開く必要はありますか?」
「いや、我々としてはすぐにでも国会に提出するための補正予算を組まなければならないのでな早急に閉めてくれ」
「我々も言うべきことは言ったので閉めてくれていい」
「分かりました、では僭越ながら私がコンピューターに関する特別会議の閉幕を宣言いたします」
そこからが早かった。議員たちは秘書官やコーセイ電機の人間たちと共に足早にどこかに歩いていき、部屋に残るのは識人のみだったが、首相側の意向により退場時間にゆとりを持つことが出来た。
「うーん!やっと終わったねえ!最終的にはアリスちゃんのフォローに徹してたけど」
「そうだな、しかし卓君もよくやるよ」
「なんでですか?」
「考えて見てくれ、今回上手く政府がコンピューター開発に補助金を出すことが出来たが全て卓の手腕だ。コンピューターが出来ました、もっと開発するために補助金くださいじゃあ普通は政府は動かない、重要なのは実際に動いている所見せてコンピューターはこういうことが出来ます!もっとお金と場所と時間をくれればこんなこともできますと見せて見れば最近やっと……しかも初めて政権を取ったばかりの政党だ、実績欲しさに動くのは当たり前だと思うがね」
「やっぱりそういうもんなんですかね?」
「まあな……俺が気になったのは龍だ」
衣笠が今だ座って紙を呼んでいる龍に視線を向けた。龍も自分の名前を呼ばれると立ち上がる。
「なんだ?」
「聞いていたのか?会議」
「一つ言っておくが紙を読んでいても声は耳に入るぞ?お前たちが理由は分からんが騒いでいたのも知っている。だが残念なことにこの会議の中身に関して俺はついて行けなかった。知らん単語がどんどん出てきたからな、しかしだ、これだけは一つ言えることがある。あの状況でアリスが質問の返答に困っているのは俺でも理解できたから俺なりの助言をしたまでだ……師匠として仕事はするさ」
「なら聞くが、新しい政権はコンピューター開発に対して補助金を出すはずだ。まあパソコンが存在する時代からやってきた我々からしたらありがたいことだと言えるがこの日本を400年間見てきたお前からは何か言うことが無いのか?」
「……お前、一つ聞いていいか?」
唐突に龍の顔が険しくなる。誰が見ても怒っている顔だが身内に対してあまり見せたことが無いのだろう、衣笠まで驚愕する。
「なんだ」
「俺は400年間オブザーバー……神報者を担ってきたが、この役目には色々制約がある。一つ目、最近の旧日本でもあるらしいが帝に対しての助言だ。基本、帝と言うのは旧日本でも象徴だったか?それでもこの日本でも非常事態が起きない限り象徴だが、帝に対して助言する者もしようと思うものもいないはずだ。俺にはその権利と義務がある」
「そうだな」
「もう一つ、これが重要だが。俺には選挙権がない。そして政治に対しても軍事に対しても意見を言う権利が無い。独り言のように感想を言うことは出来るかもしれんが、公に意見を言うことが出来ない。代わりに神報者は日本のすべてを観察し神に報告するという権利を有することから、日本のどんな国家機密でも知ることが出来る……つまり何が言いたいか分かるか?」
「……まあ何となくは」
「俺の意見など帝に対して以外価値がないんだよ」
「それはこの国に住む識人としてだろ」
「何が言いたい」
「運が悪いのか良いのかあれだがこの世界に転生した転生者……この国の国民としてではなく一人の転生者としての友人としてお前の意見が聞きたいだけだ。オフレコ……ここだけの身内だけの世間話だとすればいいじゃないか」
「そうか……ならどうでも良いだ」
「は?」
「俺の仕事は日本の現状を記録して報告することと帝が存在する日本と皇族の昔から続くこの形を守ることだ。皇族の存在が危ぶまれる以外俺が動くことは無いよ。逆に議員連中がそれをしようとするならどんな手を使ってでも潰すがな。それにだ」
「なんだ?」
「俺にとっては国会議員はただの詐欺集団だと思っているからな」
「なっ!?」
「だってそうだろ?選挙の時だけ投票してもらえるためならどんな嘘でもつく、マニュフェストだったか?それが達成できなくてもまた選挙で当選さえすれば良い。当選さえすれば何かやらかさない限り辞めることは無いし、国会議員は自ら止めるしか方法が無いからな。仮に何かやらかしても当選し時が経てばうやむやになる。それに詳しい事務作業は官僚や秘書がするじゃないか!素晴らしい職業だねえ本当に」
「……」
その場にいる識人のある事をしていた一部を除いて全員が黙ってしまった。この日本では首相が非常事態を宣言するか強制的に移行する場合、一時的に統治権が天皇陛下に移る。
その場合、その時の首相含め大臣など内閣が天皇陛下の指揮下に入るのだ。しかし、非常事態になった時に統治される天皇陛下に助言行為が出来るのは平時だろうが非常時だろうが神報者だけなのだ。
つまり、ある意味議員と神報者の信頼関係も必要なのである。
しかし、その神報者である龍が議員を詐欺集団と言ったのだ、呆気にとられるのも必然である。
「いや、お前がそれ言っていいのか?非常時には議員……いや、大臣や官僚と連携もするんだろう?お前が突き放すのは……」
「別に突き放してはいないさ。あくまで自分の利益しか考えない詐欺集団、だが人間であり議員である以上、利益になることも言うからそこだけを利用するだけでいい。あいつらのことをあまり信用してないだけだ」
「まあそれで今まで上手く……いや、いってないだろ!お前政治家から何て言われてるか知ってるか!?老害だぞ!?本来年寄りの政治家が国民から言われる言葉だぞ!?」
「構わんさ、俺は政治に口を挟む権利が無いからな。ならこっちだって奴らの利益に加担することはしないだけだ」
「……まあいい、今までそれで日本が回ってきたんだ。……ていうかさっきからお前らうっさいわ!」
龍と衣笠が話をしているとき、暇だった他の識人とアリスは先程のテトリスで遊んでおり時折歓声が上がっていた。
「だって二人の話長いし、ゲームあるんならやりたいすもん!それにテレビゲームが久々すぎて」
「それは分かるが……アリス君も熱中するな」
「え?テトリスやったことないもんで!楽しいですね!シンプルなのに考えることがいっぱいあって」
「そうだろ!ただ、詰んでいくだけなのに形が違うから先の方まで考えなきゃいけない……よく考えられたゲームだよね!」
「……もう分かった。好きにしろ」
「好きにされたら困りますね」
「わあああ!?」
アリスたちの背後から突如橘が現れる、突然すぎて全員が悲鳴を上げてのけ反った。
「えっと……何でしょう?」
「ここがどこだかご存じで?」
「えーと、ゲームセンター?」
ジョークで答えるが、橘は真顔だ。アリスはすぐに視線を逸らす。
「すみません……官邸です」
「そうです。この部屋をまだ使えるのは私を含めて技術者たちが補助金等の法案の話し合いで議員の皆様と話し合いをするためです」
「終わったんですか?」
「法案の話し合いですので、そう簡単には終わりません。今回は議員や官僚、コーセイ電機の皆様とこれからの予定を話し合う場でしたので」
「じゃあ何しに来たんですか?」
「これを回収しに来ました」
橘はコンピューターを指さす。先ほどまでゲームをしていた人たちからブーイングが出た。
「分かっているのですか?政府がコンピューター開発に補助金を出すには与党が賛成しなければなりませんし説得するには他の議員を説得するために官僚にコンピューターの仕組みを分かってもらい、効率よく根回ししなければなりません。それにコンピューターはこの試作機しかありません、なので速やかにこの試作機を官邸や関係省庁に持っていく必要があるのですが……まだゲームします?」
「「「すみませんでした!どうぞお持ちください!」」」
アリス含めゲームしていた識人がその場に跪いた。
「お前ら……現金だな」
その後、龍含めた識人たちは用意された車に乗って家に帰ったりそのまま職場に行ったりした。アリスは龍と別に車に乗り龍は別の場所へ走り出し、アリスはステアに向かって発進した。
その後、国会では政府が2,3週間という急ピッチで作られたコンピューター開発のための補助金支援の法律案が閣議決定された。
政権を奪われた自政党は事前に聞かされていない法案を政権奪取の材料にし、すぐにでも政権を取り戻そうと法案の粗を探そうと動くが、コンピューター自体が識人に大きく望まれていること、日本を科学技術が大きく飛躍するという識人たちの情報が決め手となり、予想以上に早く法案が最優先で審議されることになった。
パソコンが当たり前な世界で生きてきたアリスにとってこの情報が飛び上がるほどの素晴らしい朗報であったが、アリスはその頃、転生してきて初めての大きな事件に関わっており(自分で飛び込んだとも言う)、それどころではなかった。