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魔法戦闘トーナメント編 アリスVS東條 1

「…………」


 アリスは顔が引きつり絶句していた。


「ふふふははは!今まで色んな生徒を見てきたがお前は初めてだぞアリス!」

「それ褒めてんの?」


 アリスが触れているのは『魔法適性測定装置』。中央にある石に触れて魔素を注ぎ込むとその人間の適正魔法が分かるというものだ。


 適正魔法……攻撃用基礎魔法の内、個人用魔法であるの第二、第三魔法を使うときに必要な情報である。


 火、水、風、雷、土の属性があるがこの世界で生まれた人間、識人と関係なく必ず一つは所持しているのが当たり前である。


 中にはサチやコウのように二つ持って生まれた魔法使いも多くはいないが存在する。


 だが、アリスの結果は予想外だった……適正魔法が一つも無いのである。


「……機械の故障ってオチは?」

「なら私が触ってみよう」


 柏木が石に触る……すると雷の文字が刻まれた石が淡く光った。


「……」

「サチ、お前も触ってみろ」

「ほい」


 サチが石に触ると、火と風の石が淡く光る。


「…………マジかい」

「つまり機械は故障してないってわけだ」


 アリスは膝から崩れ落ちる。


(ちょいちょい待ってよ!あたし主人公じゃないの!?普通さ!転生系の主人公って、圧倒的なチート持って転生してくるもんじゃん!それがよ!魔法適性ゼロって……主人公なら適正五個とかじゃないんですか!あれか聖霊魔法使えるからあ?ふざけんじゃあねえよ!普段使い出来ねえじゃねえか!ヒール専用か?一発使ったら気絶とかこのすばか?主人公じゃねえよそれ!)


「まあそれも一つの個性だ!気にすることはないさ!……そろそろ時間か……サチ、コウアリス行くぞ。そろそろ掲示板に張り出される時間だ」

「了解です」

「なんの?」

「トーナメント表だよ」



「うっそ……」


(これ仕組まれて……無いよな?単純に運の問題?確実に負け確じゃん……)


 アリスはトーナメント表を見て驚愕した。


 第一試合、相手は今回の大会にて唯一月組から参加している東條だった。


 しかしそれはどうでも良かった、問題なのは仮にアリスが勝った場合、第二戦の相手だった。


 サチとコウ、この二人による試合の勝者がアリスに当たることになる。


「ほう?これは面白いな」

「やらせ……」

「んなわけないだろ」


(東條……いや一年は全員がこの大会が初めてだ。でも魔法に関する情報量はあっちの方が上……それは戦闘も同じ……試合までに今のあたしが出来ることはなんだ?)


 因みに魔法戦闘大会は犯罪者を制圧する訓練の一環として警察の一部部隊や自衛隊の一部隊でも行われており、全国大会が開催されているレベルだ。


(情報だけなら調べれば何とかなるけど……経験は詰めない……体は動かない……練習しようにも情報だけじゃあ練習しようがないからなあ……サチに頼むか)


「アリス」

「ん?」

「今回のトーナメント、サチやほかの生徒、先生との練習、助言を聞くことを禁止する」

「……今なんて?」

「簡単に言えば一人で練習して本番に挑めって言ってるんだ」

「なんで?」

「なんでも」


 アリスはまた別の意味で絶句した。


「別に練習するなとは言ってないぞ?ただ一人でやってみろって言ってるんだ。もし誰かに教えてもらったことが分かったら私の判断で棄権するからな」

「……ああ!わかりましたよやればいんでしょ?やれば!」


 起こり口調のアリスは踵を返して帰っていく。


 それを心配そうに見守るサチが尋ねる。


「良いんですか?」

「なあサチ。ハリーポッターって知ってるか?」

「え?ああ名前だけなら……確かこの校舎のデザインもそれに倣って改築されたとか聞きましたけど」

「ああ、旧世界でかなり人気の物語……映画らしくてな。この世界にやって来る識人はもれなくハリーポッターを知っているらしい」

「それが?」

「私が花組の教師に赴任してから識人を受け持つのはこれが初めてなんだ。となると、知りたくないか?ハリーポッターという物語を知っている人間が本当に魔法を使える世界にやってきて、模擬とはいえどのような魔法戦闘をするのか」

「そんな上手く行くかなあ?」

「それを確かめるという意味で今回の指示だ」

「学校関係者……龍さんとかは含まれないじゃん」

「問題ないよ、あいつの戦い方はよく知っている。アリスでは再現できない……それ以上にあいつには信条があるからな」

「へえ……母さんは?一応学校関係者では無いよ?保護者だけど」

「すでに根回し済みだ」

「じゃあ本当に今回は……」

「ああ、純粋なアリスの戦闘が見れる」



 不貞腐れたアリスが居るのは転保協会、龍が普段神報者としての仕事を行っている執務室の前だ。


 柏木に学校関係者からの助言禁止とは言われたが龍は学校関係者ではない。


(師匠はステアを作る時に色々したとか言ってたけど今は学校関係者じゃない!ならイケる!)


「師匠!教えてほしいことが!」


 アリスが勢いよくドアを開けるが龍は居なかった。


「……あれえ?受付は居るって言ってたけど……」

「何してんだお前」

「おああ!」


 龍は背後に居た。


「師匠いつの間に!」

「来るなら電話しろ」

「電話しても居ないじゃん!」


 この日本には固定電話こそ存在するが携帯が無い。


「どこ行ってたん?」

「国会」

「あ、そうすか」

「それで?何が聞きたい?またお前事件に巻き込まれたのか?」


 龍がめんどくさそうな顔でアリスを見る。


「違う違う!魔法戦闘を教えてほしくて!」

「魔法戦闘?俺が?お前に?」

「そう!師匠400年も生きてるんだからイロハぐらい……」

「無理」


 龍は即答した。



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