霞家次期当主に選ばれた私の学校生活がどう変わったと言えばあまり変わらなかった。
何時も通りの日常だ。
それでも霞姉妹の魔法戦闘技術というのは目をみはるものがあると思うのは魔法戦闘を経験する者、これから授業で習うものからすれば当然だ。
事件後の最初の魔法戦闘の授業で私たちは気絶しているアリスを尻目に花組の生徒に魔法戦闘を教えていた。
技術こそ無い私だが、以外にも理論や心構えを教えるのは得意だったようで霞家としての面目を保つことは出来たと思う。
しかし問題が起きた。
一年生最初の魔法戦闘のトーナメント戦、初戦が姉のサチなのだ。
「え?稽古に付き合ってほしい?」
さすがに初戦の相手と稽古するわけにはいかない……であればと母に稽古を頼んだ。
「……稽古する必要あるの?」
確かに今少しだけ稽古したところで今は無いだろうし、それだけでサチに勝てると思っているわけではない。
「次の相手がアリスなの」
「それが?」
「多分サチには勝てない……でも次戦のアリスに少しでも魔法戦闘について見せることは出来る。でも実力差がありすぎてすぐに終わるけど、少しでもアリスに戦闘を見せたいから……」
だがそれだけでは無かった。
襲撃事件、サチに合わせたアドリブで敵の一人は倒せた……けど闇の魔法使いに対して何も出来なかった。
『コウが次期当主だから守るんじゃないよ……大事な妹だから……お姉ちゃんは妹を守るもんじゃん?』
死にかけた時、サチに言われた言葉だ。
結果的にサチがギフトを目覚めて倒した。
霞家なのに次期当主に選ばれたのに魔法戦闘で何一つ貢献できなかった。
なら今からでも遅くない、少しでも稽古したい。
サチに追いつけなくても助け合うぐらいにまで行けるかもしれない、だから稽古したいのだ。
「……そう。分かったわ」
母さんは了承してくれた。
そして、稽古を始めるが……完全に自分の実力を見くびっていた。
瞬殺だった。
「コウ、今まであなたの戦闘センスもあるけど今まで稽古をやってなかったのもあるわね」
「はあはあはあ」
この程度は織り込み済みだ。
母さんは私の表情から何かを読み取ったのだろう、笑顔になる。
「もう終わりにする?」
「……まだまだ!」
意外だったのはあの襲撃事件から何かを得ようと、自分に生かそうと考えたのは自分だけでは無かったことだ。
ギフトを覚醒したサチが闇の魔法使いとの一騎打ちで使った技をすぐに実践で試したアリスを見て凄いと思った。
と同時にあれほどの戦闘を間近で見て何一つ自分に生かせない自分に嫌悪すら抱くほどだ。
勝ちたい……今まで守ってもらうばかりだった。
でもこれからは違う、私だって霞家の人間だ。
やれるところをアリスに母さんに見せたい。
「霞コウさん、準備お願いします」
「はい」
私が向かうと分岐でサチと母さんがいた。
「手、抜かないよ?アリスとやりたいし」
「あたしだって」
サチが歩いていく。
「コウ正直に言います。サチに勝てるとは思ってません。ですが……あなたが努力をしているのも知っています。ですから今回は霞家の人間としてではなく花組のコウとして楽しんできなさい」
「はい」
現状、一学年最強であろう二人が闘技場に現れると会場のボルテージは一気に上がった。
アリスは自分が来た入場口にてコウと一言交わすと龍と共に試合を見ることにした。
「師匠、どっちが勝つと思う?」
「知らん、霞家の噂は聞いているが……あの二人がどの程度の実力かは把握してない」
「ふーん」
サチとコウが闘技場中央に行きルール説明を受ける。
そして結晶に魔素を注入すると、開始位置に歩いた。
「……では霞サチ対霞コウの試合を行う……はじめ!」