「…………」
時間は午前6時前。
海に行く楽しさでウキウキだったが何とか起きれたアリス……だが表情は笑顔では無かった。
(いや……うん……確かにこの世界の日本は広ろおございますよ?この国広いから飛行機とか乗れるんだろうなって思いましたよ?……それがどうですよ)
アリスが乗っているのは紛れもなく、飛行機だ。
だが、問題は機種だった。
一般人じゃあまず乗ることは無い……自衛隊の輸送機……C1輸送機なのだ。
「どうしたアリス?海だぞ?楽しみじゃないのか?」
「いやー?ちょー楽しみっすよ?たださあ?師匠って天皇陛下に仕える人ですよね?何故に自衛隊の輸送機なんすか?普通政府専用機とかに乗るんじゃ」
「俺は神報者で帝の助言役だが……政府側の人間じゃないぞ?つまり俺単独で政府専用機は使わん。使うとしたら帝が乗る時に便乗するぐらいだ」
「あー、じゃあなんでこれ?」
「一人なら単独で箒で行くんだが今回はお前らを連れてだからな。人を連れる場合は基本輸送機に便乗する」
現状、輸送機に乗っている人間は多い。
自衛隊の制服を着た者、戦闘服を着ている者、そしてアリスが最も気になったのは……。
「なんでサチとコウと香織が一緒にいるんですかねえ?」
「人数多い方が楽しいだろ?これは三穂の意見だ」
「へ?」
アリスは右隣に居る三穂を見る。
「ん?だって海だよ?同年代のお友達と遊んだほうが楽しいじゃん?それとも一人で海行った方が良かった?」
「そりゃあ多い方が良いですけどってていうかなんで三穂さんが居るんですか?」
「今日はアリスちゃんたちのエスコート」
「はあ……じゃあ三人が居ることは良いでしょう……なんで東條?」
東條はやや緊張した顔でアリスの反対側に一人で座っている。
だがアリスが見たいつぞやの取り巻きはは居なかった。
「龍さんに誘われたんだよ」
(いつもの取り巻きどうしたんだよ。お前……マルフォイのポジションだろ!?なら取り巻きちゃんと連れとけよ!お前のアイデンティティ無くなるだろうが!)
「もうしばらくかかるから寝てろ」
(普通の飛行機と違うんだっちゅうの!慣れてないから寝られるか!)
数分後、以外に適応できたのかアリスは深く眠っていた。
数時間後、自衛隊基地に降り立ったアリスたちはそのまま自衛隊車両に乗せられ海岸を目指した。
だがここでアリスは気づいた、街並みが少し違う。
何処か日本と違うような建築の建物が目立つ……強いて挙げるならイタリアや地中海の街並みがこれに当たるだろう。
そしてまたアリス以外の面々も緊張だろうか顔が強張っているようにも見て取れる。
(海……初めてなのかな。確かに……今国って海ないような……あれ?じゃあここどこよ)
因みに龍はやることがあると言って後のことを三穂に任せると一人箒にまた跨って何処かに飛び立った。
そんな疑問も目的地に到着するや否やかき消された。
目的地で待っていた男が全て持って行ったからだ。
いい感じに日焼けしており、サングラス、髪も金髪……これが同人誌なら確実にナンパしお持ち帰りしてそうな男だ。
———誰だよ。
三穂以外の一同が全員思った。
「いやー、熱いねえ!いい天気だ!海水浴日和って奴?恵まれてんねえ!君たち!」
(海でナンパしてくるチャラ男かよ)
「あ、自己紹介まだだったね。俺は天宮桂。そこのたい……じゃねえや三穂さんの部下って感じだからよろしくね」
三穂の部下という言葉を聞いて少しだけ安心する面々。
「そういうわけ、まあ今日一日、こいつを自由に使っていいから海で楽しんで!あたしは君たちの荷物見張ってるから気にせずに楽しんで良いよ!」
「はい!」
そう言われると女性陣と東條は用意されたテントで着替えを始める。
数分後、アリスと香織は着替えを済ませ、荷物の所へ歩いていくとすでに東條が座っていた。
「はや」
「そりゃあ男だからな」
「……気になってたこと聞いていい?」
「何だよ」
「あたしがあんたと初めて会った時に居た取り巻き?はどうしたのさ」
「ああ、母様が切った」
「はあ!?」
「あの襲撃の時、俺の近くに居たんだ。けど俺が足をくじいて動けない時さ、あいつら俺を見向きもせずに逃げたんだよ。まあ緊急事態だったからしょうがないとはいえ、それを知った母様がぶちぎれてさ、縁を切ったんだと。それで助けてくれたのがあの二人じゃん?親がそれで仲良くなってさ色々あってこんなことになった」
「……マジかい」
(名家の世界は良く分からんなあ……まあ確かに新たに名家の議席に座った霞家と協力関係気づいた方が東條家的にも良いのか)
「お!アリスちゃんも香織ちゃん?だっけ?二人の水着可愛いねえ!」
変な空気になったのを色んな意味でぶち壊したのが天宮だ。
「……どうも」
「ほらほら東條君も可愛い女の子が可愛い水着着てるんだから誉めてあげないと!」
「……似合ってる」
「センキュー」
「あれ?君たち……仲悪い?駄目だよ?高校生なんだから仲良くしないと発展しないぜ?」
(寮も違うし普段つるまないから距離感が分からんだけし。発展するわけない)
「お、お待たせ」
「あ!サチ、コウ……おっと……マジか」
アリス含め一同全員驚愕した。