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広島襲撃編 アリス?の剣術 1

 橋を渡り切った向こう側反乱軍の占領地の森、龍はそこに降り立つ。


 パン!パン!パパパン!


 橋の方角から多数の銃声がここまで響いてくる。


「始まったか。……さて」


 すると龍の元に一人の人物が追うように降りてきた。


「お前は何しに来たんだよ」

「面白そうだから来た!主人公だから来た!それだけっすよ!」

「死ぬかもしれんぞ」

「こんな序盤で主人公が死ぬかい!」

「どういう意味だよ……まあいい。とりあえずその刀よこせ」

「へ?なんで?」

「それは俺が使ってる神報者が式典に参加する用の……いわゆる戦闘用じゃない。こっち使え」


 そういうと龍は懐から別の刀を渡す。龍も指していた刀を抜くと別の刀を帯に差す。


 アリスはもらった刀を差す。


 その時だった。


「おおおおおお!」


 アリスの眼前、龍の背後に男が降ってきたのだ。


男の手にはナイフが握られており、すぐさまアリスに振り下ろす。


「うおっ!」

「あ?くそ!」


 だが、男のナイフは空を切る。


 アリスが右に避けるとその勢いで刀を抜き、男の腹部に向けて一線、刀を振りぬいた。


 同時に龍も即時に刀を抜くと、男の首に向かい振りぬく。


 数秒後、腹部から勢いよく出血しながら首と胴体がお別れし倒れた。


「……だあ!ビビった!」

「……」


 龍は驚いていた、急に現れた男にではない、急襲されたにも関わずらず冷静に対処し、敵を切ったアリスにだ。


「お前……躊躇なく切ったな。普通なら腰抜けるだろ……それに……殺すことに躊躇ないのかよお前」

「え?だって相手やる気満々だったじゃん!やられる前にやる……当然では?」

「……そうかい。刀の血拭いとけよ。使い物にならなくなる」

「おっけー……何だこの刀」


 ここでアリスは初めて気づいた。


 アリスが振った刀……普通の刀では無かった、淡い白色に刀身が光っているのだ。


「それは対闇の魔法使い、闇の獣人対策で作られた聖霊刀だ。魔鉱石を打って刀にし、聖霊魔法を付与したんだ」


(鬼滅かよ)


「これじゃないと敵が倒せないとか?」

「いや?別に普通の刀でも倒せるっちゃ倒せるぞ……ほれ見て見ろ」


 龍が指さすのは先程切った男だ。どうやら闇の魔法使いだったらしい。


「傷口見て見な」

「うわグロ……」


 アリスが男の斬られた首を見る、男の首は内部から黒い魔素が染み出している。


「何か黒いのでてる」

「これが闇の魔素だが、闇の魔法使い、闇の獣人の体内にある。違いはな」


 龍が男の腕を確かめる。


「これだ」


 男の腕には入れ墨のようなものが彫ってある。


「これは?入れ墨?」

「入れ墨じゃない。これは闇の紋様……つまり闇の魔法使いとして契約するとこれが刻まれる。刻まれない状態で闇の魔素を取り込むと魔素が暴走し闇の獣人となる」

「詳しいね」

「シオティスご存じない?」

「ああ、なるほど」

「そしてだこの闇の魔素は意外に万能でな。どんな傷だろうが、欠損だろうが瞬く間に再生できる」


(やっぱり鬼滅じゃん)


「おうなるほど。じゃあ普通の刀で斬っても意味ないじゃん」

「そうでもない。見て見ろ本来斬られたらすぐさま修復するために傷口に魔素を送るんだが」

「回復しないね……てかなんか白い何かがふ着している?」

「聖霊魔素だな。聖霊刀で斬られると、聖霊魔素が闇の魔素の修復を阻害するんだ」

「おお!なるほど。でも阻害するだけ?それだと結果的に意味ないんじゃ」

「ところがどっこい……」


(いつの言い方だよ)


「闇の魔素は回復が阻害されているからと言って回復を止めることは無い。完全に修復されるまで魔素を送り続ける。するとこいつの体内の魔素はどうなる?」

「……枯渇する?」

「100点だ。本来、人間が使うのは普通の魔素だが、枯渇するとお前みたいに気絶する、だが闇の魔素は違う……ほら」


 男の傷ついていない手足が急速に黒く霧散しながら溶けていく。


「お!おおお!?」

「こうやってまだ傷ついていない部位を魔素に変えてまで送ろうとするんだ。だが回復は阻害されていて回復できない……この循環が起きる……すると?」

「すると」


 男の体は最終的に体全体が闇の魔素となり霧散した。


「こうなる」

「……ほっほーおもしろ」

「普通の刀や銃弾でも闇の魔法使いの回復に使える魔素量を超える傷をつければ倒せんことも無いが、労力の無駄だだからこれが作られた」

「なるほど因みにどれぐらい斬りゃあいいの?」

「同時に四肢切断」

「Oh」

「行くぞ」


 龍が立ち上がり、それに続いてアリスも行こうとする。


「アリス」

「なに?」

「刀はしまっとけ」

「……ん?納刀しろってこと?」

「そうだ」

「なんでさ!いつ敵が来るか分かんない状況なのに」

「いいか?刀を抜くというのは常に銃の引き金に指を掛けると同義だ。刃は自分に危険が迫った時か本当に殺したい奴が来たときこそ見せればいい。刃は殺意の証だからな。なりふり構わず抜いておくものじゃないし、ぶん回すものでもない。それに……」

「それに?」

「一流の剣士は刀を振らない」

「……はい?」

「殺気と雰囲気で相手に勝てないと思わせるのが一流の剣士だ」

「師匠は出来んの?」

「……400年剣術を磨き続けてきたが、ある程度の経験者なら通じるが……素人や一流剣士にはまだまだ通じない。普通に切りかかってくる」

「……思ったんだけど、師匠が思う最強の剣士って何?」


 龍は少し考える。


「そうだな……刀を抜かずに敵を殺すことかな」

「それ……殺すっていう?」

「戦いにおいて一番の理想は相手を殺さずに降伏させること……つまり相手の殺意を殺し戦う気をなくさせることだ。別に相手の命を奪うことがすべてじゃない。刀身を見せて相手が戦意を失えば上々、本当の理想は対峙した瞬間に相手が戦意を失うことだ」

「師匠はそんな剣士にあったことあるの?」

「……400年生きてきたが、未だ会った事ないし噂も聞いたことが無い。もしいるのなら死ぬ前に一回相対してみたいもんだな……話が長くなった、行くぞ」

「うっす」


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