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プロソス国王一家来日編 龍の追憶 4

「よし、収容完了」


 五人のエルフ族令嬢が車に乗り込み、待機していた衛生科の隊員による診察を受ける中、柏木も同じ車に同乗した。


 いまだ銃は握ったままだ。


「……おい」

「はい?」

「そいつから予備の弾倉抜いとけ、こんな精神状態だ、変に冷静になってリロードされてもこっちが脅威になるだけだ」

「了解です」

「あの……」

「ん?どうしました?」


 話しかけたのは診察に当たっていた衛生科の隊員だ。


「これで全員ですか?」

「へ?あの部屋にはもう人質は残ってなかったはずですが」

「報告では6人では?救助したのは5人しかいませんが……。それに服装を見るに恐らく王女殿下が居ないような」

「……マジで?」


 第一空挺団はこの時国外での実践は初めてだった。


 そして準備の時間があまり取れなかったこと、そして僅かな任務遂行への焦りがあったのだろうあの部屋での救出成功で人数を数え忘れていたのだ。


 隊員はすぐにエルフ族の女性に話しかける。


「王女殿下は!?一緒じゃないのか?」


 するとうつろな表情の女性はゆっくりある場所を指さした。


 そう……宮殿だ。


「あそこか」



「龍さん!」

「ん?」


 隊員がまだ地下に残っていた龍に駆け寄る。


「王女殿下が見当たりません!救出したのは5人だけです!」

「だろうな。部屋が5つ各部屋に一人ずつなら5人しかいないだろうさ」

「それで要救助者の話では王女殿下は王宮に連れてかれたと」

「王女殿下だけは独り占めしたいんだろうな……やっぱりおかしいな」

「そうねえ、王女殿下と貴族令嬢じゃあ価値が違うと思ったんでしょうね……おかしいわね」

「あの……先から何を?」

「この空間おかしいと思わないか?」

「は?」


 龍が見ていたのは侵入してきた通路の反対側だ。


 突き当りなのだが、T字路のようになって左右に道が続いているが、中途半端な距離で行き止まりなのだ。


「この空間何?」

「ていう……かもし地下を作るなら非常用にもう一つ出口作るわよね」

「王宮の方角どっちだっけ?」

「あっちです」


 隊員が指さす方角に歩く龍だが、もちろん通路は行き止まり。


「……ん?」


 何かを感じた龍がゆっくり手を伸ばし、行き止まりの壁に近づいていく。


「……どうしたの?」

「認識阻害だ」


 龍が杖を取り出し何かを唱える。


 すると壁だったものは溶けるように無くなり鉄製の扉が現れた。


「隠し扉ね……方角的に、王宮直結かしら?」

「……隊員を7人集めろ。残りは車で王宮の入り口にて隠れて待機」

「了解です」


 龍の周りに7人の隊員が集まった。


「いいか?恐らくこの先は王宮だ。その最上階、国王の部屋に王女殿下が居ると思われる。速度が重要だ、これより箒で一気に王宮まで飛ぶ、5人は俺と共に最上階まで飛ぶ、2人は帰り道の確保だ。女子供は良いが向かってくる兵は一人残らず射殺しろ、いいな?」

「了解!」



「夜明けか……交代だな」

「ああ、やっと眠れる」


 王宮側の扉の警護についていた兵士は眠そうにしていた。


 時間は午前四時半、もう少しすれば交代の時間だ。


「……ん?」


 一人の兵が扉に耳を近づける。


「どうした?」

「何か聞こえないか?扉の向こうから」

「あ?どうせさらってきた耳長の女どもの声だろ?警備の奴が楽しんでるだけじゃないのか?」

「いや……何かが近づいてくる」

「マジで?お前眠すぎて幻聴でも来たんじゃないか?」

「いや……そんなはずは……」


 その時だった。


 バーン!


 大きな爆発音と共に扉が勢いよく開かれる。


「うわあああ!」

「がはっ!」


 開いた扉に吹き飛ばされた二人の兵士が壁に激突する。


「な……何が……」


 兵士が現状を確認しようとした次の瞬間。


 フードを被った数人の隊員が次々と箒で飛んでいくと最上階へ向かって行く。


「なっ!襲撃……今すぐ警報を!」


バン!バン!


 遅れて入って来た二人の隊員が間髪入れずに二人の兵士の脳天を打ち抜く。


「……入り口制圧」

「あとは逃走ルート確保だな」



「ひひひ!やっと馬鹿どもの接待が終わった。酒飲みには苦労するねえ。さて」


 接待が終了したロスタリオン国王が自室に戻ると、ベッドの端に立つように縛られているミアに視線を移す。


「いやあ、待たせたね王女殿下……いや、ミアさま」

「待ってなどおりません」

「本当は今夜にでもあなたと楽しみたかったのですがねえメノリオの皇太子が結構な酒飲みでねこんな時間になってしまいました」

「あら……もっと飲んでもらっても私は構わなかったのだけれど」

「いえいえ、仕事に差し支えますので……ですが誘拐して一日もたっているんだ。一回ぐらいは抱かないと……」


 そういうとロスタリオン国王は服を脱ぎだす。


 そしてミアの体を触りだした。


「汚らしい手で触らないでもらえるかしら!」

「ふふふ!そのような態度もいつまで持つかな?これから先あなたは私の慰み者になるんだからねえ……おっと?」


ミアの胸元を触った国王……少しだけだががっかりとした表情になった。


「……あら胸が大きいのが好み?なら私より姉さまの方が良かったのではなくて?」

「……高い金払ったんだ!二度目は警戒されて無理だろう……お前で我慢だ。それに」


 国王はミアの口を掴む。


「後で他の女でも楽しむつもりだからな!問題ない……やっとエルフと出来るんだ興奮していきり立っとるよ!」

「……下種が」


 国王がミアに口づけをしようとした……その時だった。


「陛下!陛下!」


 扉を勢いよく開けたのは近衛兵だった。


「……ッチ!この部屋に入るなと言っただろうが!」

「ですが!侵入者が!」


 その時、刀を抜いた龍が飛びながら報告をしようとする近衛兵の首を切り伏せた。


「なっ!」


 首は宙を舞い、体は力を失ったように崩れ落ちる。


「助けに来た……おおお!」


 そのままのスピードで着地しようとした龍……だが着地時に体制が崩れたためそのまま滑って行ってしまった。



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