誘拐事件発生後からバリアスは緊張と不安から一睡もできておらず、目に隈を作りながら自室をくるくる歩き回っていた。
「陛下!」
そこに一人の兵士が慌てた様子で入室する。
「なんだ!わしは今非常にイラついておるんだ!今は娘たちの情報以外受け付けん!」
「そのミア様のことです!今すぐ関所へ!」
バリアスの表情が変わり急ぎ関所に向かうと、急増でこしらえた感が否めない木製の荷馬車に乗るミアと他五人が毛布に包まりそこにいた。
「……ミア!」
「……お父様!」
馬車から降りたミアは全力疾走でバリアスに抱き着く。
「おおお!無事だったんだな!良かった。他の者もよく無事だった!……因みに聞くが誰が?」
「……これを」
ミアが一枚の紙を渡す。
だがバリアスは書いてある文字から龍だと悟った。
『すまないが今回は事の性質上、姿を見せることは出来ない。作戦は完了した。親愛なる友人より。追伸あり』
バリアスがほくそ笑む。
「あやつ……粋なことをしおって。それで?首謀者は?」
その言葉を聞いた瞬間、六人の顔が言いずらそうな顔になる。
「まさか……取り逃がしたのか?」
「いえ……その……見てもらえれば分かります」
ミアは馬車のある部分を指さす。
そこには人ひとりが横たわっているのだろうと分かる布がかぶさってある。
バリアスがその布を取ると、驚愕する。
「なぜこやつは白目を抜きながら泡拭いて気絶しとるんだ?」
「これを」
バリアスは二枚目の紙を受け取った。
『追伸、こいつがあまりにもうるさかったから外科手術にて息子を取っ払った。好きにしろ』
「なっ!」
気絶した国王の手に握られていたのは布に包まれた取られたであろう国王のブツだ。
「……ふふふははは!あやつめ!望んでいた以上の成果だ!ありがたい!おいすぐにこいつを牢屋に運べ!すぐに処刑の準備だ!殺すなよ!」
「はっ!」
兵士たちは数人がかりで国王を持ち上げると持っていく。
「さあミア……それと君たちも今日は王宮で寝るいい、疲れているだろう?体を洗ってベッドでゆっくり休みなさい。連れていくんだ」
関所に集まった侍女たちが一人一人に付き添い王宮に連れていく。
「陛下……あなたも眠ってください。寝てないでしょう?」
「いや……すまないがまだ寝ることは出来んよ。あやつを処刑するところを目にするまではな」
「……了解です」
数日後、王女と貴族令嬢が誘拐されたことを知った国民は怒りの声を上げ、公開処刑を望んだ。
バリアス自身はこの件を内々に済ませる予定だったが、国民の声で公開処刑することを決意。
暴れまわる国王を押さえつけ、プロソスの国民が見守る中、首が刈り取られた。
数年後、メノリオの皇太子が国王に就任すると、日本の龍、プロソスのバリアスと会談を行いこの事件についての思い出話が話された。
その際、日本とメノリオがお互いに動かなければこの作戦がうまくいかなかったことが判明し、これがきっかけで日本、プロソス、メノリオの三国は同盟関係を結ぶこととなる。
因みにこの事件がとある部隊発足のきっかけでもあるがそれはまた別のお話。