「とまあこんな感じかねえ」
「……」
ここまでは話を聞いていたアリスは色々驚愕した。
(ミア……人間不信そうだなとは思ったけど、よく男性不振にならんかったな!ていうか師匠を好きなる理由が分かったわ!そりゃあ命を救ってもらった誰だって恋に落ちますよ!てか柏木先生!作戦に参加してたんか!それで死にかけたから自衛隊止めた?なら同じ自衛隊員を教育するステアの教師になる理由が分からん。……いやそれよりも)
「あのさ……国王の……あれを取ったのはマジ?」
アリスが引き気味で尋ねる。
「ああ、マジだぞ。実際に取るところは見てないがな」
「ふーん。あとさっきから気になってたんですけど……国王様の胸の……飾り……宝石ですか?中々見ないような」
バリアスの胸元にチラチラ見えていた首飾りを指さす。別に欲しいわけでは無かったがアリスの知っているどの宝石とも一致しないことで興味をそそられたのだ。
「ああ、これか……バリアスでかまわんよ」
バリアスが首飾りを取り出しアリスに見せた。
よくよく見るとやはりアリスの知っているどの宝石のとも一致しない、虹色に淡く輝く宝石だ。
「これはな、わが父が建国したときに身に付けていたものじゃ。父が病で無くなった時、国王の地位を引き継ぐときにこれも一緒に引き継いだんじゃよ。特殊な石での、詳細はちょっと言えぬがな……簡単に言えば王の証じゃな。わしはこれを常日頃から肌に離さずに持っておる……寝るときも同様だ」
「へー」
(石……ハリーの賢者の石的な?)
「もう到着します」
車が停車し、先に運転手の外務省の職員が降り、後ろのドアを開ける。
アリスが到着した場所……それは深々な森の中だった。
だが車から降りると同時にアリスは気づいた一緒についていたはずのもう一つの車が見当たらなかった。
「……あれ?お母さんとお姉さんは?」
「お土産を買いに行ったよ。職員が付いてるから問題ない。ここに来た目的はミアだ」
「じゃあバリアスさんは?」
「わしは飯さえ食えればいいのでね、ミアの狩猟の見学だ」
「狩猟?……お?」
ミアが弓と矢筒を引っ提げて車から降りる。
「……プロソスでも狩猟は出来るのでは?」
ミアが大きな溜息を溢した。
「貴方分かってないわね。もちろんできるわ。でもねこの猟の最大の目的は獲った物を日本の料理人に調理してもらうためよ!こればかりはプロソスの料理人には出来ないから」
「……ああ、なるほど?」
(この世界でも日本料理は覇権なのかい)
「一緒に来る?」
「良いの?」
「良いわ、あたしの鮮やかな弓裁き見せてあげるわ」
「……うす」
数分森を歩くと、アリスは気になっていることをミアに聞いた。
「……13年前のこと聞いたんだけど」
「そう、それで?」
「まあ……よく人間不信というか……男性不振にならなかったなあと」
「エルフ族は寿命が長いのよ?時間が解決してくれたわ……それにあたしよりひどい目にあった子もいるから……それに王女としてそんな顔見せられないでしょう?まあ気分を一新するために龍様から剣道を習い始めたけど」
「……強いねえ」
「当然よ……ん?」
「ん?なに……」
ミアがしゃがんだ、アリスも釣られてしゃがむ。
ミアが真剣な眼差しで周囲を警戒しだし、ついてきた龍とバリアスもミアの行動を見た瞬間、邪魔をしないように距離を取り始めた。
(……何か見つけた?なんも見えんけど……やっぱエルフ族としての勘?)
するとミアが右手の掌を広げ前に突き出す。
「?」
恐らく脳内で唱え魔法が発動したのだろう、手のひらから魔素が流れ出す。
(エルフ族って杖無しで魔法が使えるって習ったけど……あれマジだったんか)
エルフ族は魔法の扱いが最も得意な種族であり、セアで唯一、魔法行使に杖を必要としない種族だ。
だがアリスが驚いたのはそこではない……使った魔法だった。
魔素が動物の形を形成すると、次の瞬間、火を纏った犬に成り代わった。
「……えーとなにこれ?」
思いもよらない質問だったのだろう、驚愕の顔でアリスを見つめる。
「は!?守護霊の魔法よ!?知らないの!?ステアの学生なのに!?」
(んー?……守護霊!?ハリーポッターじゃん……ていうか習った記憶ないが!?)
「ステアでは習わないぞ?日本では小学生で習う」
龍がしゃがみながら近づいて話す。
守護霊の呪文、本来は第三攻撃魔法に帰属するが、魔素使用量が第一並みであること術者の命令に絶対服従することから小学校で護身呪文として習うことが義務付けられている。
「ふーん、じゃあ知らないわ。転生したの今年だし」
「いや、霞姉妹に習わなかったのか?教えると思うんだが」
「いやまったく」
アリスが二人から教えてもらってないのには理由がある。
霞姉妹に関しては一応習ってこそいたが、霞家は魔法戦闘の専門家故身を護る守護霊の魔法より自分で戦う家系である、アリスに教えなかったのではなく単に教えるのを忘れていただけなのだ。
「師匠が使ってるところ見た事ないけど」
「そりゃあそうだ俺使えないし」
「なんでさ」
「守護霊の呪文は消費魔素は第一並みだが第三魔法に帰属してるからな俺は使えない」
「あー、なるほど」
「アリス杖出して唱えてみな」
「うい」
(守護霊の呪文……まんまハリーポッターやん!ハリーだと幸せな思い出を思い出すのが発動条件だけど……この世界はいらんのかな。でも小学生で習うってことは難しいことはしないはず……なんでもいいやってみよう)
アリスは杖を取り出す。
「呪文は?」
「ネフスエクソフィーラ」
「よし」
アリスは杖を構える。
「ネフスエクソフィーラ《守護霊よ出でよ》」
杖の先から魔素が流れ動物の形を作っていく、そして作られたのは狐だった。
だが問題があった。
守護霊の呪文は本来、術者の魔法適性によって見た目が変わる。
火が適正魔法なら火をまとった守護霊に、雷なら雷、水なら水の守護霊だ、二つなら合わさった守護霊が生み出される。
では適正魔法を持たないアリスがこの呪文を発動させるとどうなるのか?
こうなる。
「……」
「……ふっ、ふっふふふ」
笑ってはいけないと我慢しようとするががこらえきれずにお腹を抱えて笑い出すミア。
そして始めて見た光景に興味津々で狐を眺める龍。
「……柏木から適正魔法が無いとは聞いていたが……適正魔法が無いとこうなるのか」
水でも風でもない……本来の魔素のみで形とられた半透明の狐がそこに佇んでいた。
「ま、まあ見た目はこれだけど?ちゃんと守護霊の呪文で出てきたわけだし?仕事はしてくれ……」
アリスが狐に触ろうとした瞬間。
プイ……と顔背けてアリスが触るのを嫌がった。
「……おい」
「あははは!もう我慢できない!面白すぎ!守護霊に嫌われるなんて前代未聞よ!?あははは!」
(似たような経験あったな……あ!もしかして聖霊魔法使った時に出てきた狐お前か?なんでだよ!守護霊の時ぐらい可愛がらしてくれよー!撫でさせろやお前!)
その後、守護霊を消したアリスはミアと共に狩猟に参加し一匹の鹿を捕獲、そのまま旅館へ向かったのだった。
「とまあこんな感じかねえ」
「……」
ここまでは話を聞いていたアリスは色々驚愕した。
(ミア……人間不信そうだなとは思ったけど、よく男性不振にならんかったな!ていうか師匠を好きなる理由が分かったわ!そりゃあ命を救ってもらった誰だって恋に落ちますよ!てか柏木先生!作戦に参加してたんか!それで死にかけたから自衛隊止めた?なら同じ自衛隊員を教育するステアの教師になる理由が分からん。……いやそれよりも)
「あのさ……国王の……あれを取ったのはマジ?」
アリスが引き気味で尋ねる。
「ああ、マジだぞ。実際に取るところは見てないがな」
「ふーん。あとさっきから気になってたんですけど……国王様の胸の……飾り……宝石ですか?中々見ないような」
バリアスの胸元にチラチラ見えていた首飾りを指さす。別に欲しいわけでは無かったがアリスの知っているどの宝石とも一致しないことで興味をそそられたのだ。
「ああ、これか……バリアスでかまわんよ」
バリアスが首飾りを取り出しアリスに見せた。
よくよく見るとやはりアリスの知っているどの宝石のとも一致しない、虹色に淡く輝く宝石だ。
「これはな、わが父が建国したときに身に付けていたものじゃ。父が病で無くなった時、国王の地位を引き継ぐときにこれも一緒に引き継いだんじゃよ。特殊な石での、詳細はちょっと言えぬがな……簡単に言えば王の証じゃな。わしはこれを常日頃から肌に離さずに持っておる……寝るときも同様だ」
「へー」
(石……ハリーの賢者の石的な?)
「もう到着します」
車が停車し、先に運転手の外務省の職員が降り、後ろのドアを開ける。
アリスが到着した場所……それは深々な森の中だった。
だが車から降りると同時にアリスは気づいた一緒についていたはずのもう一つの車が見当たらなかった。
「……あれ?お母さんとお姉さんは?」
「お土産を買いに行ったよ。職員が付いてるから問題ない。ここに来た目的はミアだ」
「じゃあバリアスさんは?」
「わしは飯さえ食えればいいのでね、ミアの狩猟の見学だ」
「狩猟?……お?」
ミアが弓と矢筒を引っ提げて車から降りる。
「……プロソスでも狩猟は出来るのでは?」
ミアが大きな溜息を溢した。
「貴方分かってないわね。もちろんできるわ。でもねこの猟の最大の目的は獲った物を日本の料理人に調理してもらうためよ!こればかりはプロソスの料理人には出来ないから」
「……ああ、なるほど?」
(この世界でも日本料理は覇権なのかい)
「一緒に来る?」
「良いの?」
「良いわ、あたしの鮮やかな弓裁き見せてあげるわ」
「……うす」
数分森を歩くと、アリスは気になっていることをミアに聞いた。
「……13年前のこと聞いたんだけど」
「そう、それで?」
「まあ……よく人間不信というか……男性不振にならなかったなあと」
「エルフ族は寿命が長いのよ?時間が解決してくれたわ……それにあたしよりひどい目にあった子もいるから……それに王女としてそんな顔見せられないでしょう?まあ気分を一新するために龍様から剣道を習い始めたけど」
「……強いねえ」
「当然よ……ん?」
「ん?なに……」
ミアがしゃがんだ、アリスも釣られてしゃがむ。
ミアが真剣な眼差しで周囲を警戒しだし、ついてきた龍とバリアスもミアの行動を見た瞬間、邪魔をしないように距離を取り始めた。
(……何か見つけた?なんも見えんけど……やっぱエルフ族としての勘?)
するとミアが右手の掌を広げ前に突き出す。
「?」
恐らく脳内で唱え魔法が発動したのだろう、手のひらから魔素が流れ出す。
(エルフ族って杖無しで魔法が使えるって習ったけど……あれマジだったんか)
エルフ族は魔法の扱いが最も得意な種族であり、セアで唯一、魔法行使に杖を必要としない種族だ。
だがアリスが驚いたのはそこではない……使った魔法だった。
魔素が動物の形を形成すると、次の瞬間、火を纏った犬に成り代わった。
「……えーとなにこれ?」
思いもよらない質問だったのだろう、驚愕の顔でアリスを見つめる。
「は!?守護霊の魔法よ!?知らないの!?ステアの学生なのに!?」
(んー?……守護霊!?ハリーポッターじゃん……ていうか習った記憶ないが!?)
「ステアでは習わないぞ?日本では小学生で習う」
龍がしゃがみながら近づいて話す。
守護霊の呪文、本来は第三攻撃魔法に帰属するが、魔素使用量が第一並みであること術者の命令に絶対服従することから小学校で護身呪文として習うことが義務付けられている。
「ふーん、じゃあ知らないわ。転生したの今年だし」
「いや、霞姉妹に習わなかったのか?教えると思うんだが」
「いやまったく」
アリスが二人から教えてもらってないのには理由がある。
霞姉妹に関しては一応習ってこそいたが、霞家は魔法戦闘の専門家故身を護る守護霊の魔法より自分で戦う家系である、アリスに教えなかったのではなく単に教えるのを忘れていただけなのだ。
「師匠が使ってるところ見た事ないけど」
「そりゃあそうだ俺使えないし」
「なんでさ」
「守護霊の呪文は消費魔素は第一並みだが第三魔法に帰属してるからな俺は使えない」
「あー、なるほど」
「アリス杖出して唱えてみな」
「うい」
(守護霊の呪文……まんまハリーポッターやん!ハリーだと幸せな思い出を思い出すのが発動条件だけど……この世界はいらんのかな。でも小学生で習うってことは難しいことはしないはず……なんでもいいやってみよう)
アリスは杖を取り出す。
「呪文は?」
「ネフスエクソフィーラ」
「よし」
アリスは杖を構える。
「ネフスエクソフィーラ《守護霊よ出でよ》」
杖の先から魔素が流れ動物の形を作っていく、そして作られたのは狐だった。
だが問題があった。
守護霊の呪文は本来、術者の魔法適性によって見た目が変わる。
火が適正魔法なら火をまとった守護霊に、雷なら雷、水なら水の守護霊だ、二つなら合わさった守護霊が生み出される。
では適正魔法を持たないアリスがこの呪文を発動させるとどうなるのか?
こうなる。
「……」
「……ふっ、ふっふふふ」
笑ってはいけないと我慢しようとするががこらえきれずにお腹を抱えて笑い出すミア。
そして始めて見た光景に興味津々で狐を眺める龍。
「……柏木から適正魔法が無いとは聞いていたが……適正魔法が無いとこうなるのか」
水でも風でもない……本来の魔素のみで形とられた半透明の狐がそこに佇んでいた。
「ま、まあ見た目はこれだけど?ちゃんと守護霊の呪文で出てきたわけだし?仕事はしてくれ……」
アリスが狐に触ろうとした瞬間。
プイ……と顔背けてアリスが触るのを嫌がった。
「……おい」
「あははは!もう我慢できない!面白すぎ!守護霊に嫌われるなんて前代未聞よ!?あははは!」
(似たような経験あったな……あ!もしかして聖霊魔法使った時に出てきた狐お前か?なんでだよ!守護霊の時ぐらい可愛がらしてくれよー!撫でさせろやお前!)
その後、守護霊を消したアリスはミアと共に狩猟に参加し一匹の鹿を捕獲、そのまま旅館へ向かったのだった。