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個人用携帯通信端末爆誕 携帯? 2

「え?」

「ん?……えーと……ん?は?」


 予想だにしない衝撃の事実を成田より打ち明けられた夏美とアリスは呆然としていた。


「成田ちゃん……もう一度言ってくれる?聞こえなかったわけじゃないよ?ただ脳が理解するのを拒否しちゃったみたいでさ」

「私はそこの柏木恭子の娘」


 今度は叫んだりせずに落ち着いて答えた成田……さすがに言葉を理解したアリス。


「ふーん、なるほど?成田ちゃんは柏木先生の娘……ええええええ!」


 誰しもが遅いとツッコミを入れるだろう驚愕の叫びをアリスが挙げる。


 同じく驚愕した夏美も成田に質問する。


「でも苗字違う……よね?」

「成田は父の苗字です。柏木先生と父は離婚したので」

「あ、なるほど……」


(ん?でも13年前……なら成田ちゃんは生まれてるはず……でもその時でも柏木姓だったはず……もしかしてお父さんって……婿養子なのか?)


「自分に虐待をしていた母親が兄弟とは言え他人の子供に笑顔で接していることに我慢できなかったんです!」


 そういうと成田は服を脱ぎだし、下着姿になった。


 そして背中を見せる。


「……わー」

「……あ」


 二人とも絶句した。


 成田の背中は火傷?と打撲痕でいっぱいだ。


「……でも聖霊魔法で直せるんじゃ?」

「はい父にもそう言われました。女の子なら傷は直しなさいと、でも誓ったんです!あたしにこんなことをした母親に謝罪させるまで絶対にこの傷は治さないって!」

「ね、義姉さん」

「……事情があったんだ」

「その事情を知りたいんですけど」

「言えん」

「なんで!?」


(そりゃあ、言えんだろうなあ……恐らくだけど柏木先生の精神が壊れて成田ちゃんへの虐待が始まったのは13年前の作戦以降だろう。でもあの作戦は極秘任務で参加した空挺隊員ですら他の空挺隊員に話せんだろうし……困ったなあ……親子喧嘩かあ……なら取るべきは一つか!)


「母さん!」

「義姉さん!」

「……」

「そこまで!」


 二人が柏木に詰め寄っているのを柏木以外で唯一事情を知っているアリスが止めに入る。


「なんでアリス止めるの?」

「そうだよ!昔とは言え成田ちゃんに虐待していたんだよ?理由を聞かなきゃ!」

「お二人とも!よく考えてくださいよ?柏木先生が成田ちゃんに虐待しだしたのは多分ですけど13年前からです!」

「おい!アリス!なんで知ってる……龍か」

「何してるの?アリス」

「ごめんちょっと言えない……でもね?虐待はもちろんいけないことだけど当時の先生の精神状態からするとしょうがない……って言っちゃあいけないんだけど……しょうがなかったの!だから問い詰めても無理!」

「じゃあこの怒りはどうすればいいの!?」

「もちろん分かってるよ!」


 アリスは柏木の元へ歩く。


「なんだ?」

「持っている杖と銃を渡してください」

「は?何故だ?」

「良いから!今は先生に話してるんじゃないです一人の母親に話してます!」


 静かに柏木がアリスに杖と銃、予備のマガジンを渡す。


 受け取ったアリスは次に成田の方へ向かう。


「成田ちゃん、ひとまず有紗ちゃん帰そ?赤ちゃんには罪無いよね?そもそも成田ちゃんが有紗ちゃん誘拐したのは柏木先生と話すためでしょ?目的は果たした……なら次の目的を果たそうよ」

「次の目的?」

「純粋な親子喧嘩。とりあえず成田ちゃんの杖も預かるね」


 成田が夏美に有紗を渡す。


「すみませんでした」

「ううん、大丈夫。それにちゃんと見ててくれたんだなって有紗ちゃんの顔見れば分かるから」


 そして夏美が有紗と共に柏木の傍に寄った時。


「義姉さん」

「……何だ?」

「成田ちゃんとの一件が解決するまで有紗に触るのを禁止するから」

「なっ!?あ、あ、……わ、分かった」


 今までで一番の絶望の顔をした柏木。


 それを横目に二人の杖と銃を受け取ったアリスは魔法戦闘の道具が置いてる棚へ向かうとそれを置き、身代わりの結晶を自分の魔素で作りだした。


 そして模擬戦闘用の杖を一本、持っていく。


「二人とも練習場の中央へ」


 柏木と成田が中央にやって来るとお互いがお互いを見つめあう。


「私は親子喧嘩の場合、話し合いで解決できるんならそれに越したことは無いですがいつもそれが通用するとは思っていません。ならどうするか……殴り合いの喧嘩すればいいじゃないと思います……男女関係なく」

「は?」

「ですがここはステア魔法学校です。二人とも魔法の扱いは長けているでしょう、なら魔法戦闘で思いのたけをぶつけあいましょうってことです!」

「それは良いアイデアね」


 成田はすぐに決勝に自分の魔素を登録した。


「……そうか……私も自分に非があるとは持っている。戦闘でそれが解決するとは思わんが優が言うなら良いだろう」


 柏木も結晶に登録した。


 お互いの結晶の色が変わると、アリスは杖を成田に渡す。


「おい、私のは?」

「あ、忘れたちょい待ち」


 アリスは結晶と共に結界範囲外まで移動すると、そのまま結界を発動させる。


「は?ちょっ!おい!アリス!まだ私は杖を!」

「先生……私ね思うことがあるんです」

「な、なんだ?」

「もしお互いに非があるんなら私はお互いに杖を持たせます……けど今回の件成田ちゃんに非あります?」


 柏木の顔が引きつる。


「つまり?」

「結局は事情こそさておき大事な娘をほったらかしにした挙句黙って出てった先生が全面的に悪いですよね?なら娘の思いを受け止めなきゃ!」

「お……お?おいおいおい……っ!」


 柏木は突然の殺気に体を強張らせ振り返った。


 そこには杖を構え、目に明らかな何かを宿した成田が居る。


「……分かった!謝る!私が悪かった!だから、な!こんなことはやめにしよう!いくら何でもこれは!」


 魔法を打たれる痛みを知ってるんだろう、即座に土下座しこの場を収めようとする。


 だが成田の表情は変わらず杖を構えたままだ。


「駄目ですよー!そのその場しのぎの言葉と土下座じゃあ。ちゃんと娘の思いを受け止めないと!あ、言い忘れてた!先生の結晶の耐久値……無限にしといたので!」

「はあああああ!?」

「それでは魔法戦闘の挨拶をちゃんとして始めましょうか!お互いに礼!」


 成田は静かに礼をした。


「それでは始め!」


 成田が杖の先に魔法を発生させ、少しづつ柏木に近づく。


「いや……優!待ってくれ!いや謝るから!本当に!本当に!」

「母さんの馬鹿ああああああ!」




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