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三大魔法学校交流会 1

 夏、ズトューパ全国大会のエキシビションマッチに花組、鳥組、風組、月組連合のステア魔法学校代表として出場したアリスとサチとコウは無事勝利をもぎ取り、ズトューパ部員として二年の夏を有終の美で飾った。


 因みに、ステア魔法学校はズトューパ全国大会の第一回大会から出場しているが、その強さ故に連続で優勝しまくった影響により、殿堂入りを果たし(大会にならないと理由でもあり)全国大会優勝者とのエキシビションマッチを開催するということでバランスを取っている。


 そして三年が引退し、花組主将が満場一致(脳筋とバカは最初から候補にない)でコウが選ばれた。


 そして一年に比べて多少、暇になった二年の夏を謳歌したアリスたちは二学期に突入した。



「アリス」


 夏の熱さが少しずつ消え、第二日本の木々たちが色付きはじめもう見た目的にも気温的にも秋を認識できるようになった10月、半袖から長袖に切り替えたアリスを柏木が声を掛ける。


「なんすか?」

「……もう大丈夫か?」

「何が?」

「かなりの大怪我だったろ?」

「……何か月前のことを言ってるんすか」

「お前の体の心配はしてない。全快してるのをサチからも龍からも聞いている。問題は心だ」

「心?」

「かなりの重傷を負ったんだ……その、夢に出るとか」

「ああ」


(なるほどPTSDの事言ってるのか。そういや柏木先生も過去に患ってたっけ)


 柏木は過去、ミア王女殿下を助けるために第一空挺団と共にある国へ潜入、その際、死にかけた事によりそのトラウマで自衛隊を止めた経緯があるのだ。


 それを経験しているからこそ、事件での負傷によって体は回復するが心の回復は時間が掛かることを身をもって知ってるからこそアリスのことを心配してるんだろう。


「大丈夫っすよ!あれからは夢にも出てませんし、部活で忙しかったのもあって他の事に集中していたからか問題ないっす」

「そうか」


 正確には、最初の二、三日はアリスも夢を見た。


 だが二日三日と続いてく内に夢の中の恐怖に抵抗する面白さが勝ってしまい、部活が忙しくなる直前までには次はどんな夢が見れるのかという興味になってPTSDにはならなかったのである。


「ならいい。それで本題だ」

「今のが本題じゃないんかい」

「お前……ミア王女殿下と面識あるか?」

「ん?ミア……王女殿下……ていうとプロソスの?」

「そうだ」

「んまあ……あるっちゃ……ありますけど」


 プロソス国王一家が来日したことは政府でも閣僚レベルでしか知らされておらず、極秘扱いである。


 もちろん旅行に同行したアリスも同じく守秘義務が課されているが、龍より『神報者の仕事に同席して会った事は伝えて構わん』と言われている。


 つまり仕事で会っては居るがその内容を話すことは出来ないと言われているのだ。


「……師匠の仕事について行って多少は?内容は言えませんが」

「内容に興味はない。面識があるんだな?」

「そうですねあります」

「ならこれに出席しろ」


 持っていたファイルから一枚の紙を渡す。


「ん?なんぞ?」


『三大魔法学校交流会』


「交流会?」

「そうだ」


 このセアには日本を含め、三つの魔法学校が存在する。


 第二日本のステア魔法学校、プロソスのプロトス魔法学校、そしてメノリオの魔法学校だ。


 そしてこの三国の交流は盛んであり、一年に一度の各校の交流の為に各魔法学校の生徒を他国の魔法学校に派遣して交流会を催すのが伝統になっているのだ。


 因みに、この交流会は毎年開催校がローテーションで変更されており、必ず三年に一度は他国の魔法学校の生徒を受け入れることになる。


 またステアの場合は一年は、授業量がとにかく多いため、そして三年生は受験やら就職活動の為に暇が無くなるので基本的に二年生の中で成績優秀者が選ばれることが多い。


「なるほど……因みに去年は何処でやったんですか?」

「日本。今年はプロソスにて行われる。そしてステアの生徒の案内役がミア王女殿下なんだよ」

「ああ、だからか。でも募集要項……成績優秀者ってあたしどう見ても無理じゃん」

「筆記等はコウが、魔法実技に関してはサチが候補っていうか決定している。また政治家等の繋がりから西宮雪も参加する。因みに今回の教職員としての引率は私なんだが、ミア殿下と交流がある人間が居なくてな」

「あたしを呼ぶ理由、コネかい!」

「いやコネクションがあるのも十分人生に必要な要素だぞ?政治の世界だと特にな。だからこそある意味神報者は慕われるんだ。最悪現役大臣やコネクションが豊富な有力議員ですら霞むレベルだ。国の一大事に神報者が呼ばれる理由がこれだ、伊達に400年生きてるわけじゃないんだよ。で?行くのか?」

「プロソスに行くんでしょ?行かない理由がない」

「そうか、なら今週の金曜日に出発だ。用意しとけ」

「ういっす」



 金曜日、授業が終わりそのまま制服に着替え招集された二年生の遠征組である、アリス、サチ、コウ、西宮雪、そしてまた何故かいる東條含めた10人は首相官邸の転生陣に居た。


(まさか首相官邸の転生陣から行くことになるとは)


「なんであなたが居るのよ」


 まさか成績的にも授業態度的にも選ばれるとは思ってなかったアリスが居ることに驚きを隠せない雪。


「まあなんだかんだあってね」

「そう……ならステアの名を汚さない振る舞いをしなさいよ?あなたの授業態度、月組にまで広がってるから」

「へいへい」


(それ言うとサチですら授業中寝てるんだが……いや魔法戦闘で無双してるから許されてんのか)


「それでは魔法陣を起動します。準備してください」

「……ていうかなんで師匠がいんの?」


 何故か転生陣の上には遠征組ではない龍までいた。


「バリアスに来いってな、今回はまあお前の邪魔はしないよ、楽しむといい」

「ふーん、てかなんで杖出して……」

「龍さんお願いします」


 龍が杖を地面に向けると勢いよく魔素を魔法陣に注いでいく。


(ああ、この人数の転移だから相当の魔素が必要……魔素節約のためか)


 龍がある程度魔素を注ぐと魔法陣が魔素注入無しで自発光を開始した。


「お、おおお」


(転移してきた人は見たけど、実際に転移すんのは初めてだな……やばい!まじで興奮する!)


 約数秒後、アリスを転移陣の光が完全に包み、アリスの目は完全に真っ白に染まる。


 さすがに眩しすぎたかアリスは目を閉じる。


 そして一瞬の浮遊感の後、アリスの体は首相官邸の転移陣から消失した。


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