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三大魔法学校交流会 2

「アリス……着いたわよ」

「え?……はや」


 僅かな浮遊感を感じた数秒後、西宮の声で転移が終了したことが分かると転移に掛かる時間があまりにも短い事に驚くアリス。


「ていうか……首相官邸の転移陣と雰囲気似てるな」


 首相官邸の転移陣も地下に作られているが、ここも恐らく地下なのだろう……そういう雰囲気の場所に転移陣が作られている。


「当たり前でしょ?転移ごとに転移陣に掛かれる座標は国家機密に値する情報よ?外に作るなんて馬鹿な真似するわけないじゃない」

「あ、なるほど」

「皆さまようこそいらっしゃいました!」


 二人がそんなことを話していると、転移陣の部屋の入り口側にて待機してたのであろうエルフ族の女性がこちらに歩きながら挨拶してくる……ミアだ。


「久しぶりだなミア」

「ええ、龍様はお父様がお待ちです」

「知ってるよ」


 そういうと、龍は日本側やプロソス側の護衛すら付けず当たり前のように一人で部屋を出ていった。


 柏木がミアの元へ歩く。


「お出迎えありがとうございます。ステア職員代表の柏木です」

「……柏木……さん?」


 柏木の差し出した手を困惑気味になりながら握るミア。


(ミア?……あ!そっか13年前?14年か?忘れたけど、誘拐事件を解決した当時の隊員の一人に柏木先生居たんだった!でも覆面被ってたはずだよな?なら……声で判断したのか?)


 恐らく当時の助けてくれた隊員の会話等などから声を覚えていたのだろう、あの時の精神状態である故、正確に覚えてはいなかったがミアは恐らく目の前の柏木が救出した部隊の一人だと直感で気づいたのだ。


 だが対して柏木はさすがにちゃんとミアのことを覚えているが、あの時は当時の第二日本の閣僚はおろか当時の総理ですら作戦の結果のみを知らされたレベルで機密事項なのだ、おいそれとこの場で言うわけにはいかない。


 またそれ以降、柏木とミアはあった事すらない、つまり公式的には初対面扱いなのだ、柏木はそれを知った上での態度を取っているである。


「何か?」

「いえ……よろしくお願いいたします」


 感謝の言葉を言えないやるせなさを感じながらもなんとか笑顔の表情を作り、案内役の役目を全うしようとするミアが次に握手したのは西宮だ。


「生徒代表、西宮雪と申します」

「西宮……ああ、西宮総理の……」

「はい!娘です」

「私は王族ですが政治に関しては詳しくなくて……ですがお父……いえ国王からは噂は聞いております。これからも日本とプロソスの友好の為によろしくお願いしますね」

「はい父に伝えておきます」


 西宮がどうだというようにアリスをチラ見する。


「……?」


(どうせこれが政治家の娘としての振舞い方よ?あなたも見習いなさい?とか言いたいんだろうよ!知った事か!)


 だが自信満々にミアに挨拶したことをアリスにドヤ顔という形で見せつける雪を横目にミアがアリスの元にやって来る。


「久しぶりね、アリス」

「……なっ!」


 自分とはまるで違う接し方に驚きを隠せない雪。


「ああ、ミアも元気そうで何より……てか一年ぶりなんだが?」

「悠久の時を生きるエルフにとって一年はあっという間よ?」

「そりゃあそうでしょうよ!でも人にとっては結構長く感じる期間ですぜ!」

「あらそう?でもあの時言ったでしょ?また近いうちに会うからよろしくと」

「え?……あー、一年後が近いうちに入るか?こちとらすっかり忘れてたわ」

「あらひどい」


 雪が驚きながら二人の会話を聞いているが、アリスはそれどころでは無かった。


(詳しいこと言うなよ?こちとら国会機密扱いだからな?あたしが話せる内容だけじゃ会話持たんぞ?)


「ミアさま、そろそろ」

「そうね!ではステアの皆さま、着いてきてください。メノリオの皆さまはつい先ほど到着されております。今日は学校の授業後の転移ですからお疲れでしょう。この後、お食事を含めた歓迎会の後は各自部屋にてお寛ぎください。ではお部屋までご案内いたします」


 そういうと転移室のドアから出ていき、ステアの遠征組もそれに続いていく。


「ちょっとアリス」

「ん?何さ」


 移動している途中、雪が困惑気味にアリスに話しかける。


「なんであんたがミア様と仲良さそうに話してるのよ!」

「ああ、約一年前?かな、師匠の仕事の付き添いでバリアスさんやミアと会ってるんよ。まあ内容は言えんけど」

「な!国王様を……ていうかさっきからミア王女殿下を呼び捨てにってどういうつもり?」

「だって本人がそう呼べって」

「…………もういいわ!」

「そうっすか」


 予想外の展開に焦った顔になった西宮は足早に先頭を歩くミアの元へ歩いて行った。



「ひっろ……」


 転移陣のある宮殿を離れ同じ敷地にある迎賓用の宿舎に案内された部屋に自分の荷物を置いたステアの遠征組は数時間の休憩後、制服のまま歓迎会の会場に来ていた。


 会場はヨーロッパの貴族様がパーティー等に使うような空間は優に百人以上は軽く入ることが出来る会場だ。


 なお入り口の反対側には個別の応接室があるのだろうか、石造りの螺旋階段を上った先にはドアがある。


 またすでに会場についていたメノリオの生徒は開催校のプロトスの生徒とすでに談笑している。


 だがステアの生徒が会場に入るのが分かると両校の生徒が挨拶をしようと近づいてくる。


 ステアの生徒も最初は緊張の面持ちであったが次第に打ち解けていったのか話している生徒は皆笑顔だ(この空間にいる生徒は全員日本語を話している)。


 ここでアリスは予想していなかった展開が起きた。


 誰一人アリスに話しかける生徒が居なかったのだ。


(これ話しかけた方が良いのか?でもなあ……)


 アリスは神報者の弟子であり、すでに全世界の要人にも知れ渡っているし、龍は世界的に見ても日本の首相よりも世界に影響力のある人物である。


 だが残念ながらアリスという名前こと知れ渡っているが、顔が知れ渡っていなかった。


 それ以上にこの場の者がアリスを知らない理由があった……それはそもそもアリスが参加すること自体がイレギュラーだったのだ。


 本来アリスは、今回の交流会のメンバーに選ばれていなかったし、そもそも開催校であるプロトスの学校に送られたメンバー表にもアリスの名前は存在しない。


 だがプロソスの王女殿下だったミアがステア側の責任者である柏木にメンバーにアリスを加えるように要請したのだ。


 しかもメンバー表は送った後なので、アリスはある意味、本来この場に居ること自体がおかしい存在なのだ。


 では何故そのような要請をしたのか……理由はある意味直ぐに判明した。


「おや!あなたがアリスさんですね!初めまして」

「へ?」



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