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三大魔法学校交流会 4

「…………」


 翌日のお昼、プロソスの街へ案内されたステア一行はプロソス一の図書館へ来ていた。


 皆がミアに案内されながら図書館の中を見学し、自由時間になると、日本にはない本を興味津々で読みだす人、図書室に居たエルフの人と交流する人などに分かれた。


 コウは日本で読んだことが無い本がずらりと並ぶことに興奮し、一人静かに読書に耽っていたがサチは本に興味が無かったのだろう外に出ると偶々やっていた出店巡りに赴いていた。


 そんな中アリスは図書館の外にあるベンチに腰掛けると寝不足故に目の下に隈を作った状態で休憩していた。


「あらあら……大丈夫?」


 そこに飲み物を持ったミアが横に座る。


「……あんな質問攻めに会ったらくたびれるわ」


 アリスに対する質問攻めはパーティーが終わっても続いていた。


 なんと質問が終わりアリスが寝る事が出来たのは、普段アリスが寝ている11時より大幅に遅れた深夜2時だった。


「でしょうね。でも神報者になるんだったらこれぐらいは普通だと思うわよ?」

「だとしてもだ!」

「あれ?アリス!お眠かあ、これ食べる?」


 出店を歩き回っていたサチがアリスの元へやって来ると食べ物が入ってるらしい箱を差し出す。


「うーん……とりあえず一口……これ飴?グミか?」


 眠気が襲う中、適当に箱から一つ取り出すと口に放り込む。


 ……が次の瞬間。


「……ん?……んああああああ!おえええええ!」


 一粒口に含み数回嚙んだところで口の中に味わったことも無い味と風味が広がると途端に掃き出し水で口を数回洗うと、立ち上がった。


「なんっだよこれ!」

「あははは!外れ引いたね!多分ゲロ味かな」

「珍味ビーンズですね」

「ち、珍味ビーンズ?」

「ええ、識人さんの情報をもとに作ったビーンズよ。中身は普通のグミのような味が一般的なんだけど中には日本やプロソスの珍味の味をグミにしたものもあるのよ。中々美味で地方に住むプロソスの民からはお土産として人気なのよ」

「……ゲロは珍味ですか!?」


(ハリーの百味ビーンズじゃねえか!識人よう!変なものまで教えなくていいっすよ!何も知らずに寝不足の頭にゲロの味を叩き込んじゃったじゃねえか!意識吹っ飛ぶよこれ!)


「お口直しにこれはどう?」


 ミアがアリスに飲み物を渡す。


 だがアリスはそれすらも疑うように見つめ始める。


「大丈夫よ、ちゃんとした飲み物だしプロトスの学生からも人気だし……何故かメノリオの生徒からも好評でね」

「ふーん」


 アリスは受け取ると一口飲み、味わうが……脳があることを訴えた。


「…………」

「どうかしら上手いでしょ?」


(これ……もしかして)


「これも識人から得た情報で作ってない?そして多分だけどその識人が命名しようとしてたのはバタービール」

「え!?なんでわかったの!?」

「……多分だけど旧日本で飲んだことある」

「うっそ!?」


(あたしにはイギリスに行った記憶はもちろんないしイギリスの地理とかも知識無いから行ったことは無いはず……なら考えられる可能性は一つだけ、あたしユニバいったな?そこで飲んだんだ。でもおかしいんだよなあ……ユニバにハリーエリアが出来たのは結構最近のはず、なのになんでプロソスにはもう広まってるんだ?)


「これ……と似たような飲み物、旧日本で作られたテーマパークの中で売られてたよ。有名な映画に登場する飲み物として。でもこのバタービールは微妙に味が違うんだよね」

「なるほどね、それは当然かもね。これはその映画?の知識を持った識人が見た情報だけを頼りに作ったものだから」

「その知識だけで作ったんかい!味まで似るってどんな奇跡よ!?」

「そうねある意味奇跡だけど、味が微妙に違う時点でこれはもうプロソス特産の飲み物よ」

「あ、特産で思いだしたけど。昨日のパーティーで出た食事、何で二品しかなかったん?」

「あ、それ私も聞きたかった!」


 交流会の歓迎会に出される食事は基本、招待された学校の国の伝統食が前菜、そしてメインとして主催側の学校の国で食べられている伝統食が出るのが一般的とされるのだが、何故か前夜で出された前菜はステアの日本食のみだったのだ。


「ああ、あれね。開催が決まった時点でメノリオ側が自分たちの前菜は無しで構わない、前菜は日本食だけで良いって言伝が来たのよ。だからああなったの?」

「へえ」

「メノリオの食事も食べて見たかったのになあ」

「……そうだねえ」


(メノリオ……もしかして国としての伝統食が無い?旧世界でもどっかにあったな。その国で一番うまい食べ物が中華だかカレーだかって国が)


 もしかしなくても産業革命と引き換えに食事を楽しむことを失ってしまったイギリスである。


「所で」

「ん?」

「昼食はプロトスの食堂の予定だけど、あなた食べれるの?」

「……今の状態では無理かな。一度仮眠したい」

「なら時間まで図書館の仮眠室があるから使いなさい。私から言っておくわ。それに……」

「それに?」

「午後からは親善としてステア、プロトス、メノリオの生徒による魔法実習よ?アリスとサチさんは魔法戦闘してもらうから」

「マジ!よっしゃあエルフと戦えるじゃん!楽しみ!」

「なるほど、今すぐ寝てきます」

「そうしなさい」


 数分後、案内された仮眠室で一時間の仮眠をしたアリス、その後プロトスの学食にて特別に用意された昼食に舌鼓を打ったわけである。


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