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第二日本国首都襲撃事件 4

「…………う……あ?……いっつ」


 何十分経ったか、爆風に巻き込まれ吹き飛ばされた気絶したアリスがようやく目覚める。


 ゆっくり状態を起こし、痛む場所を触ると頭から少量ではあるが出血しているのが確認できるが、現状それどころではないと分かっていたアリスは周りを確認した。


「……えぇーと……マジで?」


 驚いたことにアリスを残して他の人間は恐らく運ばれたのだろう、すでにいなかった。


 確かに、アリスが倒れた場所は、正面入り口から少し離れた目立ちにくい場所であった。


 だがアリスだけ運ばれなかった理由は簡単だった。


 そもそも気絶したのはアリスだけであり、他の者は多少の怪我こそしたが、皆自力で避難したのだ。


 それに突然の襲撃で皆パニックになった。


 その影響で目立ちにくい場所にいたアリスは運ばれずにいたのだ。


「……ご丁寧にあたしだけ残すか!?……ったくよ!」


 ふらつきながらもなんとか立ち上がると医務室に向かうために何とか歩き始める。



「きゃああああああ!」


 数分後、医務室へ続く廊下を歩いている時だった。


 講堂に入る大扉から女子生徒らしき悲鳴が聞こえる。


 ただアリスにはこの悲鳴というより……声に聞き覚えがあった。


(今の悲鳴……まさか)


 アリスがふらつきながらも扉の傍によると中を伺う。


 中には何と西宮と闇の魔法使いであるファナカスとシオティス、フローシオが対峙していた。


(……どういう状況!?なんで雪さんが対峙してらっしゃるんですか!?)


「うむ弱いのう」


(そりゃあそうだろあなたに比べりゃあ大抵の魔法使いは雑魚扱いでしょ!)


 だがどうやらシールドを破壊されているようで、体が動かず喋ることが出来ていないようだ。


「今日はお主に用はないのでな。おぬしに恨みは無いが……死んでもらうかの」


 ファナカスが杖を構えると漆黒の魔法が生成される。


「……っく!」


 どうにか避けるか杖を構えようとするがシールドが破壊された反動がまだ続いているようで何もできない。


(どうする?あたしはまだふらつくけど動けはする……でも雪は何もできない……見捨てるのか?雪みたいな美少女を?そんなの認めるわけないよなぁ!主人公としてよお!)


 ファナカスから闇の魔法が放たれる。


 雪はもう何も出来ないと死を覚悟し目を閉じた。


「おおおりゃあああ!」


 走っても間に合わないと本能的に感じたアリスは風魔法で一気に加速するとそのまま何とか西宮の前に滑り込む。


 そして西宮を庇うようにして杖を構えた。


 バーン!


 アリスと西宮は気づかなかったがその時展開せれたシールドはいつもの透明なシールドではなく少し白みを帯びたシールドであった。


「なっ!」

「ほう?」


 以外にもこの状況を驚いたのはファンカスとシオティスだった。


「……え?……アリス!?」

「よう雪さん……大丈夫?」


 さすがに死んだと思った西宮がまさか今日二度もアリスに命を助けられるとは思ってなかったのだろうかなり驚いた表情でアリスを見つめていた。


「なんで……ていうか頭から血が!」

「いやー、雪みたいな美少女を易々と見殺し何てできませんて。あ、頭は気にせんでいいっすよ?ちょっとふらつくけど。……それより」


 アリスが立ち上がるとファナカスの方を向く。


「アリスだったか。死ぬかもしれんのに勇敢に友を助けるのは凄い事じゃ」

「そりゃあ主人公として当たり前だろ?でもさあこちとらあんたと戦いたく……おあ!」


 アリスが喋っている途中だったのにも関わらずファナカスはアリスに向けて魔法を放った。


 何とかアリスもシールドで防ぐが、いつもより魔素の消費が激しいと体感で感じる。


(……闇の魔法と戦うとここまで魔素消費するんか!?……戦い方考えないと……ていうかそれより)


「ちょっと!話してる最中でしょうが!」

「途中で攻撃してはいけないという規則は無かろう?」

「確かにそうですけども!」


(でもゲームだと会話パートは基本攻撃することは無いでしょうが!)


「そうか……アリス……やはり面白い」

「あ?」

「おぬしに会えたこともある程度その力が分かったことも今日の目的としては十分じゃが……特別にわらわの力……少し見せようかの」

「あ……えっと……遠慮しま……」

「まあまあ、闇の女王の魔法をその身をもって体感できるんじゃ……主人公として名誉なことだと思わんか?」

「思いませんけども!」


(ていうか……ファナカスって400年前の人間だよな?なんで主人公って言葉知ってるんだ?)


 ファナカスが杖を空中に向ける。


 すると数個の魔法が生成されると形を変え、回転する尖った黒い鉱石のようなものに変わると一斉にアリスに向けて飛ぶように先端を向けた。


(おいおい!魔法が変形するのは存じ上げておりますけども!へー!魔法って同時にあんな同時に出せるんですね!つくづく師匠と同じでチートすぎません!?っていうか先手必勝……いや絶対に無理だ)


 アリスがふと横を見るとシールド反動からやっと抜け出した西宮が体を引きずりながら廊下に出るのが確認できた。


(西宮が逃げてる……なら……どうにかしてこの場を切り抜けた方が……)


 そう思ったのもつかの間ファナカスが生成した魔法の一つの照準が西宮に変わった。


(ですよねー、そううまくは行きませんよねー!)


 ファナカスが杖を振り下ろした。


 すると計十本ほどの鉱石となった魔法がアリスに向けて飛んでいく。


「アリス!」

「ああ、もうやってやろうじゃねえか!うお!」


 最悪、魔素による消滅をしようと一瞬考えたが、そもそもすべての魔法が同時に飛んできたのであきらめた。


 ドスドスドスドス!


 次々とアリスが展開したシールドに突き刺さっていく鉱石。


(おいおいおい!なんで弾かねえの!?ちょー刺さってるんでけど!)


 正確に言えばシールドに衝突した魔法の表面だけ少し削れ、その後何本もの魔法の衝突でシールドが摩耗した結果突き刺さったのだ。


 すべての魔法がシールドに刺さった瞬間だった。


 グシャ―ン!


 突き刺さった魔法は周りを破壊させようとするかのように一気に棘が伸びるとシールドにひびが入る。


(あー、これは……終わった)


 パリ―ン!


 シールドが破壊された。


「ああああああ!」


 シールドが破壊された反動の痺れが体を襲う。


「やっべ……は?」


 反動で膝をついたアリスは驚愕した。


 ファナカスが次に撃とうと生成した魔法を闇の魔法ではなく、本来アリスのような一般人のみが使える普通の攻撃魔法だったからだ。


(ファナカスって闇の魔法使いだよな?なんで普通の魔法が使え)


 ドーン!


「ぐッ!」


 ファナカスから放たれた風魔法がアリスを直撃し、吹き飛ぶとそのまま講堂からはじき出され廊下の壁に激突する。


「があ!」


 そして……。


 ドスドスドスドス!


「ぐッ!うっ!うっ!おっ!」


 何かの魔法を合わせたものだろうか……氷の結晶が飛んでくるとアリスの四肢の付け根に突き刺さり固定されたが、瞬時に溶けるように無くなるとグシャ!という音と共に地面に崩れ落ちた。


 激痛と頭の怪我によりアリスは気絶した。


「アリス!」

「アリイイイイイス!」


 その時近くまで来ていた龍がアリスの元に駆け寄り、ファナカスに杖を向ける。


「おお!龍か。おぬしの弟子は弱いながら肝は座っているようじゃ」

「ファナカス貴様あああ!」


 龍はアリスの体を西宮に預けると、刀を抜いて構え行動に入る。


 だがファナカスにもうこれ以上の戦闘の意思は無いように見えた。


「わらわはもう行く。用は済んだのでな。日本政府に伝えておけ、闇の勢力はしばらく日本に手を出さん。ここまで弱い国をせめても興が削がれるのでな。ではまたいつか相見えようぞ」

「待て!ファナカス!」


 龍が制止するのを無視してファナカス含めた三人は闇の粒子になり外へ飛んでいった。


「……くそ」

「アリス!」


 またもやファナカスを取り逃がしたことを悔やんだ龍よりもアリスに命を救ってもらった西宮がアリスを優しく抱きしめながら声を掛ける。


 アリスは四肢が辛うじて繋がっているが体中が血まみれで出血が止まらない。


 呼吸も小さくなっている。


 ———間に合うか……いや、間に合わせる。


 龍は拡張した袋にアリスを入れると、抱きかかえる。


「龍さん、大丈夫ですか?」

「こっちは任せろ。お前は……生徒会長だったか?ならまずは学校の事に集中しろ」

「……分かりました」


 西宮がアリスに申し訳なさそうな表情を向けるのを尻目に龍はすぐに箒に跨るとある場所へ向かった。


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