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ARA本社ビル脱出作戦 10

『いいかアリス。護衛戦……つまり人を護衛しながら戦場を脱出するのに戦闘を行うこと自体が本来はご法度だ。守り抜けばいいだけだからな、戦闘をする意味が無い。全力で戦闘を回避するのが最善手だ。だがどうしても戦闘を回避できない状況が存在するのも残念ながら事実だ。その場合どうするか、護衛対象を逃がすこと……または護衛対象を一時的に隠すこと、そうすれば自ずとお前と敵しかいない状況になる。そうすればお前の独壇場だろ?後は……好きに暴れればいい。ただし銃弾一発でも食らえば終わりだ、忘れるなよ?』


 師匠と違って久子師匠は適切に欲しいアドバイスをくれる……こういう気づかいを……いや師匠にそれを求めるのはよそう、今となっては無理な相談だ。


 幸い、雪がこいつらをここに引き留めてくれれば完全とは言えないがあたしとあいつらの一対多数の形に持ち込める。それにこっちに近寄って来るってことは自ずと接近戦になる……そうなればあたしの得意な形だ。


 一対多数の戦闘におけるセオリーもちゃんと久子師匠に教わっている。


 必要なのは事前情報だ。さっき一瞬だけだったけどあいつらの装備は何となく把握した。全員アサルトライフル……M4を持っていた。聞いた話じゃこの国の自衛隊は89式のハンドガードに杖を付けておりそれでシールドを展開しているらしいが、取り回しの問題だろうかついてはいなかった。


 腰にはハンドガンホルスター、仮想敵が銃を撃ってくる想定をしてなかったのかボディーアーマーは着けておらずマガジンを入れるようにチェストリグを付けていた。これならゴム弾でもある程度ダメージが入るはずだ。


角に体を寄せると歩いてくる敵の足音に耳を澄ませ距離を測る。


 まだ十メートルほどだろうか、準備の為にスタングレネードのピンを抜く。


 そして敵と角の距離がおよそ五メートルに近づいた瞬間、あたしはスタングレネードを投げた。


 カン!ガラガラガラ!


 小気味よい音と共にスタングレネードが通路を転がった。


 戦闘員の足音が音の正体を確かめるためか止まった。だが数秒後。


「しまっ!」


 バン!


 あ、雪に耳を塞げって言い忘れてた……ま、良いか!


 スタングレネードが炸裂し、数秒経った……今!


 あたしは銃と杖を持ち……飛び出した。


 つーか……弾一発でも終わり?安心してくださいよ!主人公補正を知らない?主人公は当たらんものですよ……ジョンウィックさんは食らってますけど。



「うがあああ!」

「くっそ!耳があああ!」


 よもや敵がスタングレネードなどというものを持っているなど想定してはいなかったのだろう、全員目と耳をやられてその場でのたうち回っている。


 その好機を見逃すはずがない。


 右手に持った杖を一度口に咥え右手をフリーにする。


「りゃあああ!」

「がっ!」


 そして縦横陣でこちらに向かっていたうちの右の戦闘員に対して飛び掛かると右手で相手の頭を押さえながら飛び膝蹴りをかました。もちろん右膝には魔素を展開しているのであたしにはダメージは入らない。


 スタングレネードで視界と聴覚を一時的に麻痺させた頭に膝蹴りは効くだろう。


 次だ。着地するとすぐさま銃を左に居た戦闘員に向けて構える。


 バンバンバン!


 胸部に二発、頭部付近に一発、一メートルちょっとの距離はあるが片手でも十分当たる距離だ。


「がっ!」


 全弾が命中し、スタングレネードの効果も相まってその場で痛みで身動きが出来ていない。だが足りない。完璧に無力化できてなければ意味が無い。必死に痛みを堪えている戦闘員に向かって右足で足を薙ぎ払うように蹴りだす。


 バタン!


 成す術もなく男は倒れた。


 バン!


 止めを刺すように頭部に一発発射した。


 これで二人。


「この野郎!」


 二列目、右側に居た男があたしに向けて銃を向けた。だがその目は開いているように見えない。恐らく今撃った銃声を頼りに撃つつもりだろう。


 そうはいかない。


 即座に右手に杖を取ると銃と一緒に構え、突進する。


 バンバンバンバン。


 何発かの銃弾が発射されるが男は気づいているのかいないのか定かではないがあたしに当たるであろう銃弾は全てシールドで防がれた。


 ガチン!


 相手に零距離まで近づくと右手で銃を左側に反らし左手の銃を腹部に向ける。


 バンバン!


「がっがっ」


 ボディーアーマーを付けていないせいでゴム弾だとしても強烈な痛みが襲っているだろう、男は持っていた銃を落としてしまった。だがここで終わると思っているのか?


 あたしが銃を上に……男のあごに向け発射しようとした。


 ガチャ。


 恐らく二列目の左、まだ何ひとつ手は出していない戦闘員だと思われるがこの十数秒間で目と耳が慣れてきたんだろう、銃を構えるような音がした。


 だが慌てることは無い。


 あたしは咄嗟に杖を男に押し付けながら左手で男を押しながら、銃を構えて今まさに撃とうとしている男に向けた。


 バンバンバンバン!


 自分の前に居るのは味方だと分かっているはずなんだけど、まさか分かっていないのか?耳は慣れてきたがまだ目が麻痺しているのか、分からないけど複数の弾丸が無慈悲にあたしが持っている男の体に当たって行った。


「ぎゃあああ!」


 ボディーアーマーを着けていないせいで全弾が男の体内に侵入していった。あたしは杖を押し付けていたおかげで貫通するだろう弾丸に当たる心配はないのだが。


「……おりゃあああ!」


 バンバンバン!


 男の脇から銃を構えると数発発射する。


「ぐっ!」


 ボディーアーマーも杖も構えていない男は全弾が命中し痛みに悶えたがもう遅い。


「おりゃ!」


 あたしは持っていたすでに数発の鉛玉を食らって脱力している男の体を悶えている男に投げつける。これは……あたしが殺した事には……ならんな!うん!


「おあっ!」


 いきなり投げつけられた男は何が起きているのか分からずそのままもうぐったりしている男を抱きかかえていた。


 そしてあたしは杖を向ける。


「ディロクステ《雷よ飛べ》」


 杖から電撃が飛び出すと銃弾を至近距離で浴びてもう瀕死かお陀仏か分からない男に着弾する。だがその電撃はその男の体を持っていた戦闘員にまで感電した。


「ぎゃあああ!」


 一応死なないように魔素量は抑えてはあるが、多数の銃弾を食らった男の方はもう無理だろう……いや、あたしが撃ったわけじゃないし……ノーカンです。


 そして電撃を食らった男はその場で気絶した。


 これで……四人!……四人?……あと一人足りねえ!何処だ!?


 ビュン!


 その時、あたしに向けて火の魔法が飛んでくる。


「うおっ!」


 寸でのところでシールドを展開、魔法を防ぐことに成功した。


 そしてすぐさま銃と杖を構え直し魔法が飛んできた方角を見た。そこに居たのはアサルトライフルがあるのにも関わらず何故か杖を構えていた戦闘員だった。


 男はにやりと笑う。


「兄ちゃん、そこまでの魔法を駆使した戦闘術……ステア出身だな?」

「……」


 兄ちゃん……周りを見回してみるがあたし以外に魔法を使った男性らしき人は居ない。


「兄ちゃんだよ、今基礎魔法使ったろ?」


 もしかして……あたしの事か?自分に対して指を指してみる。


「そうだよ」

「……あたしは……女だ!」

「……それは済まんかった!お嬢ちゃんだったかあ、それにしても嬢ちゃんステア出身なのは間違いないだろ?そこまでの戦闘術……花組か?」

「よくご存じで」

「そりゃあな、俺もステア出身だし」


 こいつは驚いた。もしかして今銃を撃たなかったのって、あたしがステア出身かを確かめるためか?なんの意味があるんですか?今あたし四人倒しきって結構油断してたのに魔法じゃなくて銃だったら確実に仕留めてましたよね?……多分防いでたけど。


「俺もステアの花組出身なんだよ。その後自衛隊に入ってな、まあ……その後上官ぶん殴っちまって強制除隊になっちまったけど」

「はあ」

「たださ、自衛隊に入ってからも抜けてからも一つ心残りがあったんだよ。実戦での魔法戦闘って奴だ」


 なるほど。あたしの場合ステアを卒業してまだ数か月だけど基礎魔法を使う場面って今日の作戦以外だとほぼ使う場面ねえな。まあそれでもあたしは意識的に魔法使ってないんだけども。


「それでよう、どうだ?やってみたいんだよ、試合じゃなくて実戦での身代わりを使わない魔法戦闘を、でも俺の周りの隊員は皆自衛官を辞めた奴や警察官を辞めた奴が多いんだけどさステア出身がほぼいないからよ、魔法戦闘が出来ねえのよ。どうだい?やるかい?」


 何故わざわざ銃撃ではなく魔法オンリーにするんだ?分からん。だけど……良いでしょう!あたしも実戦での魔法戦闘はやってみたかった!


「別にいいっすけど……自信あるんすか?」

「んー?そりゃあそうよ、一応魔法戦闘の授業じゃあ常に上位に居たんだからな」


 ほう?なら良いだろう。別に言う必要はないから言わんけど、あたしはステアで無敗伝説を作った霞サチに唯一黒星を付けた女でっせ?負ける気起きんなあ。


「公平にやるために銃を外そうぜ?俺も外すからよ」


 そういうと男はアサルトライフル、ハンドガンをマガジンを抜き、チャンバーの弾をアンロードして床に置いた。そしてナイフを取ると後方に投げ、さあお前もというように杖を握り構えた。


 相手がここまでしているのだ。やらない理由はない。


 銃のマガジンを抜き、チャンバークリア、後方に滑らすように放った。そして腰に差していたナイフを抜くと男と同じように後方に投げて杖を構えた。


「おし!じゃあコイントスと行こうか。あ、別にこれは試合じゃねえんだから正々堂々とか考えなくていいからな?」

「了」


 ピン!


 男が左手でコインを打ち上げた。


 規則正しく回転するコインは天井すれすれまで打ち上がると何とかの法則で規則正しく落下していく。


 正々堂々は考えない。このコインはあの男が持っていたものだ。何か細工をしている可能性もあるがあくまでタイミングの問題だろう。だがここまで来ればタイミングは関係ない、魔法ならなおさらだ。


 床に落ちる数秒前、ちょうどコインがあたしと男の目線の前に通過してきたとき、男が動いた。


 ビュン!


 あたしがコインの動きを注視しているだろうと踏んでの事だろう、火の魔法を放ち突進してきた。


「ネフスエクソフィーラ《守護霊よ出でよ》!」


 突進と同時に守護霊の呪文を発動し現れた水のオオカミが男と通路の端で距離を取りながら速度を合わせて突進してくる。本来ステアの授業じゃあレギュレーション違反だ。だが、これは実戦、問題ない。


 つーかオオカミかわいい!……水のオオカミ触ったらどんな感触何だろう!触ってみてえ!……ああうん、それどころじゃないですね。


 ていうかあいつ……あたしと同じ接近戦が得意なのか?なら好都合だ。距離を取って来るよりは大分戦いやすい。


 飛んでくる火の魔法を魔素で無効化するが、あたしはあえて近寄らずその場に留まり続けた。


「はっ!なんだ?攻撃する気が無いのか?それとも俺と同じで接近戦がご所望か?」


 その通りだ。


 男はあたしに攻撃させないためか次々と火の魔法を放ってくるがさすがにこの量を無効化すると魔素が無くなるし、今後の行動に差し支える、だからシールドである程度防ぐことにした。


 バン!バン!バン!


 次々にシールドに魔法が着弾するが、相手の迫って来る速度を見ればシールド張り直すのは一回程度で十分だろう。


 相手との距離が二、三メートルまで近づいた時、オオカミが突如壁を走り出しだしたかと思うとあたしに飛び掛かってきた。


 それと同時に男がオオカミがあたしに接触するタイミングに合わせて火の魔法が着弾するように杖の先に生成しされた。


 さて……この場合、正面にシールドを構えればシールドの端で何とか防ぐ……いや相手はそれを読んでいるだろうし飛んでいるオオカミはともかく男の魔法は杖の先に展開されているだけで放たれていない、シールドの範囲外まで避けてから打ってくるかぶつけてくるだろう。


 この状況に至るまで何もしなかった時点で負け……そう、本来なら。


 あたしは違う。少し微笑んでしまった。


 躊躇することなく魔素球を展開し、オオカミにぶつけた。本来守護霊は第三魔法だが使用魔素量は第一魔法並み、だがその耐久も第一魔法並みだ。物理攻撃が一切効かない点、主人の命令に意思を持って絶対服従という第一魔法にしては性質が異なりすぎている点で第三魔法に属してはいるが第一魔法があれば十分対処ができる。


 魔素球を食らったオオカミはすぐに魔素となり弾けた。


「もらったあああ!」


 男の自信満々の叫びと共に火の魔法が顔面一メートルまで迫る。だがもうこいつの負けは確定した。


 勝負において相手を油断させる方法はいくつもあるとは思うが、その中で確実なものがある、それは相手に勝利を確信させることだ。勝利を確信した人間は早くその勝利を手に入れたくなり本来考えるべき予測不能な事態……つまり所謂イレギュラーを思考回路から外してしまう。つまり……こうなるのだ。


 あたしは迫る火の魔法に左手を広げて向けた。


「はあ!?それで魔法が防げるのかよ!馬鹿め!」


 男は迷わず火の魔法をぶつけてくる。


 さて……ここで一つ皆が思っている疑問について話しておこう。あたしは今まで水の魔法や魔素球を魔素格闘術で無効化してきたが、いかにも熱そうな火の魔法、触れただけで感電しそうな電撃の魔法は触れても問題ないのかという点だ。


 結論から言うと……問題ない。色々試しまくった結果触れる瞬間、触れる部位に魔素を展開、つまりコーティングすれば熱さも触れられた感触も無い……ただ物を掴んだり触った時の抵抗感はある。


 火の魔法に対して左の掌全体に魔素を展開して触れた……その瞬間。


 フッ。


 火の魔法は無効化され、ほとんど音も生じることも無く魔素となり霧散した。


「なっ!はあああ!」


 男は予想外の事態に動きを止めた。そりゃあそうだ、もう魔法を防ぐ手段は無かったはずなのに左手で何かしたかと思えばいきなり魔法が霧散したのだから。


「……」

『戦いの最中は無表情か、狂ったような笑顔であれ。それが一番敵の恐怖をあおることになる』


 久子師匠に教わったように。あたしなりの狂ったような笑顔で魔素球を展開すると男に対してぶつけるように突き出した。


 バン!


 さすがステア出身だ。この状況でも防御は忘れていなかった。男は杖を向けるとシールドを展開、あたしの魔素球を防ぎ始めた。


「くっ!くっそ!なん……なんで!」


 シールドで防ぎながら今起きた事を理解しようとしているのだろう。


 だがもう遅い。


 もう一度左の掌に魔素を展開すると、シールドに触れて上から下へ撫でた。


 スーッ。


 サチとの対戦の時のようにシールドは音を立てて割れるようにではなく雪に水を掛けて音もなく溶かすように魔素となり霧散していく。


「……っ?」


 もはや何が起きているのか理解が追い付かない様子だが、シールドが自発的ではない方法でなくなるのを見て慌てて再展開しようとする……が全て遅かった。


「……ああああああ!」


 サチと同じだ。割れようが解けようがシールドは破壊された……それによって生じた反動による痺れで男は絶叫し、その場に崩れ倒れた。



「ふー!終わり終わり!」


 戦いが終わったと確信したあたしは投げた後床に突き刺さっていたナイフを回収し、銃とマガジンを回収するとアンロードした弾を丁寧にマガジンに入れ直し銃に装填しスライドを引いた。


「なあ……嬢ちゃん」

「ん?」


 まだ痺れが取れていない男が地面に寝ながら喋りかけてくる。


「何でしょ?」

「その……俺の魔法を無効化した奴、ステアで習うのか?俺がいた時はそんなの習った記憶ないんだが」

「そうだろうね、これはあたしがステアを休学してまである人の所で修行して身に着いた技だから」

「……ははは!そうか!なら敵わねえわけだ!」


 だがもし、あの時修行してない状態でここまで来ていたら……互角、あるいは死んでいたかもしれない。つくづく久子師匠には感謝しかない。


「所で、何で止めを刺さねえんだ?」

「ある人との約束でね。あたしは一生人を殺すことは無いよ。それに必要性を感じないし」

「そっか……なら俺に勝ったご褒美をやろう。このビルは……」

「爆破されるんでしょ?あと……あ、ちょうど一時間か」

「なんだ知ってるのか」

「知らなかったらここまで急いでないよ」

「そうか……ならもう一つ……これは独り言だ。正面玄関に6人、地下駐車場に4人だ。配置が換わってなければな」

「ありがとさん」

「最後に一つ良いか?」

「なに?」

「冥途の土産って奴だ。俺を倒した……嬢ちゃんの名前を教えてくれるかい?」

「おいおい、名前聞きたいならまずは名乗ってくんない?常識だろ?」

「ははは!そりゃあすまねえ!俺は荒垣……荒垣信也だ」

「アリス……識人だから苗字は無いよ、強いて言うなら……神報者付の……神報者の弟子のアリス」


 荒垣の表情が今日一番の驚愕という表情に変わった。


「なんだ……あんたが噂に聞く神報者の弟子か!あははは!俺は……神報者の弟子と戦ってたのか!こりゃあ良い土産話になる!」

「そりゃあどうも」

「アリス!」


 背後から戦いを終えたのを確認した雪が皆を引き連れゆっくりこちらに来た。


「終わったよ」

「そのようね。それにしても……強くなったようね」

「そりゃあ!そのために修行してましたから!」

「何を喋っていたのかは知らないけど銃を置いた時は焦ったわよ。でもあなた魔法戦闘でも強くなったんじゃない?」

「ん?あー!そうか雪はあの時いなかったからか!」

「何の話?」

「あたしゃあステアで魔法戦闘無敗伝説を残したサチに唯一黒星付けた女よ?負けるなんて毛ほども思ってなかったさ」


 ステア出身でありサチの事を知っている雪は驚き表情を見せた。だが雪はそもそもそれどころでは無かったはずだし学校に居たかすら不明なのだ、この情報を聞いて驚くのも無理はない。


「ずるい手は」

「ちゃんとレギュレーションに範囲内ですよ。と言っても卒業試験での特別試合だしレギュレーションは一年の時のトーナメントと同じだけどね」

「それでも勝ったのね?」

「そう」

「なら良いわ。ちゃっちゃと行きましょう。時間ないんだし」

「おうよ。美優行くよ」

「はい」


 あたしは勝利の余韻にもう少し浸りたかったが、今いるビルが爆破されるまで時間がない以上、そんなことをしている暇はないので銃と杖を構え直し一度気を引き締めて下に向かう階段に向かって歩き始めた。


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