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神?との邂逅編 廃村探索 14

「……これで……四つ目!」


 約2時間後、千明ちゃんの案内の元、あたしたちは石碑の下へたどり着くと、石碑を倒し、火をともした。


 ……だけど、四つ全部を灯したのに何も起きなかった。本家なら四つ全部灯せば魂?見たいのが空に上がるのが見えるはずなんだけど……おかしな。なんかやってないギミックがあったか?でも本家だとこれで全部のはず……これ以上は分からんよ?


「……何も起きませんね」

「……でもまあ、一応全部つけましたし……条件はクリアしたはずです」

「なら次は?」

「一旦、家に戻りましょうか」

「え?」

「このまま祭壇に向かっても良いんですけど。忠男さんには千明ちゃんを迎えに行きますと言ってますから。とりあえず家に戻りましょう」

「……分かりました」


 確かに忠男さんはあくまで祭壇への道案内だ。それに今回の攻略で修道女……比丘だったっけ?そいつを撃たれるのはまずい。でも道を知ってる人が三人、化け物に襲われたとはいえ、帰宅時間が遅くなるのはもっとまずい。忠男さんは四方田さん以外に頼りになる唯一の戦力だ。信頼関係を築くのは当然である。


「さて、一旦家に……」

「キィィィィィィ」

「キィィィィィィ」

「おっと……時間が経ちすぎてたか」


 そういえば、ここの屍人は生きてる人間を躊躇なく追ってくるんだった。あいつらが追い込み漁みたいな戦術を使うとは思えないけど、あたしたちは石碑を見つけては倒して灯を灯すを繰り返してたんだ、追いかけてきたんなら追いつくか。


「さて……道は……」

「分かります」

「さっすが!でも……」


 四方田さんが指さす道は細く、しかも屍人によって封鎖されている。


 ……まあ、銃弾は豊富にある。何人来ようが、全員倒すのみだ。


「さて……化け物退治に……」


 ……スッ。


「え?高川先生?」


 高川先生が突然、あたしたちの前に出ると、持っていたのかライターを片手に屍人たちに対峙した。


「あたしが時間を稼ぎます!少し遠回りになりますが、千明ちゃんを連れてお父さんの下へ!」


 ……なるほど、前回と同じパターンか。……だけど今回は前回と状況が何もかもが違う、みすみす非戦闘員を囮に使う必要はない。


「高川先生」

「はい」

「そんなことをする必要はありません」

「え?でも……あいつらはずっと追いかけてきます!なら少しでも時間を稼いでおかないと!」

「だから貴方がここで死ぬと?」

「……さっきあなた方は言いましたよね?この化け物たちの親玉を倒すって。ってことは、少しでも銃弾を節約する必要がある。その手助けになれるんなら……命など!」

「はぁ……あのさあ!死んで千明ちゃんを守った……そりゃあんたからすれば千明ちゃんは生きてるから目的達成だろうよ!でもなあ!生き残った千明ちゃんからすればあんたには二度と会えなくなるってことなんだぞ!?残された人間の気持ちを考えたうえでの決断か!?」

「……」


 何かとんでもない大きさのブーメランが刺さってる気がする。


「いいか!あんたにどんな過去があるか知らんし、なんでそこまでこの子に執着するのかもどうでも良い!でもなあ!生きてる人にとっては二度と会えない、見守ってくれているかも分からん人よりもいつでも声が聴ける、会って他愛もない話が出来る存在の方が何十倍も重要なんだよ!分かるか!?それになあ!」

「……はい」

「キィィィィィィ」

「アリスさん!屍人が!」

「うるせえええ!今喋ってんだろうが!空気読めやあああ!」


 バン!バン!


「キィィィィィィ」


 邪魔をした屍人は腹部と頭部を打ち抜かれてうずくまった。


「はぁ……はぁ……高川先生、弾の節約?言っておきますが、別にあたしたちは親玉をこの銃で倒そうとは思ってませんよ」

「え?」

「ていうか、あたしの予想が正しければそいつは銃では倒せない。だからこの石碑を倒して灯をともしてるんです」

「え?はぁ……」

「先生、私からあなたにお願いするのは千明ちゃんの傍に居て一緒に生き残ること、千明ちゃんがお父さん以外に心から信頼を寄せるあなたが生き残ることです。邪魔するものはあたしたちが随時排除していきます。あなたが死ぬ必要は無い、分かりました?」

「……分かりました」

「アリスさん、次が来ました」

「了解っす。三穂さん、私が突っ込むのでここから出来る限りの援護を」

「了解」


 ……ダッ!


 細い道の屍人たちを視認すると、そいつらに向けてダッシュした。


「キィィィィィィ」

「キィィィィィィ」


 屍人たちはあたしを視認すると、雄叫びを上げてあたしにターゲティングしたようで持っている農具を構えた。


「だーかーらー!うるっせえんだって!」


 ビュン!ドン!バン!バン!


 一人目の屍人、振り下ろされる鉈を避けると、右手で一発二人目の屍人を蹴り、距離を取らせると、一人目の屍人の脳天に銃弾を一発、よろけた二人目の屍人の脳天に一発銃弾をぶち込んだ。


「キィィィィィィ」


 遅れて来た屍人はあたしに掴みかかろうとする。


「おいおい、あたしに格闘かい?舐められたもんだ」


 ガシッ!ドン!バン!


 あたしは掴みかかって来る腕を掴むと合気道の要領で投げると、地面に横たわった屍人の脳天に一発撃ち込んだ。


 ……とりあえず、終了。


「……すごい」


 感嘆の声を上げながら近づいてくる面々。


「アリスさん」

「なんすか?」

「隊長が『アリスちゃんには絶対に実弾を使わせないから』とは言ってましたが、理由がわかりました。少なくとも近接戦闘術に関してはアリスさんは私以上ですし、実弾を持たせたくない理由も分かった気がします。ていうか今の戦いで私は一発も撃ってません」

「そりゃどうも……あれ?でも今思いっきり実弾使ってますが!?それも三穂さんの銃ですが!?」

「でも今に至るまで人を撃ちました?撃ったとしても屍人でしょ?」

「そうですね」

「屍人ではあれば化け物判定で問題無いと私は思います。もしこの先、人を撃つ必要があるなら私が撃ちます、どんな状況であろうが。隊長の言う『人を殺さない神報者』というものを私は見てみたいですし、そんな人に私は仕えたい」

「……分かりました」

「では行きましょうか」


 今度は四方田さんが先陣を切って四方田家に向かい始めた。


 ……やっぱり龍炎部隊の人たちは頼もしい。


 あたしはそう思いながら四方田さんの後を追って家に向かい始めた。



「……前回とはルートも展開も違うし、かかった時間も違うんだけども……やっぱこうなるのね」


 学校を脱出してどれくらいの時間が掛かったのか定かではない。というか急いで石碑を見つけては火を灯していたから時間を測る暇すらなかった。


 でもせいぜい四時間……くらいしか経ってないはず……何だけども。


 やはり四方田家は巨大な違法建築の一部になっていた。


「どうします?」

「うーん……ここからアドリブってのもなあ……堕慈子と戦う間、千明ちゃんが無防備になるのも避けたいから忠男さんと合流したいし、一応家で待ちましょうか」

「分かりました」


 前回同様、まずは四方田さんが家に入り、クリアリングを開始した。前回と同じならまだ敵は居ないはずだ。というか前回家に屍人が来たのはあたしたちに反応したから……と考えればまだいないのもうなずけるし、これからここが襲われるのも納得だ。


「クリアです!」

「了解」

「くりあってなーに?」

「家の中にあの化け物が居ないってことだよ。じゃあ入ります」


 家の中に入ったあたしたちは各々くつろぎ始めた。千明ちゃんは前回同様、ランドセルを置くと居間で何やら宿題?のようなものを開始する。


 四方田さんの場合、この家が襲撃されるのは確実なので一旦弾薬の補充を開始した。


「あ……千明ちゃんお腹空いてる?お父さんが料理作っておいてくれるから先に食べちゃおうか!」

「うん!お腹空いた!」


 高川先生が台所から料理を持ってくる。


「アリスさん……もいかがですか?」

「あー……後でいただきます」


 そういうとあたしは少し離れた位置に座ると、一呼吸おき、休憩することにした。


「アリスさん、食べないんですか?」

「え?ああ……四方田さんってよもつへぐいって知ってます?」

「よもつ……名前だけなら」

「生きた人が黄泉……つまり死者の国の食べ物を食べると元の世界に戻れなくなる……っていう伝説?みたいなものです」

「……つまり、あの料理が?」

「あの料理自体が問題では無く、この世界は過去……というよりあの堕慈子が作った世界です。外から持ち込まれた私のお菓子ならあれですけど、この世界で作られた物を食べていいものかと」

「……確かに、だとすれば私たちは……」

「お菓子で……我慢しましょう。帰って好きなだけ食べりゃあいいんです」

「分かりました」


 というわけであたしと四方田さんは前回同様、あたしが持っていたお菓子を食べることにした。でも料理を断ってお菓子を食べる様子を見られると言い訳に困るので隠れて食べることにした。


 ……あたしたちは災害派遣された自衛官か!


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