シアルは、曖昧な答えでは納得しなかった。
「多分じゃ駄目だっ!」
その叫びは、怒っているというよりは必死で真実を知ろうとしている様子が感じられる。
リオの肩を掴むシアルの手は震えていた。
それは怖れではなく、身体の痛みによるもの。
覚醒直後のリオの【力】に吹き飛ばされたシアルは、骨折しなかったのが奇跡なくらいの全身打撲で、立っているのがやっとの状態だった。
そんなシアルの大きな青い宝石の様な瞳に睨まれ、返答に困ったリオは無言でその目を見つめる。
「……頼む……答えてくれ……」
シアルの蒼い瞳が潤む。
(……あの時と同じだ……)
リオの脳裏に、地割れの側へ追い詰められた時の情景が浮かぶ。
―――…「彼は大いなる力を持っていた」…―――
そう言ったあの時も、シアルは泣きそうな顔をしていた。
リュシアに命を救われ、養い子となった少年。
もしかすると、彼が最もリュシアの帰りを待ち望んでいたのかもしれない。
だからこそ、こちらの人間には魔物の様に見えるリオが、リュシアの名で呼ばれるのを聞いた途端、怒って攻撃してきたのだろう。
そして今は、動くのがつらい状態なのに、無理に起き上がって問いかけてくる。
そんなシアルを見ているうちに、リオの中に何か温かい気持ちが芽生え始めた。
自分の感情とは別に、シアルを慈しむ心がある。
リオは慎重に言葉を紡いだ。
「……僕は、エレアヌに【リュシア】と呼ばれた時から、自分の中で何かが目覚めたのを感じた……」
真っ直ぐに相手の目を見つめ、リオは自分でも意外なほど穏やかな声で言う。
「正直言うと、僕は自分が
リオの黒い瞳が、瑠璃色に変わる。
「……それから、この神殿……僕はずっと前から、夢で見て知っていた……」
「!」
シアルが息を飲んだ。
リオの両肩を掴んだ手から、力が抜けてゆく。
「輪廻転生が本当に起こるのなら……そして、君が信じるなら……」
黒髪が、青銀色に変わる。
「……俺は……リュシアの生まれ変わりだ……」
十五歳の少年の声が、低く深みのある青年の声に変化した。
それは、シアルがよく知っている、会いたかった人の声だった。
全身の力が抜けて倒れ込んできた少年を、リオはしっかりと抱き留めた。
その表情は子供っぽさの抜けない高校生のものではなく、幼子を見つめる保護者の様な優しさが浮かんでいた。
―――それより少し前。
ラーナ神殿の人々は見張りの塔に群がり、荒れ地に一本だけ存在する大木の方角を見ていた。
「見ろ、空が青いぞ!」
「大気が浄化されたんだ!」
人々は口々に叫ぶ。
サファイアブルーの髪の若者も、ただ呆然と遠くの空を見上げている。
「こんな力を持つのは、若長だけだ」
「では、あの黒い髪の少年は本当に?」
白き民達は顔を見合わせた。
どの顔も、驚きを隠せずにいる。
「リュシア様の、
自分の髪より明るい青色の空を凝視しながら、若者はポツリと呟いた。