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第9話 ダイゴくんを囲んでパーティーをする

心地いい風が吹くころ。

ダイゴくんと親御様たちは車に乗って、

おばあ様のお家にやってきました。

おばあ様のお家にお庭にはいろいろな準備がなされていて、

飛び交う言葉から、バーベキューという単語があり、

それをするということが大体わかりました。

おばあ様のお家に、続々と車がやってきて、

何人も人が降りてきます。

皆様ダイゴくんを見ますと、笑顔になります。

親御様のご対応に見るに、御親戚の方々なのでしょう。

皆様いろいろなものを持ってきました。


バーベキューというものは、

炭の火でいろいろなものを焼いて食べるものであるようです。

肉の焦げる匂いがします。

魚を焼く匂いもわかります。

ダイゴくんはまだこのようなものは食べられませんので、

お母様からミルクをいただきますが、

おいしそうな匂いを嗅いでいますと、

あっちが食べたいとダイゴくんは思います。

そうですね、皆様美味しそうに食べられていますものね。

ダイゴくんが成長しましたら、たくさんいただきましょう。

大丈夫です。皆様それまで待っていてくださいます。

ダイゴくんには、一歳の誕生日をお祝いするケーキが出ました。

何か意味があるのだと聞きましたが、

ダイゴくんはケーキに手を突っ込んで、

ケーキをめちゃくちゃにしてしまいます。

お母様が、ヨーグルトを使ったケーキであると言っているのが聞こえました。

ダイゴくんがめちゃくちゃにすること前提のケーキであるようです。

ダイゴくんの顔はケーキでめちゃくちゃになりました。

それでも楽しくて仕方ありません。


ダイゴくんはおばあ様に手を取ってもらい、

お庭を踏みしめて歩きます。

お庭は芝生でチクチクしますが、

お父様とお母様の準備した靴を履きますと、

チクチクが全然気にならずにダイゴくんは歩けます。

おばあ様に両手を取ってもらって、

ダイゴくんは上手に歩きます。

手を取ってもらわずに歩けるようになるのも、

もうすぐかもしれません。

この大地をしっかりと歩けるダイゴくんになるのも、

そう遠いことではないでしょう。


バーベキューがひと段落ついて、

おばあ様のお家にみんなで入りました。

今度は、ダイゴくんに何やら服が着せられました。

皆様笑顔でダイゴくんを見られています。

最近覚えたのですが、小さな板のようなものは、

何かを記録するようなものであるようです。

スマホというものらしいと会話で聞きました。

皆様スマホを向けられています。

きっとダイゴくんを何かの形で記録なされているのかもしれません。

どんなものかはわかりませんが、この世界の常識なのでしょうし、

私とダイゴくんも、そのうち覚えることでしょう。

皆様の会話から、ダイゴくんが初セックというものであると聞きました。

セックというものがよくわかりませんが、

何かのお祝い事で、初めてのもののようです。

頭に何かかかぶせられましたが、

ダイゴくんは嫌がって取ってしまいます。

私はしげしげとダイゴくんの服や取ってしまったものなどを見ます。

これは、勇者の装備なのではないでしょうか。

勇敢な勇者の装備なのかもしれません。

ダイゴくんはまだ幼いから、将来勇者となるための準備として、

初セックという時に、勇者の装備の小さなものを着せられているのかもしれません。

取ってしまったそれは兜のようでもありますし、

ダイゴくんには剣のようなものも持たされます。

フワフワですが確かに剣です。

勇者ダイゴくんをみんなが笑顔で記録します。


そのあと、ダイゴくんに何か大きなものを包んだものが装備されました。

匂いから察するに、パンのようです。

皆様の言葉に、イッショウパンという言葉がありました。

一生というものかと思いましたが、

イッショウという何かの単位というのが正確なようです。

おそらく、一生とイッショウという、その単位をかけていて、

食べ物であるようですから、

一生食べるのに困らないようにという願いがあるのでしょう。

ダイゴくんはその背に大きなパンを持たされて、転びます。

とても大きなパンですので、転ぶのは当たり前です。

ダイゴくんでは持つこともできません。

しかし、これでダイゴくんは一生食べるのに困らない願掛けになったとのことです。

空腹で苦しまないで欲しいという、

皆様からの願いでもありますね。


さて、お父様が何やら準備を始めました。

床に、筆と、お金と、本と、ソロバンというものを置きます。

これは、オキナワの占いであると言います。

赤ちゃんがハイハイをして選んだものが、

その赤ちゃんの将来の職業であるとのことです。

ダイゴくんはちょっと距離を置かされて、

皆様が見守る中、ハイハイで将来を選びます。

選んだものはソロバンでした。

ダイゴくんが振るとカチャカチャなります。

おもちゃのような楽器のようなものです。

これは音楽家になるのかなと私は思いましたが、

ソロバンは商人の象徴であるらしく、

将来は商売人になるという占い結果であったようです。

こんなにいい音ならば吟遊詩人のようだと私は思ったのですが、

なるほど、占い結果はそうだったのですね。

また、筆は役人など、本は学者、

お金を選ぶと、一生お金に困らないという占い結果のようでした。

面白い占いがあるのですね。


今日はダイゴくんを囲んでいろいろなことをしました。

ダイゴくんに一歳の誕生日がもうすぐなのと、

初セックというものと、

いろいろなお祝い事をたくさんしました。

ダイゴくんはこんなにもたくさんの人に愛されています。

幸せになって欲しいと願われています。

一日中笑顔が皆様のあふれていました。

ダイゴくんを囲んでのパーティーは幸せそのものでした。

プレゼントのおもちゃでダイゴくんが夢中になって遊んだこともありました。

皆様がダイゴくんを見ながら談笑されたりしたこともありました。

今日という日はとても楽しくかけがえのない日でした。

あまりにも幼いダイゴくんは、

今日という日をイメージとしてしか覚えていないかもしれません。

それでも私は覚えていましょう。

ダイゴくんが皆様に愛されているという証明になるこの一日を。

皆様の中に今日のダイゴくんが記憶されるように、

ダイゴくんの中の私が全部覚えています。

皆様の愛を、私は覚え続けています。


こんなにも愛を感じたことがない。

私は毎日そんなことを感じています。

ダイゴくんは愛されることがお仕事です。

ダイゴくんの中で、私は無償の愛を感じ続けています。

心地よく、あたたかく、優しい、

限りのないほどの愛です。

この愛につつまれて、ダイゴくんは成長するのでしょう。

そして、たくさんの愛につつまれた、愛される勇者になるでしょう。

愛とは、こんなにも素晴らしいものであると、私は日々感じています。

ダイゴくんが愛のすばらしさを理解して言葉にするのは、

もうしばらくかかるかもしれません。

それでも私は覚え続けようと思うのです。

ひとつひとつの愛を、忘れることなく覚えていたいと思うのです。

それらの愛を、いずれダイゴくんに伝えられたらと思います。

ダイゴくんもその時には、きっと理解してくれるはずです。

これからもずっと、愛を感じて、ともに生きていけたらと思うのです。


ダイゴくんの勇者への道はまだまだ続きます。

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