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第11話 ダイゴくんは都会に行って試験を受ける

心地いい季節です。

たまに暑くなることもあり、

また、雨が降れば少し肌寒くもなります。

ダイゴくんの衣服はしっかり親御様たちが調節してくれていますので、

ダイゴくんも、ダイゴくんの中にいます私も、

暑過ぎ寒過ぎなどを感じたことがありません。

これもひとえに親御様の愛情のおかげなのだと思います。

ダイゴくんがその素晴らしさに気が付くのは、

まだまだ時間がかかると思いますが、

いずれお話ができるようになりましたら、

ありがとうと言ってくれると思います。


ダイゴくんはそんな季節に一歳になりました。

ホイクエンで毎日のように泥遊びをして、

泥んこになりながらはしゃいでいます。

泥の感触など汚いものと、

この世界に来る前までは思っていましたが、

ダイゴくんとともに感じる泥の感触は、

とても楽しいものです。

泥に触れますと、泥の感触や温度とともに、

感じることがたくさんあるような気がします。

未知に触れるというのは、とても刺激になるものです。

ダイゴくんはホイクエンで毎日泥んこになって、

先生に着替えさせてもらっています。

泥んこダイゴくんも、ピカピカきれいなダイゴくんも、

元気いっぱいのダイゴくんです。


ある日、ダイゴくんと親御さんたちがお出掛けすることになりました。

行き先はトウキョウというところであるようです。

オキナワとはまた別のところのようです。

デンシャというものに乗るようです。

クウコウとは違う大きな施設に来て、

デンシャという長いものに乗って、

トウキョウという場所を目指しました。

デンシャは空を飛びません。

デンシャはすごい速度で前へと進みます。

車よりもたくさんの人を乗せられるのかもしれません。

デンシャから見える風景は、飛ぶようです。

あっという間に風景が変わっていって休む暇もありません。

まるでテレビのようです。

ビュンビュン飛んでいく風景を見ながら、

デンシャはトウキョウに向かいます。


トウキョウに着きますと、

そこはとんでもない人の数でした。

私がダイゴくんのもとに来る前、

向こうでは王都というものがありました。

国を治める王がいる都というものです。

トウキョウは、その王都のようなところなのかもしれませんし、

また、とても都会の町であるのかもしれません。

さまざまの世代の人々が忙しくあっちへこっちへ。

デンシャもとてもたくさんです。

建物などもたくさんあって、それらはとても大きくて、

目が回るほどです。

ダイゴくんもたくさんの刺激を受けつつ、

初めて見るものに興味津々です。


また、デンシャをいくつか乗って、

ある施設に私たちはやって来ました。

何をする施設なのかはわかりません。

お父様とお母様の会話をお聞きするに、

オーディションというものを受けるようです。

私なりに会話から解釈しますと、

何かに選ばれるための試験であるようです。

オーディションというものを受けて、合格をしますと、

何かに選ばれるということであるようです。

私は閃きました。

それは勇者選定試験に違いありません。

なるほど、ならばこの大きな町のトウキョウに来たこともわかります。

多分、トウキョウは王都のようなところで、

王に認められた勇者を選ぶにふさわしい場所です。

このオーディションというものに合格しますと、

勇者候補になるに違いありません。

ダイゴくんの勇者への道は、ここまで来たのですね。

おそらく、親御様たちが、ダイゴくんの基本のことなどを、

試験官に送っていたに違いありません。

その情報を元に、ダイゴくんは王都トウキョウに来るように、

言われたに違いありません。

ダイゴくんがみんなに愛される勇者になるためには、

このオーディションという試験に合格することも必要です。

他の道もあるのかもしれませんが、

親御様たちがここまで作ってくれた道です。

試験に合格することで、

勇者への道を着実に歩むのもありです。

私はダイゴくんの中で、気合というものを入れた気分になります。

がんばりましょう。


オーディションには、

お子様たちや親御様たちが何人もいらっしゃいます。

おそらく勇者選定試験の、競争相手に違いありません。

また、このオーディションというもので、

複数の勇者候補生が出るのかもしれません。

その場合は、このお子様方の誰かと、

また、選ばれた際はダイゴくんも、

勇者を目指してともに高め合う仲になるのかもしれません。

私はダイゴくんの中で落ち着くようにと呼びかけましたが、

ダイゴくんはいつものように、はしゃいでいますし楽しげです。

これもまた平常心なのかもしれません。


ダイゴくんの順番が回ってきて、

親御様とダイゴくんにより、

ダイゴくんの良さが披露されました。

ダイゴくんは満面の笑顔を試験官らしい方々に披露して、

できる限りのことをしました。

ただ、魔法を使うとか、

腕力がどうとかなど、

勇者に必要な項目はなかったように思います。

私なりに考えたのですが、

試験官の方々は、勇者の素質を見ておられるのかもしれません。

試験に合格しましたら、

勇者候補生として、

勇者育成に参加ができるのかもしれません。

あくまでダイゴくんくらいの年齢は、

勇者としての素質を見るものなのかもしれません。

素質があれば、勇者としてこれから育成ができる。

そんな要素を見ているのかもしれません。

とにかくダイゴくんは精一杯アピールしました。

ダイゴくんはこれほど勇者にふさわしいのだと、

私も内側から呼びかけました。

呼びかけが届いたかはわかりませんが、

試験官の方々は何かを納得されたようでした。


トウキョウの町から、

ダイゴくんと親御様たちはデンシャに乗って帰ってきました。

ダイゴくんの良さを分かってくれれば、

きっと勇者への道が開けるはずだと私は思います。

親御様たちの会話からは、

ダイゴくんの一歳の記念として、

記念オーディションであるとのことでした。

よくわかりませんが、

もしかしたら、記念に受けるだけ受けてみて、

受かったらそれはそれでよしというものなのかもしれません。

それでも、ダイゴくんは精一杯アピールしました。

きっと、勇者への道がここから開かれるに違いありません。

親御様たちよりが思うよりももっと、

ダイゴくんは可能性と魅力に満ちています。

きっと勇者候補生になると私は思うのです。


しかし、オーディションにおいては、

勇者という言葉は一切ありませんでした。

多分ですけれど、

私の思い描く勇者という存在にあたるものが、

この世界においては、別の言葉になっている可能性があります。

私は勇者になることをダイゴくんに望んでいましたが、

この世界で勇者にあたるものというのは、

勇者とは言わずに、別の何かであるのかもしれません。

ただ、世界中の皆に愛される存在というものに、

なって欲しいと私は思うのです。

ダイゴくんは愛されてほしい。

ダイゴくんはいつも元気で笑っていてほしい。

世界中のみんなに幸せを望まれ、

また、みんなに幸せを届けられる存在になって欲しいと願うのです。

私の中ではそれが勇者なのです。

まだこちらの世界に来て、

ダイゴくんとともに過ごしてからほんのわずかの時間です。

これから勇者にあたる言葉を見つけることがあるのかもしれません。

それでも、私の中で、

ダイゴくんの目指す道は勇者への道です。

オーディション結果はしばらくわかりませんが、

どんな結果であろうとも、

ダイゴくんは勇者への道を歩んでほしいと思うのです。


ダイゴくんの勇者への道はまだまだ続きます。

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