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第12話 ダイゴくんは選ばれる

トウキョウに行ってからしばらく過ぎました。

ダイゴくんはホイクエンで過ごしつつ、

お家で毎日楽しく暮らしています。

ホイクエンはとてものびのび過ごせるところです。

たくさんのお子様たちが思い思いに過ごしていて、

ダイゴくんもそこで楽しく過ごしています。

お母様はもうすぐお仕事に戻るというお話なのですが、

そうなりますと、ホイクエンにいる時間がもっと長くなるのかもしれません。

ホイクエンが楽しいところであることはわかっています。

お母様もお父様もお仕事があることはわかっています。

ダイゴくんは状況をわかっていないかもしれませんが、

私などはダイゴくんが寂しいと感じないかが不安でもあります。

まだまだ幼いダイゴくんのそばにいられないことで、

お母様などはおつらい思いをされたかもしれません。

おつらい選択をせざるを得なかったことは、

胸が締め付けられるほどです。

私はダイゴくんの中にいますので、

お母様にお声をかけることはできませんが、

私がいます、大丈夫ですとお声掛けをしたいと思います。

声は届きませんが、

ダイゴくんが笑っていれば大丈夫と思ってくれはしないか、

そんなことを思ってしまいます。

お母様のお仕事復帰まであと少しです。

私はダイゴくんの中で、ダイゴくんとともに色々なことを楽しみつつ、

ダイゴくんが寂しくないように努めます。

日々過ごす日常が、

新鮮でとても鮮やかです。

生まれて一年程度のダイゴくんにとっては、

この世界はすべて新しいものと言っても過言ではありません。

たくさんの新しいもの、新しい刺激に囲まれて、

ダイゴくんはすくすくと成長していきます。


ダイゴくんはお家の猫さんたちと遊びます。

車のおもちゃに球を乗せるものがあるのですが、

その球をダイゴくんは投げてしまいます。

猫さんたちは球を追いかけて、あっちこっちの隙間に入れてしまいます。

球を投げることと、猫さんたちが遊ぶことと、

いろいろな要素が合わさって面白い遊びと覚えたのか、

ダイゴくんは球をどんどん投げてしまい、

猫さんたちが遊んだ挙句に隠してしまいます。

結局、車のおもちゃに乗せる球はほとんどなくなってしまいました。

お家のどこかにあるのでしょうが、

猫さんしか入れないようなところにあるのかもしれません。

楽しく遊べるのであれば、

おもちゃとしてはそれが正解なのでしょう。

遊んだうえで壊れるとしても、

おもちゃの役目を全うしたのではないかと思うのです。

役に立って、役目を全うするというのは、

素敵なことであると思うのです。

誰かに必要とされて、

誰かの役に立てて壊れたおもちゃは、

楽しい思い出を残しながら、その生を生き抜いたと思うのです。

まだおもちゃが壊れたわけではないのですが、

これからダイゴくんはたくさんのおもちゃに触れることでしょう。

大事にするかもしれませんし、

とても楽しく遊びすぎて壊してしまうかもしれません。

幼いダイゴくんのそばにおもちゃがこれからもあるでしょう。

それらのおもちゃは、

ダイゴくんの友のようなものであってほしいと思うのです。


さて、ある日。

お家に何かが届いたようです。

親御様たちが届いたものを確かめました。

何かを届けることを仕事にしているものが、

この世界にはあるようで、

ユウビンとかタッキュウビンとか、

そんなものがどうやら何かを届けるものであるらしいです。

この世界の文字はある程度覚えてきたのですが、

難しいものはまだ読めませんし、

この世界の仕組みもわからないことが多いです。

ダイゴくんとともに覚えていければと思います。

届いたものを親御様たちが確かめて、

ダイゴくんに語り掛けました。

ダイゴくんは選ばれたんだということでした。

私なりに記憶を探します。

どうやら、トウキョウに行った際のオーディションというもので、

ダイゴくんは選ばれたらしいです。

これは勇者への道の第一歩かと私は思いましたが、

オーディションで勇者という言葉が一切なかったので、

勇者とはまた別の何かに選ばれた可能性もあります。

笑顔を求められたり、

可愛らしいことを求められたりしたように思いますので、

愛される存在として選ばれたことは間違いがないように思います。

それは、私の目指す、愛される勇者であることと一致します。

ただ、私の思う勇者というものと、

この世界における愛される存在というものに対する言葉が、

違うものである可能性もあります。

前も思いましたが、

この世界には勇者にあたる言葉がないのかもしれません。

世界中の人に愛されるような勇者にあたるような言葉が、

この世界にはないのかもしれません。

とにかくダイゴくんは選ばれました。

勇者かどうかは、この世界でどういうのかはわかりませんが、

選ばれたことは間違いないようです。

ひとまずはおめでとうなのかもしれませんが、

ダイゴくんはよくわかっていないようです。

親御様たちもおめでとうと言われるのですが、

なんだか楽しいことらしいとしか、ダイゴくんはわかっていないようです。


親御様たちは、ダイゴくんが選ばれたことに対して、

お話し合いをしています。

お父様は、選ばれたのだから、

そちらの道に進めるのも悪くないと言われていて、

お母様は、将来やめるにやめられなくなったときに、

苦しくなられないかを心配されているようでした。

どちらの考え方もわかる気がします。

親御様という立場であるのならば、

ダイゴくんの可能性を、どこまでも広げてあげたいと思います。

幼いダイゴくんが、どんな道を選んでもいいように、

たくさんできることを増やしてあげるのもわかります。

また、いろいろなことをダイゴくんにさせてあげて、

ダイゴくんがもうできないとなってしまったときに、

ダイゴくんができないとちゃんと言えるかというのも、

大事な点であると思います。

もうできない、助けてと、

言えない子どももいると思います。

親御様たちの期待が大きすぎますと、

その期待を裏切ってはいけないと、

優しい子どもほど無理をしてしまうものであるように思います。

ダイゴくんならば大丈夫だと思うのですが、

ダイゴくんはまだまだ幼すぎます。

今回、選ばれたことに対して、いろいろな事柄があるのでしょう、

それらに対してはどうしても親御様たちの判断が必要になります。

ダイゴくんだけでは決められません。


私は、ダイゴくんとともにあります。

親御様たちがどんな選択をしましても、

それはダイゴくんを思っての選択であり、

親御様たちが下した最良と思われる選択であります。

どんな選択をされましても、

私はずっとダイゴくんとともにあります。

今回選ばれたことは、

みんなに愛される勇者への道につながるのか、

そのあたりは私は判別しかねます。

この世界における愛される勇者にあたるものになる道なのか、

また、別のことで選ばれたのか、

この世界の仕組みがいまいち把握できていないゆえに、

私が何か決定をすることはできません。

そもそも、ダイゴくんの中にいるので、

私が何かを決めることなどできません。

今は、親御様たちの決定を待ちます。

ダイゴくんはいつものように過ごしています。

親御様たちの選択で、運命が動き出すのか、

あるいはそうでもないのか、

わからないダイゴくんは、今日もキラキラと笑っています。

その無垢さに私はいつも救われています。


ダイゴくんの勇者への道はまだまだ続きます。

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