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第17話 ダイゴくんと暑い夏

日に日に暑さが増してきています。

つゆという季節は、まだ続いているようなのですが、

雨が多いという、つゆという季節はそろそろ終わりなのかもしれません。

季節はつゆの次の夏に移り変わっているようでもあります。

ただ、日が暮れる頃になりますと、

時々ものすごい雨が降る時があります。

これがつゆの雨なのかは、

こちらの世界に来て日が浅いのでよくわかりませんが、

とにかく時々ものすごい雨が降り、

そして、日中はとても暑くあります。

おそらく、季節はつゆと夏の間なのかもしれません。

季節はここで一気に変わるというものでもなく、

段階を踏んで変わっていくのでしょう。

昼から突然夜になることがないように、

日が暮れる夕焼けがしばらくあるように、

季節もきっとそんな風に変わるのでしょう。

ダイゴくんにしましても、

突然何かができるようになるわけではありません。

少しずつ、成長をしていくものです。

昨日よりちょっと成長した。

ちょっと何かを覚えた。

その成長を積み重ねていって、

ダイゴくんは皆に愛される勇者のような存在になっていくのだと思います。

ダイゴくんが立派な大人になって、

皆に愛される勇者への道は、

とても長いものになります。

平坦な道ではないかもしれません。

誰かの悪意もあるかもしれません。

それでも、私はダイゴくんの中から、

ダイゴくんを応援し続けましょう。

親御様たちもついています。

味方になってくださる方もたくさんいます。

私の力なんて微々たるものですが、

この小さな力で、ダイゴくんを支えていきたいと思うのです。

この小さなダイゴくんが立派になるまで、

皆に愛される勇者のような存在となって幸せになるまで、

そうなってからもずっと、

私はダイゴくんの味方であり続けたいと思います。

ダイゴくんはいつも笑顔であってほしいのです。

それが私の願いです。


少し前、ダイゴくんは体調を崩しました。

熱を出してけいれんをしました。

ひきつけと言うそうです。

キュウキュウシャという車に乗りました。

おそらく病院からの車なのでしょう。

もしかしたら、幼子のダイゴくんの命にかかわることであったのかもしれません。

ダイゴくんの中にいます私も、

熱で朦朧としておりました。

ダイゴくん自身も苦しかったことと思います。

緊急事態のための車が、

キュウキュウシャなのかもしれません。

こうして命を救おうとしている方々がたくさんおられるのでしょう。

ダイゴくんは無事に一命をとりとめ、

元気に回復しました。

親御様たちも生きた心地がしなかったかもしれません。

とても不安であったかもしれません。

病院の皆様の処置で、親御様たちも安心なされたと思います。

病院とは、病んだ人だけを癒すのでなく、

病んだ人を心配する人たちも、

安心させるところなのかもしれません。

私は親御様たちのお仕事の内容はわからないのですが、

お仕事とはいろいろなものがあることはなんとなくわかります。

病院のように命を助けるお仕事もあれば、

食べ物を作るお仕事もありましょう。

車に関するお仕事もあるかもしれませんし、

世界はお仕事に満ちています。

それぞれの立場でそれぞれのお仕事をして、

そのお仕事がダイゴくんを導くのに一役買っていると思いますと、

お仕事をなされている皆様は素晴らしいと思うのです。

ダイゴくんにはまだこの素晴らしさがわかりませんが、

いずれ働く大人というものに憧れるのではないかと思うのです。

どんなことに憧れるでしょうか。

たくさんありすぎてまだまだわかりません。


ダイゴくんはお外に出る際に、

お父様から帽子をかぶせらせていただきます。

日差しはとても強く、頭をそのまま熱くしてしまっては、

またダイゴくんが熱を出しかねません。

お父様なりの気づかいであるのです。

それは愛とも言えるかもしれません。

しかし、ダイゴくんはそんなことをわかりません。

頭に何かが乗っかるのが不快です。

邪魔だとすら感じます。

ダイゴくんは無理やり帽子を取ってしまいますと、

あらぬ方向に投げてしまいます。

お父様は、お前のためを思っているのにといいながら、

また帽子をかぶせようとします。

ダイゴくんはなんでこんなものを頭につけるんだと、

とても不機嫌になります。

イライラという感覚と不快という感覚です。

お父様は、不機嫌なダイゴくんを面白がっているようにすら見えます。

幼いダイゴくんのかわいいわがままに見えるのかもしれません。

お父様という大きな存在の前では、

幼いダイゴくんは、まだまだ反抗すらかわいいものなのかもしれません。

ダイゴくんにすれば何でこんなものなのですが、

帽子はお父様の愛であると思うのです。

熱い日差しからダイゴくんを守ろうとしているのです。

ダイゴくんはまだそのことがわかりません。

いずれ帽子を黙ってかぶることもできるかもしれませんし、

帽子のおしゃれをするかもしれません。

帽子をかぶっていることで頭が暑くならないとわかる時も来るかもしれません。

いつになるかはわかりませんが、

それまでお父様には帽子についてダイゴくんと攻防をしてもらいましょう。

しばらくダイゴくんは帽子を嫌がるでしょうし、

お父様は嫌がるダイゴくんを見て笑うのだと思います。


最近、お父様から、

オチュウゲンという言葉を聞きました。

この世界特有の言葉であるようですので意味はよくわかりません。

ただ、オチュウゲンでモモが届くとのことです。

モモとは果物であるようです。

ダイゴくんはみかんを食べます。

バナナも食べます。

親御様たちが食べ物の名前を言ってくれていますので、

この世界の食べ物の名前も徐々に憶えてきました。

バナナは甘い果物です。

みかんは少し酸っぱいです。

それでは、モモというものはどんなものでしょうか。

もしかしたらすでに食べたことがあって、

あれがモモだったのかと思うのかもしれませんが、

今のところ私はピンと来ていませんし、

ダイゴくんに至っては、

食べ物の名前を正確に言葉として覚えていません。

とにかくオチュウゲンでモモが届くようです。

そもそもオチュウゲンというものがよくわかりませんが、

何かが届くということは、

贈り物をする習慣かもしれません。

親御様たちも何かを贈るのかもしれません。

ダイゴくんが何かを贈ることはできませんので、

ダイゴくんの分も何かを贈るのかもしれません。

この世界にはわからないことがたくさんありますが、

ダイゴくんの中でいろいろなことを覚えていくのが楽しくあります。

私も成長しているのかもしれません。


一時はキュウキュウシャに乗るほど大変だったダイゴくんも、

夏の暑さにも負けずにキラキラ笑っています。

毎日よく遊び、よく食べて、

猫さんとも遊び、おもちゃで遊び、

絵本はかじります。

どの絵本にもダイゴくんの歯型があって、

まごうことなくダイゴくんの絵本になっています。

色が実に美味しそうだということもありましよう。

また、幼いダイゴくんの口の中で、歯が生え始めているので、

何かを噛まずにはいられないのかもしれません。

絵本は丈夫な紙でできていますので、

嚙むくらいでは破けないのでしょう。

絵本は素晴らしい文化です。

これほど噛まれても絵本としてあり続けられる、

幼子に粗末にされても負けない本だと思うのです。

いろいろな絵本が世界にたくさんあるのでしょう。

このお家にある絵本はその一部に過ぎないかもしれません。

ダイゴくんはその絵本を噛んで、

生え始めの歯を刺激しています。

いずれ何でも噛めるようになって、

食べられるものが豊富になるかもしれません。

そうですね、オチュウゲンのモモというものが、

あの時食べたあれだったのかと思うのか、

また、ダイゴくんの全く知らないものであるのか、

それは私もよくわかりません。

固いものなのか、柔らかいものなのか、

生え始めの歯でも食べられるものなのか、

モモとはどんなものでしようか。

オチュウゲンが届くのが楽しみです。

暑い日が続いていますが、

ダイゴくんは着実に成長しています。


ダイゴくんの勇者への道はまだまだ続きます。

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