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第19話 ダイゴくんはテレビに出る

とうとう、つゆというものが明けたようです。

ここ数日雨が降りました。

日によっては激しい雨でした。

つゆという季節は雨の多い季節と聞いていましたが、

つゆの終わりを知らせる最後の大雨だったのかもしれません。

つゆが終わると夏です。

とても暑い日が続くようです。

つゆの間も暑い日がありましたが、

どうやら夏なりますと、かなり長い間暑いようです。

こちらの世界に来て私も日が浅いです。

ダイゴくんもまた、生まれてから一年と少しです。

前回の夏は、ダイゴくんが何かを経験することも、覚えることもなく、

生まれてすぐの期間を過ぎていったものと思います。

私がダイゴくんのもとにやってきたのは、

ダイゴくんが一歳になる少し前でしたので、

ダイゴくんの中の意識はまだめちゃくちゃなままでした。

前の夏のことなど覚えていないようです。

ダイゴくんが経験する、今度の夏もとても暑そうです。

私もこの世界の本格的な夏を経験するのは初めてです。

どれほどのものであるのか全くわかりませんが、

できれば命にかかわるくらいの暑さでないといいと願うのです。

幼いダイゴくんが暑さで大変なことになりましたら、

ダイゴくんを愛する全ての人が悲しみます。

なんとか幼いダイゴくんでも乗り越えられるほどの夏であってほしいと願うのです。


ダイゴくんと、ダイゴくんの中にいる私は、

テレビをよく楽しみます。

文字は読めませんが、言っていることはわかります。

一緒に歌ったり、体操をしたりするものも見ますし、

絵本のような物語で、絵が動くものも見ます。

親御様たちが言うところによると、

絵が動くものは、アニメと言うそうです。

アンパンマンさんは強いです。

ご自身の頭を分け与える姿は聖人のようです。

ダイゴくんも私もアンパンというものを食べたことはありませんが、

きっと不安を取り除いてくれる味なのでしょう。

身を切って困る人を助ける存在は、

テレビの中にいます。

テレビは大きなものでなく、

テレビの中にいろいろなものが入る隙間はありません。

親御様たちがお持ちのスマホ同様、

何かの力で遠くから通信が入るものなのかもしれません。

スマホでオキナワの皆様とお話をすることもできますので、

スマホやテレビなどは、遠くと何かを繋ぐ力が備わっているのかもしれません。

その力の源はよくわかりませんが、

この世界でよく使われている力が使われているのでしょう。

いずれわかることもあるでしょうが、

わからなくてもアンパンマンさんはテレビの中で活躍をされています。

ダイゴくんも私もアンパンマンさんが大好きです。


モモはまだ届きません。

モモというものは果物のようですので、

今、果物として収穫をしている最中かもしれません。

もしかしたら、新鮮なものが届くのかもしれません。

この世界のどこかから、

ダイゴくんのもとにモモが届きます。

この世界には、ヒコウキがあったり、たくさんの車があったりします。

たくさん荷物を積める車もあるかもしれません。

モモが生産される場所から、

たくさんモモを積める車にモモが積まれて、

ダイゴくんのもとまで届けられるのかもしれません。

届くまでの間に、

どこかで箱に詰められるのかもしれません。

どんなことがあってダイゴくんのもとに届くかはわかりませんが、

ダイゴくんが生まれてはじめて食べるモモは、

きっと遠くから届くのだろうと思います。

たくさんの大人の皆様の手を経て、

いずれダイゴくんのお口まで届きます。

どんな味がするのでしょうね。


つゆが明けたらしい日。

ダイゴくんはお熱を出しました。

毎日新しいことを経験していて、

ダイゴくんの頭の中はたくさんの経験をまとめるので忙しいです。

ダイゴくんはお熱を出しましても、

なんとなく元気でいます。

親御様が抱っこをすることで、

熱があると気づかれることも多々あるようです。

ダイゴくんには自我が芽生え始めているようです。

親御様のやるようにするのでなく、

とにかくダイゴくんがやってみたいと、

親御様の手助けを借りないという姿勢を見せることが増えてきました。

ダイゴくんの成長はとてもめざましいものです。

頭の中も、身体も、成長の真っただ中です。

その成長の速度から、

ダイゴくんはお熱を出されてしまいます。

親御様はお仕事のお休みを取り、ダイゴくんはホイクエンに行かず、

病院に行きました。


ダイゴくんがお父様の腕に抱かれてよく眠っているとき、

町を歩いていますと、声をかけられました。

質問をされて、お父様がお答えしていました。

私はダイゴくんと一緒にトロトロとまどろんでいましたので、

声をかけてきた人のことであったり、

また、何を質問されたかもわかりませんでした。

お父様がお答えしてくださったならば大丈夫です。

私とダイゴくんはつゆの明けた町でまどろみます。

お父様ははきはきと答えていらっしゃったようです。


それからあと、お父様がダイゴくんにスマホを見せました。

そこに映し出されていたのは、

お父様に抱かれて眠るダイゴくんと、

質問にはきはき答えるお父様です。

どうやら、この様子がテレビに流れたとのことです。

ダイゴくんがテレビデビューだとお父様は言われていました。

スマホでこの様子を見せてもらったのですが、

どうやらテレビでもこの様子が流れたようです。

テレビがあるご家庭で、ダイゴくんのかわいい寝姿が流れたかもしれません。

ダイゴくんの可愛さがいろいろなところに流れたかもしれません。

この可愛い赤ちゃんは誰だろうとなったかもしれません。

アンパンマンさんのように、

ダイゴくんもテレビに出たもののようです。

ほんの少しの時間ではありました。

それでもダイゴくんの魅力を伝えるには十分です。

テレビを通じてダイゴくんの可愛らしさが世に広まっていくでしょう。

これはそのきっかけになるような気がします。


ダイゴくんはいろいろなことをやってみる自我が芽生えて、

時々お父様のお仕事のものを引っ張り出して、

それで遊んでいるようです。

ダイゴくんにとっても、私にとっても、

何に使うかわからないものです。

ダイゴくんにとってはとにかくいじってみるおもちゃです。

お父様のお仕事のものも、

ダイゴくんにかかれば何でもおもちゃです。

楽しく遊びます。

ただ、ダイゴくんはお父様のお仕事のものを、

お片付けするという考えがありません。

興味を持って引っ張り出して、遊んだ後は、

お父様のお仕事のものを、

元通りに片付ける考えがありません。

お父様がそれで困ったということもおありだったようですが、

お父様はそれによって怒鳴りつけるということもなく、

仕方ないなぁと笑うのです。

広い心の持ち主であるのだなと感じます。

お父様も、お母様も、お仕事をされています。

ダイゴくんが元気ならば、

お仕事の間はダイゴくんは楽しいホイクエンに行きます。

ホイクエンには大好きな先生がいます。

お子様たちとも遊べます。

ホイクエンがダイゴくんのお仕事であり、

お父様のお仕事のもので遊ぶのも、

ダイゴくんのお仕事のひとつです。

こうしてダイゴくんはいろいろな経験をしていって、

心も身体もどんどん成長していくのです。

成長していくにあたり、たくさんのことを経験しすぎて、

ダイゴくんは時々体調を崩します。

熱を出したりもします。

これからもそんなことが度々あるかもしれません。

それを越えていけば、ダイゴくんはもっと強くなり、

もっと元気になるでしょうし、

もっと楽しい毎日を過ごせることになると思うのです。

ダイゴくんは成長をしていったら、

もっといろいろな経験を積んで、

さらに遠くに行くことができるかもしれません。

あるいは、テレビか何かを通じて、

もっと遠くにダイゴくんの名声が届くようになるかもしれません。

小さなダイゴくんは、たくさんの可能性を持っています。

世界中の人に愛される勇者のような存在になる可能性だって持っています。

愛されてほしい。幸せであってほしい。

私はそう願わずにはいられないのです。


ダイゴくんの勇者への道はまだまだ続きます。

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