契約金が無事支払われたのをコンビニのATMで確認し、電気代の料金を支払う。そのあとカップ焼きそばとコーラを買った。
自宅へと向かう足柄、少し妄想した。
もし、今回の連載でヒットすれば首の皮が一枚つながる。
すれば自分のやってきた二十年間の努力が水の泡にはならない。
すべて報われる。そうだろ? 誰だって自分の努力が報われてほしいって思うはずだ。努力の時間を重ねれば重ねるほど、そう思う。
煙草に火を点ける。紫煙がもくもくと空気中に霧散されるのを見つめながら、呆ける。
歩調が速まる。そのとき横にあった公園で遊ぶ子供たちが目に留まった。
「おれはブレイドマンだ。せいやっ」
ブレイドマン。そう口走ってしまった。
ブレイドマンとは、自分の前回の連載漫画の主人公である。
「人気があったんだけどなあ」
少年たちが無邪気に遊んでいる。刀を模しているのか木の棒を振り回している。
「俺、いつから子供目線、忘れていたんだろう」
少年誌にも読者が当然いる。その読者とは思考が凝り固まった大人ではない。無邪気で、遊び心で動いている少年、少女だ。
……なにがゲーム会社の就職を目指す物語だよ。そんな物語なんて、子供は見飽きるだろ。なんでそれに気づかなかったんだ。
俺は駆けだした。そして自宅のアパートに着いたら部屋に入り押し入れから小学生の時に描いた漫画を取り出した。
おおよそ三十ページ。それを片手に俺は電話をかけた。
「もしもし平田さん?」
「はい。どうしたんですか?」
「読み切りで一本試させてほしいんだ。頼む」
「そんな無茶が通るわけ……えっ、副編集長……はい」
「いま電話を変わった。田畑だ。いいか、その読み切りと今回の連載に全てをかけろ。分かったな」
「おう」
「じゃあ。編集長には俺から話を通しておく。アシスタントの話は来週しよう」
「分かりました」