目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第2話 甘い夢を楽しむ



シャワーを浴びてスッキリしたところで次は朝食だ。


身だしなみをメイドに手伝ってもらいながら軽く整え終えると、自室の机の上にはたくさんのフルーツと新鮮な水が用意されていた。


先程までベッドにいたリアムの姿はもうない。

代わりに机の前にある大きなソファに天使のように愛らしい美少年、ルークがニコニコの笑顔で座っていた。


ルークの容姿は銀髪のふわふわの柔らかそうな髪で大きな桃色の垂れ目が特徴的な可愛らしい美少年だ。


年齢は私より5歳下で18歳。

現実なら高校3年生、手を出したら犯罪だが、ここは夢なのでおそらくセーフ。

彼も私の恋人の1人だ。


そして今日の朝食係はどうやらルークのようだった。


私のここでの生活にはいろいろルールがあり、その一つが私の生活に関する係だ。

まあ、係なんて呼び方は私が心の中で勝手にしているものだが。


食事、身だしなみ、お風呂、睡眠など私の生活に全て彼らは順番に分担して関わらなければならない。

昨夜の睡眠…夜の相手はリアムで、今日の朝食の相手はルークのようだ。


こればかりはいつの間にか決まっていることなのでいつ誰が私のところに現れるのかはわからない。

自分で変更しようと思えばできるのだろうが特に文句もないのでそのまま受け入れている。




「エマ!おはよ!」


「おはよう、ルーク」




ルークの側に近寄れば嬉しそうに笑ってルークが私に挨拶をしてきたので、私も柔らかく微笑んでルークに挨拶をした。



あぁルークは恋人たちの中でも特別可愛らしい。夢じゃなかったら犯罪だよね、本当。



ニコニコ笑顔が可愛らしいルークのすぐ横に私は腰を下ろす。そしてとりあえずコップを手に取り、水を喉に流し込んだ。




「エマ。今日の苺はいつもより赤くて甘そうだと思わない?ほら」




私が水を飲み終えたタイミングを見てルークが私の口元へ苺を運ぶ。

それを私は迷うことなく口に含んだ。




「ん、本当だわ。甘い」


「やっぱり」


「ふふっ。ルークの手からだからだわ。もっとちょうだい」




私の感想を聞いて嬉しそうに笑うルークの目の前で再び口を開ける。

するとルークは「はい、あーん」とまたまた嬉しそうに私の口の中に苺を運んだ。




「ねぇ?手からで満足なの?きっと口からだともっと甘いよ?」




きゅるるんっと大きな瞳をキラキラ輝かせてルークが私を見つめる。

その愛らしさと言ったらもう何に例えたらいいのか。




「そうね。口からもよ、ルーク」


「はーい」




ルークの提案を受けて微笑めば、ルークは可愛らしい顔からは想像も出来ないほど妖艶な笑みを浮かべる。


そして自分の口に苺を半分入れた。




「ん…」




そのままルークが私の口へ苺を運び、私から甘い声が漏れる。


甘い…。




「…エマ」




苺を食べる私を甘い瞳でルークが見つめる。

その瞳からルークの熱を感じた。

まだ足りない。もっと欲しい、と。


たった数秒の出来事だったが、まるで深いキスをしているかのようなゆったりとした時間が私たちの間に流れる。




「おいしい?エマ」


「ええ」




可愛らしくルークが私に微笑む。

だが彼もリアムと同じく私の被害者。

彼もまた私を恨んでいるのだろう。



彼は私の国の国民でいわゆる遊び人と言うやつだ。

おそらくは金持ちの女の子をターゲットとして遊んでおり、私もそのターゲットの1人だった。


たまたまお忍びで街で遊んでいた私に声をかけ、私を誑かすつもりが、逆に私に気に入られ、ここへ連れ去られたと言う訳だ。


私は彼の愛らしい姿と、何よりも知識の広さ、その頭の良さを気に入った。

ほんの数時間だったが、彼と話してそう思ったのだ。


ルークはここへ連れ去られた時、最初は混乱するような素振りを見せたが、私の目的を伝えるととりあえずは頷いてくれた。

まあ、ルークはあの時頷くしかなかったのだが。


それから最初こそは戸惑っているようにも見えたが、今ではすっかり調子を取り戻しこんな感じだ。

ルークは本来遊び人であり、自由だった。

そんなルークをガチガチに縛る私など恨んで当然だろう。



だが、恋人たちに恨まれてでも私は愛を欲する。それが偽物の愛でも、私は欲しい。


私は今まで愛されてこなかった。

王や王妃の愛は全て優秀な兄たちに注がれた。


愛を注がれた兄たちは期待され、愛の鞭を受けながら努力をし、立派な王子に成長した。


愛を注がれなかった私は期待されず、放任され、どんなに兄たちのように努力してもそれを否定されて、立派な愛に飢えた姫に成長した。


好きの反対は無関心とはよく言ったものだ。


本当にその通りであり、やがて何をしてもリアクションが返ってこない両親や兄たちに私は絶望した。

そして偽物でもいいから両親たちが与えてくれなかった愛を求めるようになったのだ。




「ルーク」


「なぁに?」


「愛を囁いて」


「いいよ、お姫様」




家族のことを考えていると先ほどの熱が嘘かのように心が冷えてしまった。

なのでまた心を温めようとルークに偽りの愛を願う。

すると当然だがルークは私にいい顔をして甘く返事をした。




「愛しているよ、エマ。僕にはアナタだけ。お願い。側にいて。いや、いさせて」




そして嫌な顔一つせず甘い言葉を並べて私の手の甲にキスを落とす。


私はその言葉、その態度一つでまた心が満たされた。

偽りのものだったとしても私はそれでいい。






この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?